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【展覧会レポ】半・分解展 2024東京 -淑女の七つ道具!ロマンあふれる装身具シャトレーヌ-@大和田ギャラリー
特にこちらの展示で見たかったのは、『シャトレーヌ』という
19世紀のヨーロッパ女性が身につけていた装身具の一種です。
今回展示されていたシャトレーヌは保存状態も大変よく、
中の細かいギミックや工夫について見ることができ大変貴重でした。
また実際に持たせていただく事ができ、その重さを自分の肌で体験できました。
「半・分解展」ではシャトレーヌが1点展示されていました。
こちらについては、触れることができない展示でしたので、
勇気をもって長谷川さんにお声がけさせてもらい、構造をよく見せてもらいました。また他にも数点展示されていなかった、他の2つのシャトレーヌもみせていただきました。長谷川さん、ありがとうございました。
気づけばあっという間にギャラリーが出来て、長谷川さんのギャラリートークと共に、この素晴らしい装身具の魅力に酔いしれてしまいました。
装身具のシャトレーヌについて
・シャトレーヌとは
「シャトレーヌ(chatelaine)」は、もともとフランス語で「城の女主人」を意味する言葉でしたが、
後に実用的な装飾品を指すようになりました。
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特に19世紀のヨーロッパで流行したシャトレーヌは、ベルトやウエストに取り付けて使うアクセサリーで、鍵やハサミ、針、財布などの道具が小さなチェーンで吊るされています。当時は貴族や上流階級の女性たちが家事や裁縫のために便利な道具を持ち歩くために使っていましたが、装飾性も高く、アクセサリーの一部としても見られていました。
現在でも、アンティークのシャトレーヌはコレクターズアイテムとして大変人気があります。
・イギリス製の貝殻パースのシャトレーヌ
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素材は、真鍮に金メッキ、又は金貼りの仕上げかなと思いました。
マザーオブパールの飾りには溝が彫られていて、彩色がなされています。赤と透明な石は、ガラスストーンと思われます。
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特徴的なのは貝殻のパース(お財布)で、文字がかすれてしまって読めなかったのですが、伺ったところイギリスの港、港町の名前が入っているとのことでした。
貝殻のパースの金属部分は別材です、白い酸化の具合からして、銀と鉛あたりの合金かも。
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開くと鮮やかな赤色のポケットが蛇腹になってます。
かなり綺麗な状態だったので、ほとんど物は入れてなかったのではないかなと思います。
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ボタンブーツを着脱するときに使う、ボタンフック。
爪のお手入れに使う、マニキュアナイフは
セットになっていることが多いそうです。
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後は、シャーペンの芯入れ。
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ペンもついています。
この頃からシャーペンはあったそうで、
ペンの後ろ部分を捻ると芯が押し出される仕組みになっているようでした。
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セットでメモ帳もついていて、メモ紙は象牙を薄くスライスしたものだそうです。書き心地が気になりますね。
あとは小さな鍵。
懐中時計のぜんまいを巻く際に使っていたものだそうです。
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手紙の封を止める、シーリングスタンプもついてます。
写真にはうまく写りませんでしたが、小さなと鳥が彫ってあります。
きっと、シーリングワックスと垂らしてスタンプしたら、鳥の模様がつくことでしょう。
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こちらのシャトレーヌ、持たせていただくとなかなかの重量感です。
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港町の名前が入ったパースから、港町の貿易商の活発で裕福な奥様やお嬢さんが持っていたものなのかなと想像していました。
・オランダ製のソーイングシャトレーヌ
1880年ごろのものだそうです。
イギリス製のものに比べて、より装飾的で煌びやかです。
ハサミ入れや、ハサミにも装飾が細かくされていました。
指ぬきケースと指ぬき。
内側にはフェルトが貼ってありました。
ピンクッション。
ペン。
メモ帳。(象牙製のメモ紙)
ボタンフックとマニキュアナイフのセット。
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こちらは、その装飾性の高さから御婦人同士のお茶会ような場所で見せるために作られた、シャトレーヌだったのではないかなと思いました。
指ぬきや、ハサミ、ピンクッションなど、裁縫に関するものが一通り揃っていて、細やかな装飾がかなり女性好みかなと思います。女性の交流会の場で、あら、かわいいのをつけてらっしゃるのね。わたしのはー、と話のネタ一つになったかもしれません。
・シルバーの筆記用シャトレーヌ
どこの国のものかは不明とのことです。
チェーンのコマが丸く太めで、上記の2つに比べるとより重厚感があります。
素材は、刻印は入っていなかったですが、スターリングシルバーかそれに近しい材かなと思います。
ルーペにもグラスにもなります。
小さな文字を見るときや何かを観察するときに使っていたのでしょうか。
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上記2つのシャトレーヌより、メモ帳が大きいです。
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また、切手をいれるケースもありました。
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ロケットもついていました。
きっと中には大事な家族の写真を入れていたのかもしれませんね。
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他にもどんぐりのような形のケースには、
普段飲むお薬や小さな物入れとして入れていたのかもしれません。
装飾が華美すぎないところや、手紙に関する道具が多かったため、
ある程度年齢の過ぎた、まさに女主人が持ちそうなシャトレーヌです。
日頃から、手紙を書いたり、送ったり、物を書いたりすることが多い女性が所持していたのではないかなと思いました。
さいごに
今回の展示を通して、シャトレーヌという装身具が持つ多様な機能性や美しさ、そしてそれに込められた当時の女性たちの暮らしや文化の一端を知ることができました。
特に、実際に手に取ることで感じられる重量感や精巧な作り、歴史の息吹を肌で体験できたことは貴重な体験でした。
また展示品に込められたストーリーが、
私をはじめとした多くの鑑賞者の方に深い感動を与えるものだったと思います。展示を企画し、丁寧に解説をしてくださった長谷川さんをはじめとするスタッフの皆様に心より感謝申し上げます。
この素晴らしい展示は、装身具に込められた物語を感じる特別な時間となりました。