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個人住民税を地方税法からまなぶ②租税法律主義と地方税法 #0050/1000
この6月から、いよいよ、地方税(個人住民税)の新しい年度が始まります。
都道府県・市町村が徴収する税金である「地方税」は、「地方税法」という法律にもとづいて、運用されています。
そもそも法律の親玉である、「日本国憲法」第84条にはこう定められています。
第八十四条 あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。
これを「租税法律主義」といい、その意義はふたつあるといわれています。
・「自分たちのことは自分たちが決める」という民主主義的な意義
・法律に定められていない限りは税金を取られない、とられない自由を補償する自由主義的な意義
日本国憲法は、国民のために、国民の権利・自由を国家権力から守るためにある、法律より上位の存在です。
つまりは、「税金は、わたしたち国民が選挙で選んだ代表者が国会で法律を作らない限り、とられることはない」と憲法で決められているのです。
したがって、毎月お給料から天引きされている地方税(個人住民税)も、この「地方税法」という法律で決められている範囲内、ということになります。
ではその「地方税法」。
まずは、この5月6月直近で関係するところから見てみましょう。
地方税法 < 第三章 市町村の普通税 < 第一節 市町村民税 < 第四款 賦課及び徴収
の部分になります。
第321条の4には、以下のように規定されています。
(給与所得に係る特別徴収義務者の指定等)
第三百二十一条の四 市町村は、前条の規定により特別徴収の方法によつて個人の市町村民税を徴収しようとする場合には、当該年度の初日において同条の納税義務者に対して給与の支払をする者(他の市町村内において給与の支払をする者を含む。)のうち所得税法第百八十三条の規定により給与の支払をする際所得税を徴収して納付する義務がある者を当該市町村の条例により特別徴収義務者として指定し、これに徴収させなければならない。この場合においては、当該市町村の長は、前条第一項本文の規定により特別徴収の方法によつて徴収すべき給与所得に係る所得割額及び均等割額の合算額又はこれに同条第二項本文の規定により特別徴収の方法によつて徴収することとなる給与所得以外の所得に係る所得割額(同条第四項に規定する場合には、同項の規定により読み替えて適用される同条第二項本文の規定により特別徴収の方法によつて徴収することとなる給与所得及び公的年金等に係る所得以外の所得に係る所得割額)を合算した額(以下この条から第三百二十一条の七までにおいて「給与所得に係る特別徴収税額」という。)を特別徴収の方法によつて徴収する旨(第七項から第九項までにおいて「通知事項」という。)を当該特別徴収義務者及びこれを経由して当該納税義務者に通知しなければならない。
2 市町村長が前項後段の規定により特別徴収義務者及び特別徴収義務者を経由して納税義務者に対してする通知は、当該年度の初日の属する年の五月三十一日までにしなければならない。
長い!ですが、ここで何を言っているかというと、こういうことです。
・特別徴収(ここでは給与からの天引きのこと)で個人の市町村民税を徴収しようとするときは、まず、その個人に給与を支払っていて、給与から所得税を天引きして納付する義務のある者を「特別徴収義務者」と指定して、その者に実際に徴収させなければいけない
・昨年の収入をもとに計算した結果の税金の額(特別徴収税額、実際に給与から天引きする額)を、その「特別徴収義務者」に伝えなければいけない。また、その「特別徴収義務者」を通して、個人(納税義務者)にも伝えなければいけない
・それは5月31日までにしなければいけない
地方税は「後払い」の税金です。くわしくは条文に沿ってまた後日触れます。
昨年1月から12月の収入をもとに、払うべき税金の金額が決まります。
その決まった税金の金額を特別徴収(天引き)であつめる場合には、まずは天引きする者(給与を支払っていて、所得税を天引きすべき人、会社など)を指定して、天引きする金額(ここでは1年間の額)を、5月31日までに知らせなければいけない、ということが法律で決まっているのです。
市町村が天引きする者(会社など)を指定した結果、どうなるかというと、会社は市町村に「指定番号」というものが付与されます。
これは、市町村にとって各会社の背番号のようなものです。
市町村はこの「指定番号」で会社を判別するし、毎月納付する住民税もどこのぶんかを確認しています。
ここの条文からは、年度ごとに指定するため、年度ごとに指定番号が変わる可能性が大きいということがわかります。
・新年度の指定番号を把握する必要があること
・新年度の税額が5月31日までに到着すること
地方税業務を担当する上での重要なことふたつ。
それが、この条文で決められていることなんだということがわかります。
(③に続く)