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人の「ダメさ」に寄り添う思想

人生を生きていれば、「自分はバカだな……」、「自分は本当にダメな奴だな……」等々、思い詰めてしまうこともあるかもしれません。

私自身は脳筋なので「悩む」ということ自体が少ないかもしれないのですが、それでも時には落ち込むこともあります。これは私の弱い部分であり、いわゆる「ダメ」なところとも言えるかもしれません。

私の思想の多くは実のところ、天才や聖人君子といったいわゆる立派な人々の役に立てるように計算されているものが多いのですが、こうした思想は金子みすゞ的な「みんなちがって、みんないい」という類型の思想をもたらしやすいかもしれません。これには様々な理由があるのですが、そもそも天才というのが極端に「優しい」人たちだからというのが大きいです。彼らは優しいがために、自分の限界を超えて公益のために超人的な努力を重ねます。結果、何かの精神障害などになってしまう人も少なくないでしょう。彼らの高い理想は彼らを勇気づけもしますが、絶望させもします。彼らは「すべて」を必死に守ろうとしますが、それでもたくさんの命の欠片は涙と一緒にポロポロと零れ落ちていくのです。

天才にも辛いところ、つまり「ダメさ」というのがあるのですね。彼らは欲張りなので、泣いて苦しんでいるたった一人の人も見捨てたくはないのです。「諦めが悪い」というふうにも言えます。

さて、一方で「バカのための思想」というのもあるのです。それは「バカ」が幸せになるためにはどうすればいいのか? ということを真剣に考察し、入念に設計された思想でもあります。

また、こうした事業は「馬鹿に付ける薬はない」という諺があるように極めて難度が高いです。

しかし、一部の天才はそれでも諦めないのです。馬鹿な人たちを助けることを。

そうした類稀なバカのための思想として、私が見る限りで最高峰のものは現代の日本にあり、その結論は「みんなちがって、みんなダメ」という一見すると過激なフレーズに彩られています。この概念は、イスラーム法学者の中田考氏によって設計されたもので、また見ての通り、詩の天才である金子みすゞの提起する「みんなちがって、みんないい」という理念へのカウンターともなっています。中田氏はその著書『みんなちがって、みんなダメ』の中で時に厳しい視点で以て人間の抱える「ダメさ」に優しく寄り添っています。

人生を生きていく中でいわゆる「不幸」を漠然と感じていたり、何となく不満で苦しかったり……そんな徴候のある多くの人におすすめな優しい本です。劇薬ではありつつも(笑)

天才もバカもいつかすべての人たちが幸福になれるように。祈ります。



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