yamayuri

日常のふとした瞬間に光をあてて、書き綴っています。二児の母、京都在住。

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最近の記事

"This is MY way."

 この言葉にはっとさせられたのは、私が地元の小学校でALT(英語指導助手)として働いていた時のことだから、もう15年ほど前の話になる。その日は、米軍基地内に住む子どもとの交流事業で、学校に英語を話す子どもたちが数人遊びに来ていた。  ある女の子は、3年生の女の子達に交じって、ゴム跳びで遊んでいた。私はその様子を見ていたのだが、その子がゴムを踏む動きが私には馴染みのないやり方だった。なんと、がに股で2本のゴムを踏むのだ!外に開いた曲がった膝で着地する姿は、なんとも不安定で、そ

    • 言語学の観点で見るアメリカと日本の行動比較

       時はコロナ期真っ只中の2020年。大統領選挙に向けた活動が活発化していたアメリカにおいて、トランプ陣営による大規模な集会が新型コロナウイルス感染者を増加させたと、現地の保健局が発表したことがありました。マスクをしない聴衆が密集し、思い思いに大声で叫んでいる姿を見た時には、まさか今年の映像ではあるまい、と思わず目を疑ってしまいました。2020年当初、9割近い人がマスクを着用して外出することが常識であった日本に住む私の目には、それはとても衝撃的な光景として映ったのです。  実

      • 心の国境を越えて

         “Are you from Korea?” と言って私から話しかけた相手は、韓国人の大学生だった。バスの後部座席。まさか隣に座っていた男の子が韓国人だとは思っていなかったが、彼が急に他の座席の女の子と韓国語で話し始めたので韓国人観光客であるとわかったのである。”Yes.” と答えた彼は、始めは驚きと戸惑いの表情だったが、すぐに懐っこい笑顔を見せてくれた。大学のStudy tourで金閣寺に行く途中だそうだ。  私は日頃、機会があれば観光客らしき方々に話しかけている。自分自

        • 山の神様

          「ねぇ、案内してくれる?」 巧みな言葉で息子を山登りに誘い出す。お目当ては、最近彼が幼稚園の遠足でお友達と行った山だ。「うん、いいよ。」まんまと策略に引っ掛かった息子は、得意気な表情を浮かべた。 息子を先頭に、はぁはぁ息を切らしながら山道を進む。遅れをとる妹と私を気遣って、要所要所で立ち止まっては「こっちだよ」と声をかけてくれる。 「すごくいい景色だよ!」一足先に山頂に着いた息子の清々しい声が響きわたる。「ここにはねぇ、山の神様がいるんだよ!」 そうして息子は帰り道も案

          素敵な「ヒトリグラシ」

          5歳になる息子が「マンションに住んでみたい」と言い出したので「一人暮らし」とはどのようなものかについて話をしていた。話をするうち、息子は「僕は一人暮らししたくない」と言ったが、横で聞いていた3歳の娘が「わたしヒトリグラシしたい!わたしヒトリグラシできる!」とはしゃぎ始めた。さすが女の子。自立心がもう育っているのかと感心した。すると「まっててね」と娘が言った。お料理の真似事でもするのかと思ってみていると、彼女は洗面所に向かった。しばらくして洗面所から戻ってきた彼女の小さな手には

          素敵な「ヒトリグラシ」

          やさしさの論理

          「やさしさとは、ある行為を受けた人の心の中に存在するものである」深夜のファミレスで、【やさしさとは何か】について議論し合っていた大学生たちは、そういう結論に至った様子だった。他にどんな意見が飛び交っていたのかを全く思い出せないほどに、鮮やかな結論だった。その結論を導いたのは、グループのリーダーらしき青年だった。彼は、つぶらな瞳の奥を輝かせながら、真面目な顔で、慎重に言葉を選びながら話した。 「今、皆の話を聞いてて思ったんやけど。。」 彼の話はこんな前置きから始まった。

          やさしさの論理

          幸せのコップ

          歯を磨き終わった後、蛇口までまだ手が届きにくい妹のために、さりげなく歯磨き用のお水をコップに入れておいてくれる兄。私が訊くまで何も言わず、これは妹の分?と訊ねると、にこっとして、うん、と答える。君の笑顔に私はちょっと胸が締め付けられて、忙しい朝は、素敵な朝になる。5歳の君は、母の想像をはるかに越えて頼もしい。 今日も幸せな朝をありがとう。

          幸せのコップ

          山の終わり、人生の始まり

          「海は向こう側に終わりがないから不安になる。山は終わりがあるから安心するんですよ。」ある芸能人のこんな一言が、10年以上前の一人旅を思い出させた。  大学を卒業し、小さな会社に就職して1年目の秋だった。知り合いの一人もいない街で、仕事もプライベートもうまくいかず、私は一人、人生の途中で迷子になってしまったような気分で過ごしていた。その時思い立って訪れたのが高知県室戸市の吉良川という、江戸時代の家屋が立ち並ぶ小さな町だった。  海沿いを走る電車に揺られ、吉良川の駅に降り立ち

          山の終わり、人生の始まり

          カフェの野望

          ちょっとコジャレたカフェの店内。背中が大胆に開いたセクシーニットを着た若い女性が座っていた。少し離れた席に、彼女の無防備な背中にちらちらと目をやる中年男性が座っていた。 女性は、ゆるいウェーブのかかった茶色く長い髪を持ち上げ、白く、細いうなじを見せた。男はあからさまに彼女のうなじに見入り始めた。唾を飲み込む音が今にも聴こえてきそうなほどに。 その時、店のドアが開き、吊り下げられたウィンドチャイムの音がけたたましく店内に鳴り響いた。ドアの前には、オレンジ色のTシャツを纏った

          カフェの野望