労災保険上乗せ支給実施、企業の約50%~人事院「民間企業の勤務条件制度等調査」
国家公務員の人事管理を担当する人事院は、国家公務員の勤務条件を検討するための資料として、毎年、民間企業の勤務条件制度等調査を実施しています。
令和5年分は、以下の調査結果が公表されました。
今回は、2.の労働災害について見てみます。
1.子宮頸がん検診及び乳がん検診の実施状況
2.業務災害及び通勤災害に対する法定外給付制度
3.従業員の退職管理等の状況
4.定年退職者の継続雇用の状況
5.役職定年制の状況
業務上発生した病気・けがで、その病気・けがが仕事に関わりが深いものについては、企業の落ち度により生じたものとなるため、本来は、企業が責任をもたなければなりません。
ですが、労働者から企業に対して、治療費や生活費を請求することはなかなかできないもの。
企業によっては資金がないところもあり、そうなると困るのは労働者のため、「労働者災害補償保険」という国の仕組みが用意されています。
この労働者災害補償保険、労災保険は、毎年、企業が国に保険料を支払い、その保険料を元に医療費や給付金が支払われるというかたちになっています。
つまり、病気・けがをした人について、その治療費や働けない間の生活費は国の労災保険から支払われることになるので、原則、企業側は支払う必要はないものとなります。
ですが、そうした、法律上支払わねばならないとは定められていない、「法定外給付」、いわば労災保険の上乗せ給付について、支払っている企業の割合は、かなりの数にのぼっています。
今回の調査では、業務上の病気やけがで亡くなった場合は60.6%の企業が、障害が残った人については47.9%の企業が、労災保険の上乗せ給付を支払っていることがわかりました。
また、通勤上のけがなどの通勤災害についても、死亡の場合で53.8%、後遺障害の場合で42%の企業が対応しています。
また、その支払金額については、扶養家族の有無について変更しているところはすくなく、一律かつ定額がほぼ半数となっています。
その一律かつ定額の企業の平均給付額は、以下のように高額となっています。
業務災害による死亡:1,642万円
通勤災害による死亡:1,278万円
業務災害による後遺障害(第1級):1,828万円
通勤災害による後遺障害(第1級):1,450万円
それだけ、労働災害が起こることは、重いことなのだということがわかる金額です。
しかるべき対策をせず労働災害を起こしてしまうことは論外ですが、対策をしていても、起こってしまうことはあります。
そういった場合、これら1,000万円を超える労災保険の上乗せ給付が支払えるように、企業は民間の保険も活用しています。
東京海上日動火災保険ではこのような保険を用意しています。
他の各保険会社も同様です。
労働災害は、起こりやすい業種と、それほどでもない業種があります。
製造業や建設業、運送業など、機械や重い物を扱う業種などは、労働災害が起こりやすい業種といえます。
そういった業種で、今は特に法定外制度を用意していない企業は、労働災害を防止する対策をしっかりすることはもちろん、万が一起こってしまった場合にそなえて、企業の50%前後が行なっている法定外給付も検討しておいたほうがよさそうです。