自己都合でやめても失業給付がすぐにもらえたら、会社やめる?どうする?
会社をやめた理由が「自己都合」だと、ハローワークで手続きする失業給付にペナルティ的な「もらえない期間」がつく、という今の仕組みが、いよいよ現実に変わりそうな動きです。
失業給付、転職時の支給迅速に 2カ月超→7日程度に:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA106RW0Q3A410C2000000/
自己都合でやめた場合、失業給付がもらえるまでがまんの期間を「給付制限」といいます。
会社都合でやめざるを得なかった場合は、会社の都合で急に収入が絶たれるわけで、収入のない期間への用意ができてないでしょう、ということで、失業給付はすぐに貰える事になっています。
すぐに、とはいっても、確実に失業しているかをハローワークが確認するための「待期」という7日間はもらえないのですが…
いっぽう、自己都合で自分からやめる場合は、「収入がなくなる期間の用意もちゃんとできてるってことだよね」ということで、その7日間にプラスして、給付制限(一般には2ヶ月)がつくわけです。
これを、会社都合と同じく7日間まったらもらえることにし、転職をしやすくしよう、というのが、今回の案です。
先日、3月に開催された「新しい資本主義実現会議」で、国がのぞむ労働移動をうながすものとして提案されたものでもあります。
労働移動とは、あまり生産性の高くない仕事や、AI等の進化によってなくなるような仕事から、人手不足だったり、これから増えることが望まれている仕事へと労働力を移動させることです。
そのため、転職へのペナルティとなるような制度を変えて、転職をしやすくすることで労働移動をうながそうということで、上の日本経済新聞の記事では、退職金にかかる所得税のしくみも見直す可能性があるとふれられています。
いまの退職金の所得税は、勤続年数を評価して計算するため、20年以上働けば退職金で1000万もらっても所得税の対象とならなかったり、短期間だと少しの金額でも所得税の対象となったりするからです。
ですが、はたしてこれらの策が効果的か?というと、個人的には疑問です。
自分だったらどうか、と考えてみましょう。
失業給付がすぐにもらえることが、会社をやめる動機をどのくらい強めるでしょうか?
生活費に困ることを心配するなら、在職中につぎの就職先を決めるのではないでしょうか。
実際、私もそうでしたし、周りをみてもそうです。
となると、失業給付をすぐにもらえるということが転職を決める大きな理由になるひと、ってどんなひとでしょう?
あまり思い浮かびません。
そもそも、会社をやめてすぐに失業給付がもらえるとしても、その失業給付をもらう資格を得るためには、原則として1年間その職場で勤める必要があるのです。
そこまで失業給付を計算でき、退職金の税金のことまで配慮できる、というひとであれば、自分で面白いと思う仕事をすでに見つけていて、制度のために転職するような人は少ない気がします。
それよりも、自己都合で会社をやめても、新しい仕事のための訓練を受ければ、すぐに失業給付がもらえるという、すでにある公共職業訓練をもっと使いやすくするほうが、望む方向にいくのではないでしょうか。
この制度じたいをまず、「自己都合で会社やめたらすぐ失業給付がもらえない」くらい、名の知れたものにする必要があるのでは、と思います。
もっとわかりやすく、使いやすい制度への見直しをぜひお願いしたいものです。