東京国税局が東京地検に告発!不正還付どうやって?
1.ニュースのなかみと今回起こったこと
各ニュースで取り上げられていますが、東京国税局が東京地検におおがかりな告発を行ないました。
対象は、ウェブサイト企画運営会社の代表。
どんなことで告発されたのかというと、「正社員の人が受け取れる還付金」をうたい文句に、給与所得者に声をかけて副業としてやっている事業で損失が出たように装い、還付申告書を作成して税務署へ提出させていた疑いでということです。
これにより、給与所得者は還付金をうけとり、その申告した損失額は、2021年分までの7年間で計約7億2900万円にものぼるそう。
そのやり方を教えるにあたっては、1人1年分の申告で5万円の手数料も受領。
少なくとも109人に対して、計約2500万円を得たとみられています。
この話に、ん?どうやって?と思ったかた。
所得税の計算方法にはふたとおりあることがわかれば、何となく何が問題だったかわかると思います。
2.所得税の計算方法はふたつ、「損益通算」という考え方がある
支払う所得税の税額は、おおまかにいうと、こうやってきまります。
①1年間を通してのその人の収入をまとめる
②そこから元手である経費を差し引いたり、家庭の事情となる扶養控除など差し引く
③残った、最終的にその人が得た純粋な利益に近いもの(プラスで得たもの)に対して、税率をかける
ですので、収入より経費のほうが高ければ、利益がでるどころか赤字で持ち出しなので、税金はかからない、こういったしくみです。
となると、1年間の収入をまとめるときに、複数の収入があって、片方は利益があるけど、片方は赤字、というときに、どうするの?と思いますよね。
そんなときは、「損益通算」というしくみで、がっちゃんこできることがみとめられるケースがあります。
この損益通算はすべての税金の種類でできるのではなく、一部に限られています。
それが、
不動産所得
事業所得
譲渡所得
山林所得
の4つです。
ということは、給与は原則経費がみとめられるケースが少ない、つまりは赤字にならない収入なので、それと、この4つででた赤字とを、通算できたならば。
給与で年末調整の結果、払っていた所得税があれば、還付されることになります。
上の4つの所得で、損したという申告を不正にしたので、今回問題とされたわけです。
税金や社会保険のしくみは、なるべく困る人がでないように作られています。
損益通算の仕組みも、赤字が出てしまった人のダメージをやわらげるためのしくみであって、それを使って得しようというしくみでは、もちろんありません。
そのしくみがなぜあるかを考え、いくら得すると言われても、「待てよ、いいのか?」と踏みとどまれる人間でありたいと、私は思っています。