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【映画】『ぼくが生きてる、ふたつの世界』

どうもmaxiです。

もう寒いから秋でいいですよね?
と言う事で芸樹の秋です。
私の芸術の秋は漫画も含めた読書とやはり映画ですねー。
この所面白い映画が豊作すぎてうれしい悲鳴です。

ここ数年は上映作品が増えて気がついたら上映が終わっているので、何とか見たい作品と話題作は頑張っているのですがそれでも限界がありますね。

1日24時間って少なくないですか?笑

そんな限られた時間の中ですが、最近見れた映画を紹介したいと思います。


『ぼくが生きてる、ふたつの世界』

監督
呉美保


キャスト
吉沢亮
忍足亜希子
今井彰人
ユースケ・サンタマリア
でんでん
ほか

【あらすじ】

宮城県の小さな港町、五十嵐家に男の子が生まれた。祖父母、両親は、“大”と名付けて誕生を喜ぶ。ほかの家庭と少しだけ違っていたのは、両親の耳がきこえないこと。幼い大にとっては、大好きな母の“通訳”をすることも“ふつう”の楽しい日常だった。しかし次第に、周りから特別視されることに戸惑い、苛立ち、母の明るささえ疎ましくなる。心を持て余したまま20歳になり、逃げるように東京へ旅立つ大だったが・・・。

『ぼくが生きてる、ふたつの世界』


作品についての感想

□俳優の演技

吉沢亮さんの中学生から大人にかけての演技はさすがでした。
中学生にしては大きい気もしますが思春期の周りと違うことに対しての異常な嫌悪感。上手いですねー。
手話ものすごくナチュラルに演じられていて普段から使っているのようでした。

そしてろう者俳優陣の圧倒的な納得度!!
見ていて納得しかさせられないリアルさと演技のマリアージュ。
主人公のお母さんとお父さんもさすがでしたが、東京に出てから交流するろう者の俳優さんたちも忘れられません。

居酒屋のトイレ前で話しかけられた会話の
(手話)「でもね、取り上げないでほしいの」
というセリフは響くものがありました。

□当事者キャスティングの意義

邦画作品でここまで「当事者キャスティング」をしていることは私が知っている限りあまりなく、これは素晴らしいことであると同時にこれが普通になって欲しいと思いました。
ろう者がろう者の役を演じるということは映画を作る上で作り手側や演出側がダイレクトに演出をつけることが難しくなるはずです。
今までは健常者の俳優に演出をつければ良いのだから細かいニュアンスも間違いもすぐに指摘すれば良いだけでした。

ろう者の俳優であると今までより手順が多くなります。
人を介さなければなりません。

仮にそこの手順が「面倒である」「必要ない」というのであれば何故ろう者や障害を持つ人を描く作品を作るに至ったのかという考えになります。

一部の拝金主義的な心無いクリエイターもいるかもしれませんが

多くの作り手は私たちの社会の差別や迫害を無くしたいし、
障害や人種の違いはあれど全ての人たちに営みはあるし健常者の視点でいう普通だけが普通ではない
ということも伝えたいはずです。
そうでなければ作る意味がない。

人の数だけ普通があるということを伝えるには「当事者キャスティング」は絶対に必要なものです。
「当事者キャスティング」はハリウッドはじめ世界中で多く、今やそうあるのが普通の状態にまできています。

ここにきて邦画は障害やマイノリティを多く描くようになってきました。
が、当事者キャスティングの作品で作るものが大きな興行になるような作品は中々ありません。
本作『ぼくが生きてる、ふたつの世界』がそのきっかけの一つになってくれることを祈るばかりです。


アトロク2『エイブリズム特集』を踏まえて

私がルーティーンで聴いているラジオ番組アフター6ジャンクション2。
アトロク2
の中で10月9日に『アクセシビリティ最前線 エイブリズムとは何か?(田中みゆき)』の回が放送されていました。

エイブリズムとは

エイブリズム(Ableism)は、障害者に対する差別や社会的偏見を意味する言葉です。障害を持つ人々は健常者よりも劣っている、障害がある人をどこかでのけもの扱いする非障害者優先主義や健常者主義という思想を指します。
意識的に差別しなくても社会システム上差別してしまうこともエイブリズムです。

このエイブリズムに関してはまた改めて詳しくやりたいと思います。

アトロク2のエイブリズム特集の中で『ぼくが生きてる、ふたつの世界』のことが少し取り上げられていました。

□『デフ・ヴォイス』との比較。字幕付きが通常盤ではない

草彅剛さんがコーダ役として演じている『デフ・ヴォイス』
こちら残念ながら現在配信されていないので私は見れていません。

この作品の優れていた点が
全て日本語会話に字幕がついているのを「通常」にしたこと
つまりは「ろう者をテーマにしている作品なのだからろう者も見やすい環境にするべき」ということを真摯に考えて作られている作品だそうです。

一方で『ぼくが生きてる、ふたつの世界』では「バリアフリー字幕版」が用意されています。
こちらは日本語会話に字幕がついているバージョンの上映です。
つまりは通常の上映を見にいくと日本語会話に字幕がついていないのです。手話には字幕がつきますが通常会話に字幕がつかない。

こういったところに健常者優位エイブリズムが出てしまうということでしょう。
私も無意識にやっている可能性が大いにありそうです。


しかし、私が見に行った10月の早い時期でしたがその時は
通常上映回にもかかわらず字幕がついていて「日本語字幕版」となっていました。

もしかしたら配給会社が即対応したのかもしれません。
すぐに対応して良く出来るのはすごくいいことだと思います。
見習いたいことです!!


終わりに

今日は『ぼくが生きてる、ふたつの世界』
を紹介させていただきました。
呉美保監督の9年ぶりの新作ということで内容は文句なしに素晴らしく
障害をもつ家族との営みに悩みに周囲のリアルな演技は忘れられないものになりました。

さらに作品に付随しての問題点や今後の邦画界の課題などもたくさん出てきていて興味深い作品でした。

チャンスがあればもう一度見たいです。

更に別の話で言うと

『デフ・ヴォイス』見たいですねー。

まめに検索して見れるチャンスも伺いたいと思います!

と言うことで今回はここまでです。

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