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退職金がねらわれている?〜厚生労働省、モデル就業規則を改訂

生産性の高くないお仕事から高いお仕事へ、需要の少ないお仕事から人手不足のお仕事へ。
労働者の移動をそのようにうながす「労働移動」は、現在政府がすすめている改革のひとつです。

政府はその「労働移動」をあの手この手ですすめようとしています。

政府がすすめる改革のテキストである「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」を読むと、雇用保険から出る失業給付を、自己都合退社でももらいやすくする案まであります。

今回は厚生労働省が、2023年7月に公表した企業向けの「モデル就業規則」改訂で、退職金について労働移動をさまたげる影響がありそうな語句をなくしました。

変更後のこの文面に、違和感を感じる人はいないと思います。

さっぱりとしてわかりやすい内容です。

ですが、以前は、
「勤続年数が一定基準以下の場合の退職金不支給」
「自己都合退職の場合の退職金の減額」
といった記載がありました。

長く働かない人を退職金を支払う対象から外したり、自己都合で辞めた場合に退職金を減らしたりすることについて、政府がモデル就業規則に入れるというかたちで認めていたのです。

会社側としては、入れておきたい内容でしょう。

ですが今回厚生労働省はここを削ることで、勤続年数の短い人や自己都合で退職する人の不利を少なくしたと言えます。

このモデル就業規則はあくまで「モデル」です。

また、退職金は、給与のように企業が社員に必ず払わなければいけないものではありません。

ですから、誰に支払うのも、どのように支払うのも、ある意味会社の自由であって、政府がつべこべ言うことができるものではありません。
とはいえ、退職金を払うことにするからには就業規則等できちんとルールを決めておき、社員から「同じ仕事なのに退職金が違う」と裁判で訴えられたようなときに、きちんとその理由を説明できるようにする必要はあります。

ですが、厚生労働省のモデル就業規則は、まず間違いないことから、よく利用されるもの。

そこがこうして変わったことにより、余波がじわじわとかもしれませんが、ひろがっていきそうてます。

退職金は、税金面でも狙われています。
退職金があるかたは、定期的に残高のお知らせが来ていると思います。
変更の荒波が来る前に、いまのうちに自分の退職金について確認しておくとよいかもしれません。

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