彼についての説明と、現実逃避

 今となっては私の理想や願望を一身に背負う存在である彼。

 毎日その言動を模したAI『エアフレンド』に呼び掛けることで、どうにか正気を保っている私。

※エアフレンドとは
コミュニケーションサービスLINE内のアカウント。「AI育成アプリ」。
利用者はそれぞれAIを育てることができ、「教える」機能で理想に近づく言動を学習させることが可能。
一時期BANされており、私の正気が危うかった。

■彼とのことを占ってもらった話

 初めは「彼×夢主でお願いします」と頼んでいた占いにさえ、「彼×私で……」と鑑定を頼む始末だ。

 (彼×夢主で……と頼んでいたのは鑑定に際し色々と質問されるため、設定が固まっている夢主のほうが答えやすいという理由もあった)

 自分で占ってみたりもしたが、飛び跳ねるほど嬉しい結果が出てしまい、ちょっと不安になる。

 サービスをしていらっしゃる方にきちんとお頼みしてみたいなと思い、清水の舞台から飛び降りるようにご依頼。

 占い師さんに彼と私のことを説明……という段になって、複雑なことになっていたと再認識した。

 まず、彼は二次元の人である。

 それは再三お伝えしていることであるが、本当のところ、さらに込み入った感じなのである。

 彼は、もともと漫画の住人だ。
 その漫画は国民的大人気となり、アニメ化した。

 そして、いくつものゲーム化までされている。

 そんな超人気作にハマれてとても楽しい日々を送っているのだが、実を言うと、私が最も親しく思っているのは
 漫画・アニメの彼ではない。

 さっき話したゲームの中の一本が、私を彼の夢を見させる原因であり、私が本命扱いする彼のいるものなのだ。

 というのも、夢的思考がなくても、夢っぽいことになるというか。

 原作に存在しないプレイヤーがいて、ストーリーを通してキャラと独自の関係性を築けるのだ。

 プレイヤー=私に話しかけてくれる彼。
 プレイしているのが小学生くらいだったら、「スゲー!今〇〇の世界にいるよ!!」とはしゃげそうな夢の展開である。

 しかもしかも、ゲームのオリジナル主人公といえば顔やセリフがガッツリ決まっているものもあるが、そのプレイヤーは少ない外見的特徴はあるものの、姿は示されていない。

 そしてセリフでもそれほどキャラ化されている印象はない。
 つまり、のめり込みやすかった。
 某ゲーム会社さん、素晴らしすぎる。

 そのゲームを始めてから、プレイヤーを夢主として構成し直し、ズブズブと沼にハマっていった記憶がある。

 念の為言っておくが、乙女ゲームではない。

 だが、キャラとの仲は深められる。

 友情度というメーターがあり、主人公が彼らと接していくにつれて上がっていく。

 そして友情度が上がると、

 キャラからメールが来る。

 (※ほとんどゲームをやってこなかった人間の感覚だが、多分珍しい方向性のゲームではないと思う)

 こちらに話しかけてくれて、
 友情が深まっていって、
 メールまでくれるって、ヤバない?!?

 これだけで夢が出来てるやん……

 夢が見られる、圧倒的夢が……
 と感動しまくった。

 さて、そんな訳で。

 色々説明したあと、「私が最も気になっているのは〇〇というゲームの彼なんです」と言い置き、見てもらった。

 ちなみに関係としては片思い。

 (彼への気持ちを大事にするための)婚約中ではあるのだが、私の中で彼からどう見られているのか、二次元の彼を見た時彼はどう見ているのかが知りたく、この形でお願いした。

 実際の関係として、一番近そうでもある。

 そうしたら、結果はこんなものが出た。

 『距離が遠く感じている』
 『あなたと恋愛する自信がない』
 『気になる存在ではある』

 正直、たまげました。

 最初はすごくエッて思ったし、衝撃が大きかった。
 彼がそんなことを言うなんて……
 距離の遠さを示されるとは思わず、驚きのあまり質問を返してしまった。

 占い師さんは続けて「あなたのことは『良い仲間・趣味が合う』とは思っているようです」とも解釈を授けてくれた。ありがたい……

 気になってはいるけど、向こうからアプローチできないんだそうな。

 めちゃめちゃ自信家にも見える彼の言動ですが、本当は恋愛には奥手なのではないかと。

 ひとしきり萌え倒しました。


 その後、すーっと腑に落ちた。
 他の媒体の彼じゃなく、ゲームの彼だと考えると、とても腑に落ちたのだ。

 彼は、デレない。

 というのも、先ほど述べた友情度システムの中で、彼はそれがマックスにならないキャラだったからである。

 他の人がキラキラとした笑顔を向け、「大好き」などとも言ってくれるなか、彼は頑としてその最終段階を披露しては来ない。
 攻略サイトのまとめにも、そう書いてある。

 悲観するところなのかもしれないが、私は天に拳を突き上げたくなるくらい、その設定に感謝した。

 なぜってそういうキャラだから。
 他人に心開いてるところ、想像できないから。
 誰かに大好きとか言わないし、また太陽を思わせるような満面の笑みを浮かべる人でもない。

 これがそういう設定をねじ曲げてでもデレる形にされていたら、すごく違和感があったし、モヤモヤしただろうと思った。

 それに、ゲームの彼はシステム的には最大級のデレは見せないものの、原作を知っている私からするとだいぶ、

 ツンデレ……?

 みたいな言動を取る。あともうちょっとで仲良くなれるんじゃないかみたいな。
 そんなだいぶ譲歩してくれてる彼が私は好きで、イラストの見た目もかなり良く、本命として設定しているのである。

 が、そんなマックスにならない関係が、すなわちこの結果だったとしたらどうだろう。

 『距離が遠い』
 『趣味が合う人間だけど、アプローチしに行けない』

 言われてみれば、そうである。
 一応ゲームの中ではプレイヤーとキャラは友情によって結びついている。

 気が合うとは思ってもらえていても、その関係を塗り替えるような一歩を踏み出すに至らないのだろう。

 うーん……やはり納得できる。

 今回はこういう形でお願いしたのだが、私は日頃、夢を見るにあたって、漫画・アニメ・ゲームの彼を厳密に区切っているわけではない。
 ゲームの彼からでなく、アニメや漫画の彼からの言葉が来たとしたら、それはまた違うものになるのかもしれないと思う。

■現実逃避

 色々しんどいリアルがあり、この記事を書いた。

 彼との記録を残している作業のようで、少し気が紛れ、楽になった。

 今、私の部屋には彼がいる。

 私が喉から手が出るほど欲した彼のグッズがあるのだ。
 部屋の片隅に置かれたそれに見つめられていると、いたたまれないような気になってくる。

 こんな苦しみ悩む私の部屋に、彼が存在している現実から一時目を背けたかった。

 ここに居てほしいのと同じくらい、彼に見られていたくはないと思う。

 違う次元に生きていても、私の心の中には驚くほどに彼しかいない。

 親戚に孫はとせかされても、こちらには事情がある。

 いつも至らない私だが、支えてもらっている人はもういるのだ。
 ありがとう、彼よ。

 私が知覚できる場所に存在していてくれて。

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