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「簡易な扶養控除申告書」は本当に簡易か?〜2025年1月より開始
会社員の方は、ほぼ、年末か年始に「扶養控除申告書」を会社に提出されていると思います。
なにそれ?と思う方は、こんな書類に見覚えはありませんか?
これが、「扶養控除申告書」です。
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特に扶養にいれている家族がいない場合など、昔は押印も必要でしたから、毎年めんどうだなあ、と思われているかたも多いのではないでしょうか?
それが、来年1月からの扶養控除申告書は、昨年と特に変わりなければ、「変わりない」ことを記載すればOKになります。
目的は、「源泉徴収手続の簡素化を図り納税者利便を向上させる」こと。
それは嬉しい!と思われる方もいるかもしれません。
いちいち名前とか住所とか書くの面倒くさかったんだよね、「変わりありません」にチェックを入れればいいのかな?と。
では、実際に確認してみましょう。
1.扶養している家族がいない場合はあまり変わらない
ですが、実は、扶養にいれている家族がいない人の手間は、ほとんど変わらないのです。
以下の図が、簡易な申告書の記載内容です。
名前と住所とマイナンバーは記載しなければなりませんし、なんと、変わりない場合には欄外に「前年から異動なし」と書かねばなりません。
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これは果たして、簡易になったといえるのでしょうか?
2.扶養している家族がいる場合は会社が大変
扶養している家族が複数いる場合は、ひとりひとりの名前や生年月日、マイナンバー、その年の所得見込みなどを書くのはなかなか大変ですので、かなり楽になるところはありそうです。
ですが、そのぶん、会社が大変になります。
国税庁のQ&Aを見ると、「えっ」と思う記載があります。
「変わりない」ことが前提の制度なので、社員は、自分が前年と比べて変わりないかを知る必要があります。
その場合、会社は社員にどうすればよいのでしょうか。
制度の始まったばかりの2025年であれば、2024年の申告書を見せればOKです。
ですが、2025年に簡易な申告をした場合、2026年に比較して確認すべきは、2024年の申告書です。
それが、年が経てば経つほど積み重なっていくのです。
ちょっと、気が遠くなりませんか?
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さいごに
一見とても便利になりそうですが、実際に運用しようとすると、「これほんとにやるのこな」と悩む会社も出てきそうな内容です。
でも、その場合は無理してやる必要はありません。
法改正は、「することができる」ようになっただけで、「しなければいけない」となったわけではないからです。
社員の利便性を考えてやるもよし、やらなくてもよし。
自分の会社の状況にあわせて、合う方法を選びましょう。
▼国税庁Q&A