眠れないオオカミ
したら 領 著
大人になってから読んだ絵本のなかで、
いちばん好きかもしれない。
一冊一筆を始めてから、偶然?辿り着いた一冊。
オオカミ好きが引き寄せたのか…。
描かれたオオカミの絵にも惹かれて。
アナログ人間なので、いまだに、やっぱり紙の本を求めてしまう私。
ようやく届いて、待ちきれずに読み始める。
本の重みを手、腕、肩…体で感じながら、ワクワクしてページを開いてゆく動作に流れる時間。
絵とか音楽って、不思議だなぁと。
同じ動物が描かれていても、自分の何処かにカチっと音を立てて止まって、すぅ〜っと溶けていくものがある。
技術や積み重ねられた経験だけではなくて、何か心臓をダイレクトに掴み絞り上げられたような、そんな衝動が一瞬にして立ち昇る。
そんな渦を感じさせてくれた作品だった。
登場する、荒くれ者のオオカミ、ミツバチ、熊、カエル、ネズミ…白いオオカミ。
可愛らしい動物達の物語ではなくて、それぞれのストーリーが陰の湖の中でグルグルと廻る。
助けたり、助けられたり、よくある絵本のストーリー展開とは異なり、それぞれがそれぞれの奥深い自分の物語を抱えながら関わっていくような。
こんなふうに言うと、なんだかドロドロした話なんだろうか?と思われてしまうだろうけれど。
ハッピー・エンドが約束されている物語では描くことが出来ないような、
希望と愛にあふれている。
明るいだけの、優しいだけの世界からは得ることができない、もっともっと、明るく輝いていて、厳しさを抱き込んだ上にだけ存在し得る優しさ。
物語を読むとき、自分や自分が生きてきた道程で触れてきた人や風景を無意識のうちに重ねたり思い出したりする。
このオオカミは、私だったなぁ…。
そんな想いが、雲のようにフワフワと浮かび、風にさらわれていくようだった。
そう、
ちゃんと自分の足で、また歩き始めたから、
とっても、ゆっくりだけど。
まだ、咲ききっていないけどね。