ナイト・オブ・ザ・リビングデッド雑想
最近立て続けにブルーレイ版『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』と同作のDVD『最終版』を観ました。
私としては前者が最良で、後者は愚かな版だと思っていたのですが・・・鑑賞後はいささか見方が変わりました。
個人的なことではありますが、今でも最良の『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』はトム・サヴィーニによるリメイク版だと思っています。
ソリッドな筋書きとそつの無い演出。
オリジナルでは冒頭以降空気だったバーバラの存在に大きく意味を持たせたことなど、今でも素晴らしい出来だと思っています(同時に、ノーマークだった『監督トム・サヴィーニ』の手腕にも感心というか、脱帽です)。
それで、実はこのたびめでたく発売されたオリジナル『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』のブルーレイ版は結構楽しみにしていたんです。
アニメ『Fate』のアーチャー役である諏訪部順一さんがベンを演るというだけで『きっと盛り上がらないわけがない!』と期待に満ち満ちて、昨年12月の発売発表時点ですでに予約を入れてしまったくらいです。
でも、
・・・観ながら途中、結構早い時期で寝ちゃったんです。
率直に言えば、ロメロの演出が退屈で、諏訪部さんの熱演でも救えなかったんです。
誤解を招かないために補足しておけば私はこの作品を初めて観るわけではありません。
モノクロ版は勿論半ば黒歴史とも思われる『デッドリー・カラーエディション』も観ています。
それで以前から本作については『基本的には退屈だ』とは思っていたのですが、過去にあまたのB級映画が吹き替えの熱演で豹変したところを目の当たりにしてきていたので、『もしかすると!』という思いがかなりのところありました。
でもダメだったんですよ。
やっぱり古くさいし、公平を期して言えば『今の映画に肥えた眼』に対してこの作品の演出は正直冴えません。
なので、立て続けに観た『最終版』には全く期待はしていませんでした。
この記事をご覧の方はきっとご存じだと思いますが、何しろ本バージョン作成にロメロは全く絡んでいない上、追加撮影は『ファースト・ゾンビ』ことビル・ハインツマン。
脚本は本作オリジナル脚本の片割れジョン・A・ルッソ。
どうにも・・・失礼ながらお金儲けのニオイしか感じられません。
なので逆説的に言えばこのブルーレイの発売が無ければ観ることも無かったバージョンかもしれません。
ところがですよ、
今観ると、正直こっちの方が面白いんです。
理由はいくつか考えられるんですが、ひとつにはきっと『音楽』の存在があります。
最終版は別に音楽が作曲され、挿入されています。
これが今作が白黒映画ながら『モダン化』を強力に推進しています。
まずはこれが強力に眠気をキックしてくれます。
加えて追加撮影分は数十年越しのものでもありますし、通常どうしても浮いてしまうものなのでしょうけど、劇伴が同一トーンなので結果的に『雰囲気の統一化』に成功してしまっているんです。
そこにダメ押しで『吹き替え版』の存在があります。
つまり、『原典(60年代作成)の音源』と別途『追加した音源(90年代作成)』の間にある『絶対的な音質の差異』を繋ぐ存在として、『統一感のある台詞の音質』がある、と。
その結果耳からの違和感がかなり軽減されてしまうので、本当に楽しく観られてしまったんですよ。
なので、もしもロメロに過剰な思い入れが無く、初めてこの作品を観られる方には意外とこの『最終盤の吹き替え版』が最適かもしれないな・・・と思ったりしました。
このバージョンでの吹き替え役者の方々も洋画吹き替えでよく耳にするベテランの方ばかりです。
例えばベンの役はあの大塚芳忠さんですし!
しかしたったひとつ文句を入れるとすれば、『ラスト付近』だけは本当に蛇足でした。
あの神父のシーンさえ無ければ・・・とつくづく思います。
でも全体に見やすくブラッシュアップされていると思いますし、もう少し評価されてしかるべきだと思います。
・・・逆に、
これは言うべきはどうか悩んだんですが、こと『リビングデッド作品群』に関してロメロは神格化されすぎていると思います。
モダン・ゾンビの造形を作ったのは彼の功績だとしても、本作での演出手腕は正直まだまだだと思いますし、ストーリーテラーとして完成されるのは『死霊のえじき』や『クリープショー』を撮り上げたの80年代に入ってからだと思いますので。
だから、機会があればで結構です。
一度本バージョンを吹き替えで観ていただければなと思います。
正直私もブルーレイの発売が無ければこのバージョンを観ることは無かったでしょうと思います。
かなり楽しく観られると思いますよ。
ラストシーンさえ無ければ・・・はあ・・・本当に、そこだけが心底残念です。