点P

あなたとわたしがここにいる
そこに過不足はない
これ以上も以下もなく
それ以外もそれ自身もなかった

手を重ね
一層思い出す
この星にないエネルギー
この星で使えないエネルギー
まるで偽物の紙幣として扱われた
本当の紙幣
の中にある
交換可能なわたし
交換可能なあなた
が、同じ時代で生を受け
東経135度の子午線で
目が合う

その時でした
動く点Pが教科書の中で
その動きを観測されたのは

それでもなお
彼は
自分のことを淡々とやっていました
自分の胎動を
観測されているとはつゆ知らず
死んでいた
数直線のかなたで
ページをめくられるたび
その存在は忘れられていた

しかし
観測されたその瞬間から
点Pは永遠になる
生と死の狭間で
淡々と動きながら
ふと
微笑みを
わたしたちに見せた

その時でした
等価交換の世界の中
あなたがわたしを観測し、
わたしがあなたを観測する
わたしたちは点Pではない
ルールを持つ種族
それは
山を超え
孤高を超え
存在を超え
Just here we are
ただここにいる
それが喜びとなる

点Pは
見つめていた
その愛を
淡々と巡る
周期的運動を行いながら

その時でした
点Pが死を迎え
二度と現れなくなったのは
この星で使えないエネルギーを
使い果たしたから

そうして
わたしたちの
5月に生まれる春となる

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