給与からも年金からも天引きされる?個人住民税複雑すぎませんか問題
通常の新年度は4月からですが、個人住民税の新年度は6月からです。
1月に会社から市町村に提出された昨年1-12月の給与データ、2月3月に確定申告で提出された昨年1-12月の所得のデータが、合算されて住民税が計算されて、6月から、昨年の収入にたいして後払いの個人住民税が徴収されるのです。
個人住民税の徴収方法はふたつあります。
ひとつは個人納付(普通徴収)、もうひとつは、支払われる給与や年金から天引きされて間接的に納付する方法(特別徴収)です。
会社員の人は、基本、給与から天引きされると思っていると思います。
ですから、会社員なのに何らかの事情で、たとえば住民票をうつしたばかりだったり、転職したばかりだったりして、自宅に個人納付の書類がきたら、給与天引きに切り替える手続きをする人が多いです。
ですが、給与から天引きされているのに、個人納付の書類もきて、その両方ともを納めなければいけない、なんてケースもあるのです。
それはどういった場合かと言えば、給与と年金と両方収入がある場合です。
支払われた給与にたいしての住民税額は、地方税法第321条の3第1項により、会社の給与から天引き(特別徴収)しなければならないと定められています。
ですので、会社員は原則、給与からの天引きが必ず発生することになります。
年金をもらっている場合は、年金にたいしての住民税は原則年金から特別徴収するよう、地方税法第321条の7の2により定められています。
ですが、年金の額より個人住民税が大きかったり、介護保険料の兼ね合いがあったりして全員ではありません。
となると、給与の分は給与から天引き、年金の分は個人納付で送られてくる、という事態になるわけです。
給与は給与、年金は年金なんて、一般常識ではありませんから、びっくりして市町村や会社に問い合わせる人が続出します。
個人納付の書類とともに給与天引きの依頼があったために、会社が書類をつくって送ったところ、市町村に「年金ぶんなのでできません」といわれるという、むだな仕事も発生します。
以前は、年金をもらう世代で、会社員として給与ももらう人は少数派だったかもしれません。
ですがいまや、年金をもらえる65歳以上で働く男性は61.0%(65~69歳)、女性でも同年齢で41.3%と、半数前後にまで増えています(令和5年度高齢社会白書より)。
そもそもどうして、給与と年金を分ける必要があるのでしょうか?
複雑すぎませんか?
さらにそもそもですが、どうして個人住民税を後払いの仕組みのままにしておくのでしょうか?
税は、所得が発生したらなるべくすぐに課税するのが正しいかたちとされています。
個人住民税も、後払いではなく、所得税とおなじ現年課税に変更する議論が、ずっとされているのに進んでいません。
そのうえ、個人住民税は、国税庁や税務署が連携をとってしきっている国税とくらべ、市町村に任せられている部分が多く、そういう意味でも複雑になっています。
はやくシンプルにしていかないと、そのうち、個人住民税業務がまわらない日がやってくるのではないでしょうか?
計算が複雑だといわれる固定資産税もふくめ、市区町村がパンクするまえに、はやく見直しが進むことを願います。