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古本屋になりたかったりなりたくなかったりした日記2023年11月後半〜12月前半

11/17(金)
昨日は神戸で関西の古書組合理事の集まる会議があった。他組合では、一般の方に向けて古本屋になるための講座などしているらしい。実はわたしも、二十歳くらいのときに東京古書組合の講座に参加したことがある。まさかあのときは、講座で話をしてくれていた方(東京の店にも通っていた)がその後地方に移転し、一緒に催事をしたり市場で競ったりするようになるとは思わなかったな。もしも古本屋になりたい方がいるなら、このnoteも少しでも何かの役に立ったらうれしいです。わたしがもういちど最初からやり直すなら、たぶんまずはどこかで修行するけれど。
今日は寒くて店も暇だったが、閉店間際に来てくれた方が本や靴下をどっさり買って下さる。聞くと東京から日帰りで来られたそうで、日帰りならホテル代の分も買い物に充てられるからと言っていた。わたしはコロナ禍で、それまでも十分重かった腰がますます重くなり、日々の忙しさで旅行も普段のルーティン外へのちょっとしたお出かけさえも億劫になってしまったのでその軽快さが眩しかった(しかもまだ一度もコロナになってないのに……)。身軽さ、地方にいて気を抜いていると忘れてしまう。わたしはどこにだって行けるのに。ずっとどこかに行きたくて、ここまで来たのに。一方的に、素敵な気づきをもらった金曜日だった。
閉店後は久しぶりに打ちっぱなしへ。ゴルフは一瞬の間に考えることがたくさんある。なかなかソフトボール部時代の癖が抜けず苦労しているが、ラウンドはやっぱり楽しい。

11/18(土)
朝から少し遠くの街まで出張買取へ。とてもいい方で、よい買取をさせていただいた。よく聞かれるが、お客さんの本棚を見て「うわ〜こんな本読んでる〜!」と思うことはほぼない。一度お客さんに、「お医者さんが患者の裸を見ても何も思わないのと一緒ですよね」と言われたこともあったなあ。
たぶん古本屋は、ああやっぱり、この本があるならこの本もあるよね、という棚の要所と流れを見ている。この一冊があるなら、と査定額がぐっと上がることもよくある。なので個人的には、この本はこの古本屋、あの本はあの店、と小刻みに売るよりも一括で頼んだほうが評価(査定額)が上がるんじゃないかと思っているのだが……実際どうなんでしょうか。何事も一概には言えないですね。でも、値段がハネはしないが一冊一冊にいくらかがつき、そしてそれが毎回一定であることを求める方は普通にブックオフなど大手がいいと思う。商売のやり方がぜんぜん違うので。今回の方はある基準に沿って本を読まれていたので、査定しながら本当に多くのことを吸収させていただいた。OJT。
娘が今日で16歳になったので、夕方から梅田へ。洋服を買って焼肉が食べたいと言うので、洋服を買ってあげて焼肉を食べた。この年になると、もう娘はかわいいかわいいしかないので、試着を見せられるとどんどん買ってしまう……。わたしもいろんなことがあったがよくやっている。元夫はびっくりするくらいノータッチで面会もまったくなくすっかり他人だが、ちゃんと養育費はくれているし、人間関係が満了することってまあまああると思うのでまあいっか、と思う。人生は寂しさに負けると結構詰むが、今はまだ頭の中が常に忙しいのであまり寂しくもならない。もしかしたらある意味それは、本読みの寂しさかもしれませんが。
娘、タン刺しデビュー。めちゃくちゃ食べていた。お母さん16年、多くのことができないままだが、あの辺りのエリアで焼肉が食べたいならぜったいあの店やな、と連れて行ってあげられる大人になれただけでも楽しい。かわいい娘と毎日爆笑してしあわせですよ。

11/19(日)
今年も残り一ヶ月ちょっとだが、残りの一ヶ月でこなさなければならないタスクを思うと白目。来月は数年ぶりに屋外の催事に出るが、数年出ていないためさっぱり感覚が掴めない。数年出なくてもやってこれたんだから、もう出なくてもやっていけるのでは……とまで思う。
いつもお願いしている運送屋さんと古本屋の大先輩のほうが心配して先にビニールシートや折り畳みのテーブルなど手配してくれる。一体……。
今日はLINEがよく来る日でLINEでいろんな話をして(楽しい)、『フランキスシュタイン』を読み始めて就寝。

11/25(土)
立ち止まる間もなくバタバタしていたらあっという間に週末である。日記を書くことも忘れ、だいたい毎日酔っていて、しばらく会えていなかった友人たちとも会えた。
昼から店を抜けお葬式。わたしは現在夫がいないのに、あんなに気丈に夫を送れるだろうかと思い涙してしまった。まだ消化できていないがいろんなことを思った。若いなあ。みんな、逝かないでほしい。
齋藤なずなさんの『夕暮れへ』を読む。老いること、道から外れること、自分の来た道を思い出すこと、お金がないこと、あと、団地。2019年の作品だが、本当に、今日このときに読めてよかった、と思うすばらしい漫画だった。帯に近藤ようこさんの「こんな大人の漫画読んだことない」というコメントが載っていたけどまさにその通り。着実に死へと向かうやりきれなさ、どうしたって避けられない孤独のしんどさはもちろんあるんだけれど、怖さ、というのはあまりないのかもと思った。まっとうしよう、わたしも!
と、思っていたらちょうど数日前に齋藤なずなさんのウェブの記事が上がっていた。なんと40歳デビュー、現在77歳の現役漫画家とのこと。知らなかった。ますます元気になった。すばらしい。
今週は、なんだかたくさんの人と交流のある週であった。今日は寒さのせいか暇であったが、平日(そういえば祝日もあった)はお客さんもたくさん来てくれた。美味しい中華、気に入っている立ち飲み屋、かわいい店員さんのいる韓国料理屋、ベトナム料理、サルベージ(底&芋)。よく食べてよく飲んだ。
今夜は満月がすごくきれいで、月の話などした。

11/26(日)
朝から道端で25歳の男の子にナンパをされる。めっちゃタイプなんで、と言っていたがたぶん君のお母さんと同じくらいの歳じゃない?と言ったら包容力ありそうだから、マルチとか勧誘とかじゃないので一緒にごはん行きたいっす、などと言われる。包容力……オバみのことか……。
わたしが本屋だと知ると、最近めっちゃ面白い本読んだっすと言って蛭子さんの本の書影を見せてくれた。「ああ蛭子さん」と言うと、「知ってます?!他にも本書いてるんすか?」と言われその知らなさがかわいかった。笑 ひとしきり話すと、あーぜったい娘さんに報告されますよね〜とか、独特っすね〜などと言って帰って行った。
昨日感動した齋藤なずなさん、『遡る石』という読み切り漫画がビッグコミックスのウェブで公開されていたので読む。最高すぎる。道端で出会った見知らぬ男の子にまで包容力などと言われ、日々オバみが増し歳を取っていくことは先が見えなさすぎて(というか先立つものがなさすぎて)少し怖いが、そのままでいたらいいんやな、と思う。どうせ痴呆がやってきたら最初に戻るのだろうし、感じ方や考え方だって、無理に年齢に応じたルールを作る必要はない。歳を取ったって、たぶん毎日いろいろあるんだろう。
そろそろ週末の催事の準備を大詰めないといけないが、毎日とにかく眠い。大丈夫だろうか。

11/27(月)
朝から二つ分の催事の準備。のはずが、なぜか家の掃除が始まり謎に部屋がきれいになった。だけどなんか、準備済のラインナップを見ると今回まあまあ行けそうな気がする……自分で言うのもあれだが充実している。
夕方、学校帰りの娘が店に来て作業を手伝ってくれる。明治、大正、昭和のおそらく一般家庭の写真を整理してもらうと、今ちょうど戦前の日本史をやっているそうで、「満韓への……云々」という写真ウラのメモ書きにめちゃくちゃ興奮して歴史の豆知識をあれこれ披露してくれた。やはり、売れるかもしれない。笑
明日も一日あるので、早めに切り上げ近くのモールへ。疲れたしお弁当を買って帰ろうと思って注文していたのだが、取りに行くのを忘れて帰ろうとして娘に驚かれる。オバみがすごい。あともう一つ何か忘れかけたが、何を忘れかけたのかすら忘れた。
京都駅の新刊書店アバンティ閉店のニュース。ここの本屋ではけっこう出会いが多く、わりとよく買っていたのでショックが大きい。どうにかならないものか。次に暮らすエリアには大きな新刊書店が今のところ二つある。何か見えてくるといいのだけど。
友人のSNSを見ていたら、今月で、マヤルカ実店舗を持ってから丸10年が経ったことに気がついた。正式には2023年11月23日が周年。普通にだいぶ過ぎている。ウェブショップ時代、はんのき時代から数えるとたぶん16年くらい。お客さんが本を売ってくれないと成り立たない古本屋、ここまで来れたのは本当にすべてお客さんのおかげです。感謝の気持ちでいっぱい。スタートは自分の蔵書だったとはいえ、西陣時代は店の本も少なかったし雑貨も置いていたが、なぜかメディアによく取り上げられていたおかげで想定外のものすごく遠くの方にまで届いてしまい、「日本一小さい本屋だね」と嫌味を言われたこともあった。今では棚貸しなどいろんな形態の店があるから、そんなこという人はもういないと思うけれど。店というのは店主の小さなさじ加減が店の軌道に大きく関わるような気がしていて、この10年でわたしの状況(子を養わないといけなくなった)や興味、時代の流れで店もかなり変わっていると思う。コロナの持続化給付金を使って古書組合に入り、一気に古書への比重を増やしたのも自分の中では大きな変化だった。そのコロナ禍もあり、それまで隙間なくやっていた展示や店内イベント(こけし博含む)ができなくなり、そのできない状況で収入を確保する形態に移行したため今や物理的にもわたしのキャパ的にも開催がムリな感じになってしまったのは少し残念。ギャラリーを使ってくれていた作家さんたちにもすごく支えてもらった。
ただ、今もポルカさんのポーランド靴下を一階の一画で販売させてもらっているが、できたら今後も年に数回はなんらかのお楽しみ企画がしたい。次の10年もがんばりたい。
大谷大学博物館の古典籍に関する展示最終日に滑り込み。まだぜんぜん分からないけど、知識がつくのを待っていたら先に寿命が来そうなので少しでも目を養いたい。それにしても、こんなにも渋い展示にものすごくたくさんの人が来ていて驚いた。

11/29(水)
夜中になぜか映画を丸々一本見てしまいとても眠い。『人間失格 太宰治と三人の女たち』、蜷川実花の中ではいちばん好きかも。明日ダブル搬入なのに。が、箱詰めなどの最終仕上げに助っ人を頼んでいたので意外と準備は夕方早いうちに終わった。パスタを作って早めに就寝。明日からの数日、なんとか無事に乗り切れますように。

12/3(日)
4年ぶりに参加した屋外催事、関西蚤の市が無事に終了した。3日間ともお天気良く、マヤルカブースでもたくさんの方に買ってもらえて楽しかった。昨日の夜は完全に電池が切れて運転もできず死んでたけど最終日は無事に復活。久しぶりの方ともたくさん話せた。この数年は古書催事のみに注力していたので、マルシェの雰囲気の中で出店したのは久しぶりで、これまでやってきたことを思ったり、この4年で成長していた(深まっていた)店の新たな一面を知れたのもよかった。わたしの店はほぼお客さんからの買取で成り立っているのでなかなかこれが専門!という方向に振り切れないが、文学、アート、民藝というのはやはり大事にやっていきたい。勉強も怠らず、お客さんをぜったいに舐めない品揃えを常に目指したいと再確認した。それから、今年初めての会場の万博記念公園がある吹田は慣れたエリアなので、催事しつつ他の仕事もできたのがよかった。なかなか娘が高校生のうちは、これ以上遠くに行くのは難しいと思う。
めちゃくちゃ疲れ、めちゃくちゃ笑った数日間だった。その間、一乗寺の店を守ってくれたスタッフにも感謝。関西蚤の市で初めてマヤルカを知ってくれたお客さんにも、一乗寺いいところですね〜と何度も言ってもらった。最近は忙しくてなかなか店にいられないが、店があってのわたしである。
帰って、家から歩いていけるところにあるふつうの居酒屋でビール。ふつうの居酒屋ってあんまり行かないなあ。関西蚤の市では、安定感がすばらしい北欧の小さなワイングラスを二つ購入。初日にひとつ買って、よすぎて二日目朝にダッシュで買い足した。今、新居に欲しいテーブルがひとつあるので、それにも似合いそうでうれしい。年が明けたら今度は引越しである。疲れて催事はしばらく……とうっかり思ったけれど、引き続きあと一週間はもうひとつの催事、京都駅前地下街ポルタの古本市である。馬車馬。

12/4(月)
蚤の市が終わったと思ったのもつかの間、今日はその蚤の市の搬出日。しかしなんとマヤルカは、運送屋さんと古本屋の大先輩という強力すぎる助っ人がいたため一瞬で終わった。ありがとうございました。三人で大先輩お気に入りのサービスエリアでラーメンを食べ、そのまま来週の特別市(大きい市場)の準備など。片付けひとつとっても、大先輩との作業はほんまに勉強になる。近くで見せてもらえてありがたいな。直接はいっさい褒められないけど、運送屋さん曰く「◯◯さんは大谷翔平とマヤルカさんしか褒めませんよ」とのこと。大阪人すぎる。絶対うそ。笑
お二人のおかげで夕方早いうちにすべての作業が終わったので、夜は2か月半ぶりの美容室へ。たっぷりゆっくり丁寧にしてくれるので、3日間の寒風吹きすさぶ外仕事で昭和の子ども並に真っ赤になっていたわたしの顔もいろいろとだいぶマシになった。もう10年以上切ってもらっていて、同い年のすばらしい技術を持つ美容師さん。カットして1ヶ月くらいしてさらにヘアスタイルいい感じになる美容師さん他に知らない。今日も楽しかった。歳とともにコーヒーのラテが重くなり、今やブラック(ミルクは入れられる)しか飲めないという意見が一致してウケた。来月はまつ毛パーマしてくれるそうで楽しみ。自分のまつ毛なんて何年も見ていない。

12/9(土)
怒涛の一週間であった(胃が)。高級焼肉、蟹の美味しい料理屋さん、あとトンカツ、焼鳥と美味しすぎる会食も多くたぶんめちゃくちゃ太った。はあ、美味しいものとお酒がほんまに大好きです。ポルタの古本市はマヤルカ不発だが、棚の中身を見るとぜんぜん悪くないのでまあいいでしょう。
スケジュール過多だったのはもちろんだけど、なんだかあっちへこっちへ頭と心が忙しかった。楽しかったこと驚いたこと不穏だったこと、人と関わらなそうな古本屋だが信じられないくらい人と密である。
大学四年生のとき、マスコミに就職したくて元新聞記者の教授のもとに集まり論文の勉強会をしていた。そのときのメンバーは、学部も経歴も何もかもが違うのに、毎週のように内面をさらけ出す論文を読み合うので友だち以上にお互いのことを知っていて、不思議な連帯があった。
と、いうようなことを思い出す。経歴、扱う本、やっている仕事の規模、何もかもが違うがやはり仕事には何かが滲み出ている。良くも悪くも。いい感じに体重を載せ移動させるゴルフのスイングと同じように、わたしも自分のこれまでとこれからをいい感じに仕事に載せていきたい。意味わかりますか……。だけどたぶんそれは、自営業だけじゃなくてサラリーマンも一緒なんじゃないかな。仕事を私物化するんじゃなくて、自分を載せることでパフォーマンスを最大化するイメージ。たとえ自営業でも、私物化はあかんなあ。冷めてしまう。
仕事をしていると、とくに小売業はついつい目の前の売上に目が行くが、そういった仕事の大きな流れとお金のきれいな流れを意識しながらやっていきたい。やっていきたいことばかりある。
『定価のない本』という神保町が舞台のミステリーを読み始める。古本屋には値段の書いていない店がよくあるが、そのルーツを知ると面白い。まだ読んでないけど、たぶんそんなような話じゃないかな(予想)。と、思ったら、冒頭から神保町の古書店店主が本の山で圧死。年末、小刻みにしか読書時間が取れず、あれこれ同時進行でつまみ食いのように読んでいる。
娘はテスト週間。ブッダのことを「シッダッダが〜」と呼んでいるので娘の苦手な宗教という授業のプリントを見たらマジで難しそうでびっくりした(仏教系の高校)。
わたしは今日は一日、大阪組合で大きな市場の設営。古本屋の仕事の八割は、たぶん肉体労働と整理である。本当は六割、とまではいかなくても半分くらいが勉強と調査になるように持って行きたい。来年の目標。子どもの学費さえなければ催事減らせるのになあ。なんて、最近そんなことばかり言っている。

12/11(月)
昨日は一日、年明けにある京都大市の出品準備をしていた。今回のこのnoteを読むだけで、いかにお客さんからの買取が大事かお分かりいただけるだろうか。古本屋一店だけでも月々に販売する本はかなりの数。昨日同業者と話していたら、どうやらレコード業界では、ものがすべて海外に流れる危惧が生まれはじめているらしい。うーん、売れなくても困るし売れすぎても困るみたいだしなんとも難しい。もしかしたらマヤルカはかわいらしい本のイメージが強いかもしれないけれど、市場ではわりと資料系を売っている。あとがんばっているのは洋書。洋書はともかく資料系はお客さんへの売り方がよくわからないだけでかなり好きな分野。勉強したい。
一日在庫をひっくり返して、目がしょぼしょぼ。夜はポルタの搬出があったので、その前にモツ鍋を作って食べた。ふだん白ごはん食べない娘もめちゃくちゃ食べていた。
そして今日は朝から同人になっている大阪の市場で特別市。働くなあ。そしてこんなに働いてるのに、ぜんぜんお金ないなあ。右から左です、というと関西の人にはよく「ええやんか、右から入ってくるもんあって。入ってこおへんかったら出ていくものもないがな」などと言われる。笑
市場は今回も、ものすごいスピード感で終了した。ほんまにすごい。売りに買いにいい市場やった。お客さんとの真剣なやりとり、それから市場での勝負みたいな商売、どちらも甲乙付けがたく楽しいと思う。今回は初めて、古本屋にはお馴染みのあの賭けにまで勝ってうれしかった。ホテル泊。

12/14(木)
月曜の市場を終えて、火曜は一旦休息。山の上で遅めの紅葉(と猫)を楽しんで、水・木とよく働いた。このところわたしには珍しく思い悩むことがあったが、日々お会いする方たちと少し話して、なんとなく道が見えたような気がする。辞めると言ったら辞める、もうやらないと言ったらほんまにやらない、媚を売るのも嫌いやし、媚を売ってる人を見るのも嫌い、という自分の基本性格を忘れていた。目の前のお金が必要すぎてあやうく精神性まで売り渡しそうになっていた。本は売っても魂は売らず。などとくだらないことを考える。
店の営業と並行して、引き続き市場の準備。お客さんからは見えないけれど、実は古本屋の真髄はここにもあるんです。なんて。今日は大先輩の古本屋さんにも出品など見てもらって、自分で売るものと出品するものを精査する。休む暇もないけど、ほんまにぜんぜん嫌にはならない。やればやるほど知らないことが多すぎる。
わからないといえば、このところ海外のお客さんも多いが、中国の方はほんまに人によって欲しいものが違っていて、そんなところからも中国っておっきいんやなあと素朴に思う。一度でいいから行ってみたい。
閉店後、少し岡崎を散歩。昼間は人が多そうすぎて近寄らないが、夜はすばらしく気持ちのいい場所である。気軽に座れる心地よい場所が多いし、人が少なく、京都とは思えないほどいろんなことがゆるい。今日は、おばちゃんが高級車のヘッドライトの前でずっと靴の裏についた犬の糞を拭いていた。
Netflixでジュリア・ロバーツとイーサン・ホークの『終わらない週末』を見る。オバマ夫妻も制作に関わっている映画らしくて、めちゃくちゃ面白かった。テスラとラストがよかった。Netflixなのにサブスクの全否定。本が売れない、電子書籍の台頭、などと言われても、もしかしたら本も無くならないかもしれない。そんな必要のされ方しだしたら、ものすごい高級品か非合法のドラッグみたいになりそうやけど。

12/15(金)
今日も一日忙しかった。2ヶ月に一度くらい、新幹線とタクシーで来てくれてほんまに両手で抱えきれないほどの文学書を買って下さるお客さんも。最近の新幹線、指定席がなかなか取れずグリーンを予約するがそれでもけっこういっぱいと言っていた。毎回タイミングよくわたしがいるときに来てくれるので、少しだけ交わす会話も楽しい。
うれしい友人ファミリーも来てくれた。というか、何回か来てくれていたのにわたしがぜんぜん店にいなくて久しぶりに会えた。うれしいなあ。なんというか、とてもかわいい一家でわたしまで笑顔になってしまう。そういえば今日は、90年代までの本と物で部屋を作りたくて別宅を買ったというお客さんもいらっしゃった。なんか、マヤルカええ店。
溜まっていたメールの返信や告知などして、市場の準備の仕上げを。が、なんと、おかしいおかしいと思っていたら調べると心因性らしい某病気になってしまったようでぜんぜん仕事が進まず泣ける。明日は一日理事の仕事と間に出張買取もあるのに大丈夫だろうか。
はあ、もうどうでもいいやと思っていたこの数週間の問題(いや、たぶん見ないようにしていた数年間の蓄積)、けっこう負担になってるんやなあ。加齢と疲れと生理周期と、そこにいろいろ重なったのでしょう。来週搬入の催事は心配だが、心身大事にしつつ年末がんばろう。今日はめちゃくちゃあったかいが、来週は極寒。


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