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今宵の演奏会は...


2022年3月25日金曜日。
当時高校2年生だった私達T高校吹奏楽部の集大成となる、定期演奏会が開催された日。





特別な夜のプログラム





第Ⅰ部 Symphonic Stage

♪オーメンズ・オブ・ラブ
 吹奏楽ではド定番、奏者と聴者が同じ波に乗りやすいこの曲で、今宵の演奏会は幕を開ける。
なんとなくレトロチックで哀愁漂う感じ、私はとても好き。

♪スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス
 
困難な状況を万事解決させる魔法の言葉。1964年の映画『メリーポピンズ』の劇中で歌われる楽曲。クラリネットからトロンボーン、チューバへと受け渡されていくソロの流れに思わず胸が躍る。
楽しい曲調と段々テンポアップするワクワク感の印象的なこの曲は、第Ⅰ部にふさわしい曲だったと実感。この曲は確か私が提案したような。選ばれて良かった~そして曲名が中々覚えれんかった〜

♪魔女の宅急便コレクション
 練習時間削減の為に、今まで演奏した曲の中で誰もが知っているという理由で選ばれた曲。
『旅立ち』のクラリネットを聴くと何故か泣きそうになる、我を忘れてしまうほどに美しい。




第Ⅱ部 (高校名) Airlines 『機長と不思議な空の旅』

3月25日18時半、大阪/メビウス空港より出発、音楽とともに世界旅行。
7月25日19時、帰還。

便名:TAL325

たった30分で世界一周し、日本に戻る頃には4カ月後の真夏になっているという不合理な設定の下、私達は会場のお客様と共に飛行機に搭乗。
第Ⅲ部の伏線を張ったつもり。

機内安全ビデオののちに離陸したTAL325便は、二人の客室乗務員の司会進行により、優雅な旅が始まった。
目的地は機長の気分によって変わるらしい…


♪どこまでも ~How Far I'll Go~
 どこからともなく聞こえてくるカモメの鳴き声、海の音。
ここは、南太平洋に位置するポリネシア諸島。美しい海と爽やかな風が魅力的なこの場所に、『モアナと伝説の海』の舞台となったタヒチのボラボラ島がある。

♪故郷の空  in Swing
 次は寒い地方、イギリスの北に位置するスコットランド。
スコットランド民謡の『故郷の空』は曲に合わせて日本語で歌詞をつけられ、日本でも親しまれている。
福田洋介氏編曲吹奏楽スウィングアレンジのこの曲は、クラリネット、フルート、サックス、チューバ、トロンボーン、トランペット、ドラムのソロがあり、特定の一人が輝ける場面を7つも用意されている。
特に中高生の演奏会の場では、需要と供給が釣り合っており都合がいい曲だ。
T高校名物(?)のダンス付き演奏。この曲では比較的シンプルな振り付け、だからこそ動きの細部までこだわりが詰まっている。

♪ALADDIN
 耳を澄ますと遠方から聞こえてくる、アラビアンなサウンド。着陸するとそこは西アジアだった。この地方と言えばあの有名なディズニー映画『アラジン』。
『A Whole New World』のアルトソロは、今回はテナーで演奏。あの色気のある音色は頭から離れない。ここの裏のトロンボーンの和音、気持ちいい。

♪Jupiter Hymn
 
大気圏を抜け地球を脱出、宇宙空間へと到達。(不可能)
会場は暗闇に包まれ、数々の星だけが光を放つ幻想的な空間。
最も輝いている星の呼吸に合わせ、神秘的な音楽が流れていく。

帰国後…
 
いつの間にか蝉の声が鳴り響く。日本の季節はすっかり、新緑の美しい夏へ。
なんとなく今から、例年とはまた違った夏を楽しめるような気がする。





第Ⅲ部 Special Stage ~あの夏~

 旅行から帰ってくると、いつの間にか夏となっていた。
私たちの夏は、某ウイルスに奪われた。そんな私たちの失われた青春の夏を今、取り返そう。

♪アフリカン・シンフォニー
 
ドーーーーーン、ドーーーーーン。
夏の夜の静けさを打ち切るように、ホールいっぱいに響き渡る。
同時に、鋭く強いスポットライトが照らされた。
学生指揮の2人が法被を身に纏い、和太鼓で心を通わせる。
ドン、ドドッドッドン、ドドッドッ
4台の和太鼓のアフリカンなリズムに先導され、ホルンが吠える。
エネルギッシュでパワフル、見た目も雰囲気もお祭り気分。
そこはかとなく夏を感じるのは気のせいだろうか。

♪Summer  ーPiano Solo Featureー
 絶対やりたい、と我を通し続けた曲。
我らが顧問、M先生はピアノのプロと言っても過言ではない。悪く言えば、先生を上手く利用したかった、ごめんなさい。
だけどホントに、M先生が輝ける場面を設けることができてよかった。先生と私たちが対話し、感謝を伝え合っているような感覚になれるこの曲を演奏できてよかった。なぜなら、定演後の終わりの会で、M先生の異動を私達に伝えられるのだから。

♪海の声
 四方八方から聞こえる波の音。眼前に広がる大海原。
お礼を言いたげなカメがこちらを見つめている。
ここに三線の音が入るのが私の理想だった。

♪あの日聞いた歌
 なんか聞いたことある、が詰まったメドレー曲。思わず口ずさみたくなりますよね。木管が『春の小川』の連符地獄に苦しんでいたような。
唯一演奏するまで知らなった曲『椰子の実』の味わい深さが、たまらなく好き。




卒部式

♪さくら
 ひとつ上の先輩方の卒部式。お世話になった先輩に感謝を伝え、見送る。
ただそれだけ。部長さん、ここで涙を流してくれたら最高だったな。


実長・副実長の挨拶

 目の前に物理の先生が座っていて、見つめ合ったことは覚えている。
改めて、客席が概ね埋まるほどのお客様に来ていただいていたことに気づき、胸が熱くなった。


アンコール

♪Make Her Mine  -in Swing-
 ノリが良く、多少の脱力感を備えながらも勢いで完走できるこの曲はアンコールにピッタリ。中間部にペット&ボーン、アルトのソロ。

案の定、ダブルアンコールをいただく。用意していた曲が無かったため、同じ曲を爆速で吹く。
二回目の爆速演奏、勢いに任せた無理やり感がユーモラスで非常に良かった。


終演後

 ロビーで挨拶。大勢のお客様と友達に私達のすべてが詰まった演奏会を見に来ていただけたことに、感極まった。
ご来場いただいた方々、本当にありがとうございました。




あの日を振り返ってみて

2022年3月25日は、18年間生きてきた中で最も素敵な一日を過ごせたって断言できる。あの日の一瞬たりとも決して忘れたくない。

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