ウィーン工房 食器セットについて
そのカトラリー は4本 並んでいる。
左から…これはきっと ナイフだろう。見た目が鋭利ではないのでバターナイフのようにも見えるが少し人を殺せそうな雰囲気を持っている。
その右隣にあるのが フォーク。光を反射していてよく磨かれたのがわかる。僕らが普段見る フォークよりも頭の部分が小さくて、今と昔では デザインの「おしゃれ」の基準が違うことがわかる。
その右隣が スプーンだ。不思議なことに、口をつけて食べる部分は楕円形で、横に長い。これではどの方向からアプローチしても口に入れるのが難しそうに思えるのは私だけだろうか?それとも難しいこと自体が マナー というものの尊さなのだろうか。
最後 一番右に置かれているのは、ちんまりとした これまた スプーンである。こちらのスプーンは先の方が完全に円で丸くなっていて、1つ左隣の楕円形なスプーンと比べれば ずいぶん取り扱い易そうだ。ただし、どうしてスプーンが2つあるのかは 僕には分からない。
この写真には 独特の雰囲気が漂っている。
普通このように カトラリーが並べられるということは、人をもてなしたり、食事を楽しむ前を連想させるものだ。
しかし、この写真は全体的に青みがかっていて、金属のシャープさが より活きるような撮影の仕方をされているからか、どこか ハンニバル みがある。
つまり、何を食べるために用意されたのか?ということに、思想を巡らせる 余地がある写真ということだ。
どうしてもっと、「これから 美味しいものが待っていますよ。それをこれで食べるんですからね」という風な写真の撮り方をしなかったのか?カトラリー というものの美しさを切り取りたかったのだろうか、それとも 写真 全体を通して何か含みを持たせて見たものに考えさせたかったのだろうか。
私がこの ただ 4本のカトラリーが並んだ写真に惹かれた理由はわからない。
ただこの画を見た瞬間に、やはり 異質 さというものを他の写真よりもより強く感じた。
このカトラリーたちはもはや、いや。このカトラリーを用意した招き人は、もはや 食事を美味しく食べようなんて きっと思っていないんじゃないか。もしかしたら これから来る人は 招かれざる客で、本当は大嫌いな相手で、そのお客が座る席の楕円形のスプーンの先には小さく 毒が塗られているんじゃないだろうか。それも 死ぬとかなんとかいう毒ではなくて、ちょっとひどめにお腹を下すとか、ドラッグのように 酩酊させて変な行動を取らせて 恥をかかせる算段でもしてあるんじゃないだろうか。
僕がたった1枚の、たった4本のカトラリーが横並びにされただけの写真から これだけ 考えてしまうのは、僕の性格に何かしらの変質さがあるということをちょっと自覚せざるを得ないのかもしれない。
そういう意味では、この写真は非常に成功していると言えるだろう。たった1枚の、たった4本の食器が、見た人間の内臓を暴いてしまったのだから。
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