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お宿集録① 畑中旅館@青森県下北半島

仕事でたくさんのいろんな田舎の集落や町に行くので、その宿のことを書いてみる。

本州の北端の町まで来て、戦時中から営業していたという、88歳の女将さんがひとりでやっている民宿に泊まった。
戦時中に宿に泊まる人ってどんな人だろうと聞いてみると、家が焼けた人たちだったそう。お金は海で金物などを拾って稼いでいたのだった気がする、と言っていた。

この町にある海沿いの家は海にせり出ていて、玄関を通さずに海に行けるような設計になっていたりするらしい。モルディブだ。なんかいいね。なんのためにだろうと後から思う。聞けばよかったな。

近くの別の食堂だけどこんな感じ?


この宿にいる間、おばあちゃんち(母の実家)のことをたくさん思い出した。私はおばあちゃんちが大好きだったが、一人暮らしになったタイミングに合わせて祖母はマンションに引っ越して、家はもう取り壊してしまった。においとか、壁の材質とか、もうどうにもならないところから記憶が呼び起こされた。宿をここにしてよかった。
部屋に戻るとちょうど祖母から電話がかかってきて、宿のことを話すと、「真綿はお年寄りが好きだからよかったね」と初耳なことを言われた。お年寄りが好きなわけじゃなくて、あなたが好きなだけなんだけど。「せっかく宿にいるんだら、家でできないことをしなさい」と、家にはないテレビの鑑賞を勧められた。金言だ。

おばあちゃんちすぎた天井
おばあちゃんちすぎたキラキラけばけばの壁


私は宿の部屋をすぐに散らかすことができる。テレビの調子を見に来てくれた女将さんが、「荷物を整理しているのね」と言うので、「ただ散らかしただけです」と答えたら、「そういうこともあるのか」と言っていてなんかよかった。そういうこともあるんです。

女将さんは娘時代からこの近くに住んでいるそうで、ぼーっとしたいときに行くという近所のとっておきの場所を教えてくれた。私はいつだってぼーっとしたいので、翌朝にすぐ行ってみた。なんだかとんでもない気持ちになった。写真を撮ったけどこりゃわしだけの思い出じゃいと思う。



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