国道駅(カルマティックあげるよ ♯123)
晴天の昼下がり。
停車した列車の車両から脚を踏み出し、駅のホームへと下りる。
ここはJR国道駅。
神奈川県内の重要都市、横浜と川崎とを結ぶ鉄道路線であるJR鶴見線の無人駅である。
ホームから階段を伝って降りていくと、駅舎内のガード下通りを見渡せる踊り場に出た。そこから眺めた先には風化したコンクリートに覆われた、前時代的ながらも豊かな質感に散りばめられた空間が広がっていた。
ここ国道駅は1930年に駅舎が建設されてから、その後ほとんど改修されていないのだという。戦前当時の面影を残したままの駅なのである。
無人の改札を通り、トンネル状のガード下通りに出た。まるで神殿を思わせるような巨大なアーチ型の柱が通りの奥に向かって続いている。
昭和初期の時代の空気が残っているかのように錯覚させられる景観の中で、伊藤園のロゴが入った自動販売機だけが妙に浮いて見えた。
通りの中を歩いてみた。
空間内に散りばめられた数々のオブジェクトを見ていると、なんだかスチームパンクな映画の世界の中に迷い込んだかのような気分になった。
ここ国道駅には太平洋戦争中、米軍機が空襲をした際の機銃による銃痕が残っていると聞く。
出入り口近くの壁に、強い衝撃で削られたかのように見える大きな凹みを見つけたのだが、もしかしたらこれらがその銃痕だろうか。
makurako is watching you.
駅舎の外に出ると、線路のガード下にたくさんの住宅が建ち並んでいた。駅に近い立地だから住むには便利なのかもしれない。
古びたMakitaの工具が道端に佇んでいた。
駅からちょっと東側へ歩くと、鶴見川に出た。
晴天の下、蒼く光る広々とした河川を眺めるのは清々しい気分だった。
再び国道駅に戻り、改札を抜けてホーム上に立った。ほんの数十分程度の滞在時間だったが、ちょっとした時空旅行をしたかのような気分だった。
でも交通手段の1つとして日々国道駅を利用する近隣の人々にとっては、よそ者の僕から見ると異様に映るこの駅の光景も、日単位でループする日常の風景の中に溶け込んだ一コマに過ぎないのだろう。
線路はどこまでもつながってるからまた来てみたいな。
文章:KOSSE
撮影:ETSU & KOSSE
場所:JR国道駅(神奈川県横浜市)
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