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30年間ずっと他人だと思っていた音楽と友達になれた

昔何かのポスターで見た「音楽と友達に」というコピーにケッと思った。そんな私もなれました、音楽と友達に。



30年間ずっと、音楽は憧れの他人だった

小学生の頃だろうか、クラスメイトとカラオケに行って上手く歌えなかった、恥ずかしくて、楽しくなかったという記憶がある。それからずっと、音楽は苦手な科目だったし、カラオケは人の歌を聴く場所だった。そして、歌わないから周りに気を使わせてしまうことが多い場所でもあった。
それでも、音楽の素敵さは知っていた。歌の上手な友達がキラキラして見えた。大きな口を開けて、狭い部屋に声をいっぱいに響かせて、歌詞が心に直接どすんと届く。特に、高校の部活が同じだったふたりの友達の歌う歌が本当に素敵で、カラオケでふたりが歌うと胸がドキドキした。私には手が届かないけど、音楽はずっと憧れの他人だった。


その時はやってきた

会社の先輩の送別会だったと思う。終電後に二次会で朝までカラオケに行くことになった。いつもなら行かないけれど、来ている人がなんだかみんな好きかもと思ったので着いて行くことにした。
ひとりの後輩が、Adoの「Tot Musica」を歌った瞬間、目の前がチカチカして耳と胸のところがビリビリした。お酒に酔った頭がスーッと冴えるのを感じた。
その後輩は千穂さんと言って、器用で賢くて愉快でなんでもできるように見えるのにたまにどこか自信がなさそうな顔を見せる人だった。千穂さんはこんな風に歌が歌えるんだ、なんでもできるどころの話ではない。こんな夢みたいな魔法みたいなことができるのに、いままでよくもまあなんでもない顔をしてデスクに座っていたな、と信じられない気持ちが込み上げた。私だったら、音楽に愛されているんですフフというのを仕事の随所随所に出してしまうと思う。秘めていた(?)のもとんでもなくかっこいい。私の魂が千穂さんのファンだと主張して震えていた。
その日、私はいつも通り一曲も歌わなかった。朝になって送別会は解散したけれど、胸のビリビリが収まらなくて全然眠くなかった。そのままひとりで家の最寄り駅のカラオケに入った。初めてのことで、曲が全然思いつかなくて、高校生のときに合唱コンクールで歌ったCOSMOSを何度も歌った。当時、足を引っ張りたくなくてたくさん練習したからなんとか歌えた。
その後、千穂さんと仲良くなったことをいいことに、ふたりでカラオケに行って、1〜2時間歌ってもらうというファンとしては贅沢が過ぎるイベントをしてもらった。観客も単独の千穂さん単独ライブだ。そんなことが何度かあって、私の中で変化が生まれた。一緒に歌ってみたいと思った。手の届かない憧れだったはずなのに、音楽は他人だと思っていたのに。


音楽と友達になれたかもしれない

それから、歌のとても上手な会社の先輩に教えてもらって、歌を練習している。うちの会社はなぜか歌が上手な人がたくさんいるのだ(会社の歌が上手な人を集めて、各自に歌ってほしい歌をリクエストする逆ワンマンライブを開いたこともある)。
練習している曲は、以下のみっつ。
・COSMOS(合唱曲)
・ぼくたちの失敗(森田童子)
・かみつきたい(カネコアヤノ)

いつかもっと歌うことに自信がついて楽しくなったら、千穂さんと一緒に歌えたら、音楽が親友になってくれる気がする。
人前で歌が歌える。これは私の人生にとって本当に本当に大きなことだ。カラオケだけではなくて、ドライブ中にみんなと、誰かと旅行中に朝の支度をしているとき、歌を口ずさめる。
夢みたいだ。


(もしかしたら本当に千穂さんがAdoなのかもと思って、Adoのライブ日程と千穂さんのアリバイを調べてしまった。違った。)



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