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在宅勤務手当が残業代を計算する元の数字から除かれる?そもそも在宅勤務手当って?いくらくらい手取りが減るの?

「在宅手当、残業代算定から除外検討 手取り減る可能性」という記事が日本経済新聞で掲載されました。

つい「手取り減る可能性」に目がいくのが人情というもの。

ですが、ショックを受けるのはちょっとまって。
この短い見出しだけを見ても
「在宅手当」ってそもそも何?いくらくらいのもの?
残業代算定って?
という知識が前提として必要です。

見出しだけで踊るのではなく、まずはそこを確認してみましょう。

1.そもそも在宅手当って?

在宅でお仕事をするということは、本来会社に出社していればあたりまえに会社負担となっている水道光熱費を、社員本人が負担するということです。

それを当たり前に従業員負担としても違法ではありません。

ですが、コロナ禍の時代は、出社したいという社員にも会社としてテレワークを要請していた時期もあり、やはり会社で負担すべき、という考え方もありました。

では、会社が負担するとはどういうことか?
総務省の資料によると、以下のように整理されています。

総務省「「ポストコロナ」時代におけるテレワークの在り方検討タスクフォース(第1回)」
社会保険労務士法人NSR「いまさら聞けないテレワークの常識」より

この②が、いわゆる「在宅手当」で、原則として、所得税の対象にも、社会保険の対象にもなります。

③であれば、実費弁償的なものなので、税金的にも社会保険的にも対象外となる可能性はあります。

ですが、その「実費分」を把握するには、たとえば電気代としては以下のような計算式をもちいて計算しなければなりません。

床面積など従業員のプライバシーにも触れることなので、やはり③より②の、在宅手当を選択する会社が主流です。

2.いくらくらいのもの?

在宅手当は、法律上は出しても出さなくてもよく、出すとしてもその金額は会社によって異なります。

では、いくらぐらいが相場なのでしょうか?

在宅手当には、毎月払うものと、単発ものももありますが、残業代を計算するうえで対象となるのは、毎月のもの。

エン・ジャパンの調査によると、3,000円~5,000円がもっとも多く、次点で5,000円~10,000円となっています。

在宅勤務における企業の従業員サポート調査 2020年12月
https://www.enworld.com/newsrelease/survey-20201225.html

3.残業代算定って?

では、残業代算定になる、とはどういうことでしょうか?

残業代の計算については、労働基準法第37条で以下のように決められています。

第三十七条 使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
(中略)
⑤ 第一項及び前項の割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない。

時間外労働、つまり残業代には、「通常の労働時間又は労働日の賃金」をもとに計算した割り増し分を支払う必要がある、ということです。

そしてその「通常の労働時間又は労働日の賃金」を考えるうえで、家族手当、通勤手当、その他厚生労働省で定める賃金は、その対象にはしません、ということになっています。

なぜなら、家族手当や通勤手当を計算に入れると、扶養する家族が多い人や遠くから通勤している人のほうが残業代が高くなったりして、仕事をした結果得る賃金として、決して公平とは言えないからです。

「在宅手当」は、これまで、家族手当や通勤手当ではもちろんなく、「その他厚生労働省で定める賃金」でもないために、残業代を計算する対象となっていました。

ですが、今後は「その他厚生労働省で定める賃金」にいれることで、残業代の計算から除こうという動きがある、というのが、今回のニュースなわけです。

その背景には、家族手当や通勤手当と同じく、テレワークする/しないはその人の事情にも寄るため、残業代計算にいれるには個人差があるということがあるのかもしれません。

会社からの指示で一斉にテレワークをしていたような時代であれば、残業代計算に入れても違和感はありませんが、そろそろそのあたりにも個人差が出てきているのは事実です。

では、実際、残業代はどの程度変わるのでしょうか?

残業代を計算するには、まず、1時間あたりのお給料を計算する必要があります。

時給の人は簡単ですが、月給の人は、その会社の労働時間等から「月給÷1年間における1ヶ月平均所定労働時間」の式で求めるため、会社の決まりによってもかなり変わります。

たとえば、年間所定休日が122日、1日の所定労働時間が8時間の会社だとします。

1年間の所定出勤日数は、365日から休日122日を引いて243日。
243日✕8時間で、年間1,944時間。
それを12ヶ月で割ると、1ヶ月平均は162時間となります。

たとえば、この会社で1ヶ月あたり1万円の在宅手当が支払われていた場合、10,000円÷162時間で、1時間あたり約62円。

たとえば30時間残業したとしたら、在宅手当のみの残業代は1,860円となります。5,000円なら、930円です。

【2023/9/19訂正】
割増賃金は、1.25倍になるのですが、肝心の1.25をかけるのが抜けておりました。
申し訳ありません!
在宅手当10,000円で2,325円、在宅手当5,000円で1,163円か目安となります。
自分のうっかりすぎがおそろしい…。
教えて頂いた先生に感謝!

「手取り減る可能性」の金額感は、こういった内容です。

見出しの文字だけで踊ることなく、こういった数字をまずふまえてみましょう。


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