野木亜紀子さんのドラマの「働く」に惹かれる〜海に眠るダイヤモンド
TBS日曜劇場「海に眠るダイヤモンド」が、2024/12/22最終回を迎えた。
野木亜紀子さんの脚本好きのひとりである私は、放映前から楽しみにしていた。
どの角度から見ても深く味わえるのが野木さん脚本だけれど、私は「仕事」や「働く」から見るのが好きだ。
それぞれが、自分の仕事について、自分で見つけ出した太い軸をもっている。
「海に眠るダイヤモンド」では、それが仕事から生き方までにひろがっていた。
心が動いたシーンはたくさんあったけれど、いちばん心をつかまれたところはそこだった。
※このあと、「海に眠るダイヤモンド」最終回のネタばらしがあるので、これから見る方はご注意ください。
野木さん脚本のドラマでは、それぞれの人物が自分の仕事への思いを「これしかない」という言葉で表現している。
ぱっと思い出せるだけでも、こんな感じだ。
「アンナチュラル」のミコトは、六郎に反射的に返せるほどの確信で、「法医学は未来のための仕事」という。
MIU404の伊吹は、第1話で、
「機捜っていいな。誰かが最悪の事態になる前に止められるんだよ。超いい仕事じゃ~ん!」
と笑う。
それは後半、相棒の志摩の軸ともなっている。
そして、今回の「海に眠るダイヤモンド」では。
屋上緑化の仕事をさらりと「人生」と言う朝子の、迷わなさ、軽やかさがきらめいていた。
だが、メインは、やはり「外勤」。
鉄平が関わっていたボランティア活動について、
「ご老人や親御さんが忙しい子どもの話し相手をする活動です。
みんなで百人一首をしたり花札なんかも」
というものだったと聞いて、朝子は言う。
「外勤をしてたのね」
このドラマのこの局面では、鉄平の「外勤」は、もはや、お給料をもらう「仕事」ではない。
最終回では、閉山になったあとの炭鉱夫の就職先について、鉄平が説明するシーンもあった。
(余談だが、ここのBGM、これまで鉄平が端島の仕組みについて話したりするお仕事タイムのもので、ぐっとくる)
鉱員のために再就職先の有用な情報を提供した鉄平を、「端島のことをいちばんに考えてるやつ」と評した賢将。
この仕事も、お給料の発生するものではない。
やむを得ず、外勤の仕事を途中で投げ出すかたちになってしまった鉄平は、みずから、お給料をもらう仕事としての「外勤」から、その働きを広げていく。
「外勤」という仕事が、人生の核になっているのだ。
いつか、ミコトや伊吹や朝子のようなさりげなさで、自分の仕事について、これしかないという言葉で語りたい。
そして、鉄平のように、「生き方」まで広がったらどんなに素敵か。
そんな夢を抱かせてくれる、野木さんの脚本、「お仕事」に、今回もスタンディングオベーションの気持ちで拍手を送る。