メロンくんと、生ハムちゃん。
ひと口大にカットしたメロンを、パルマ産の生ハムでくるりと巻く。
薄くスライスされたハムが破れないように、ゆっくりと、注意深く。
ほんとうの合わせ方など知らないけれど、軽めの赤ワインとの相性も素晴らしい。
ワインの余韻を感じながら、優しく生ハムに包まれた、冷たいメロンをひと口。
メロンの、すこし青みがかった上品な甘さ。
それを、パルマハムの控えめな塩気が引き立てる。
口いっぱいにひろがった、瑞々しいメロンの甘さの余韻から、今度は生ハムの柔らかい油分がそれを覆っていく。
口のなかの、温度が戻る。
さらりと溶け出す生ハムの油が、とても心地よく感じられる。
赤ワインを、ほんのひと口流しこむ。
そのかすかなタンニンのニュアンスが、溶け出したハムの油と合わさる。
口にいれた瞬間から余韻を楽しむまで、ずっと目を閉じていたくなる。
生ハムメロン。
これは間違いなく、至福の組み合わせなのだ。
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先日パートナーの実家から、なんとメロンが送られてきた。
まんまるで、とてもおいしそう。
香りはまだかすかだったので、きっと食べごろにはまだすこし時間がかかる。
はやく食べられますように。
そんな願いもともに、ぼくらはそのメロンを棚に飾り、これを味わう日をこころ待ちにしていた。
そのときから、決めていたのだ。
ふたりでそのまま食べてもまだまだ余裕があるだろう。
それならハムで、巻いちゃう?
うん、巻いちゃう!
ということを。
そんなこんなで昨日は1週間ぶりの、彼女とのふたりごはん。
(彼女がつくってくれたごはんはもちろんとてもおいしかったけれど、今日は生ハムメロンの話だから割愛だ。)
ごはんのあと、ゆっくりお酒を飲みながら、ひと息つく。
そして、ついにその時間がやってきた。
んふぅ〜!
ん〜まっ!!
彼女が驚きの声を上げる。
ぼくは目を閉じ、その絶妙なテイストに神経を集中させている。
もぐもぐ。
もぐもぐ。
も、もふー!!
目を開けたとき、きっとそこには天国の景色がひろがっているに違いない。
生ハムとメロンの相性は、そんなふうに思わせるくらい絶妙だった。
そんな絶妙なマリアージュの感動に浸りながら、新たに生ハムでメロンを包んでいると、彼女がこんなことを言った。
きっと、だいすーけくんは甘いからメロンだよねー。
あたしはしょっぱいし強いから生ハムだなぁ。
全然ちがうのに、チョー相性いいね♫
...。
甘いメロンはハムに包まれ、引き立てられて、先に消える。
メロンの余韻を、ハムの心地よい油が覆っていって、最後にはハムが残るのだから。
ほんとうだ。
ぼくらの力関係そのまんま。
ぼくの背中に冷たい汗がひと筋、つぅーっと伝った気がした。
じゃ、じゃあぼくらはメロンくんと、生ハムちゃんだね!
ぼくは焦って意味不明なことを口走った。
そのことにまた動揺して、無意識に彼女の太ももをさすっていた。
あっ、ここに生ハムが!
なんて、言いたかったけど、言えなかった。
生ハムメロンという、普段決して味わうことのできない贅沢なマリアージュ。
その絶妙な味わいは、ぼくらの現実の力関係そのものだった。
今日も生ハムメロンはあとすこし、残っている。
はやくこのnoteをポストして、生ハムちゃんのご機嫌をうかがわなければ。笑
今夜もこれから、たのしくごはんにします。
生ハムちゃんのつくってくれるごはん。
今日はいったいなんだろうか。
いつもおいしいごはん、ありがとうね。
ではではみなさま。
すこし駆け足でしたが、今夜はこの辺で失礼します。