21/22 ラ・リーガ#23バルセロナ×アトレティコマドリ― シメオネのファーストプランはいかに!
今回はバルセロナ×アトレティコの試合でのシメオネのプランについて考察したいと思います。
この試合のメンバーです。
冬の移籍市場で獲得したトラオレが移籍後初スタメンになりました。
アトレティコの5枚の中盤
それではアトレティコの守備戦術について紹介します。
まずバルセロナの攻撃時の配置ですが上図のようになります。
シャビ就任当初からの4123のまま5エリアに人を配置して攻撃します。
左サイドはアルバがOVR(オーバーラップ)、ガビがハーフバイタル、デヨンクがクロースロールしてアルバとピケの間におりるという3人がローテーションする形もあり、24分などOVRしたアルバにデヨンクからのパスが出てチャンスを演出することになりました。
このようなバルセロナの攻撃に対して、アトレティコは上図のように451のブロックを構築して、ハイプレスをかけるということはありませんでした。
スアレスはブスケツを、両WGはバルセロナの両SBのマークをします。そのため、前述のアルバの攻撃参加にはカラスコがそのまま守備に戻っていました。アウヴェスは偽SB的な役割をしていたため、フェリックスはそれに合わせて高い位置に残っていました。左サイドの深い位置までボールが運ばれるとプレスバックをしていました。
CBに対してはボールホルダーCBにのみボールサイドのIHがプレッシャーをかけに出ていました。
IHが出てくるとCBはヨコパスをします。SBにはしっかりWGが対応することができます。しかしCB間のヨコパスに対してアトレティコの守備の連動はありませんでした。
ブスケツを抑えているスアレスとしては、IHに出るように要求していましたが、IHとしては背後のハーフバイタルに選手がいて自分が出てしまうと、中にスペースを作りそこを使われてしまうと考えなかなか出れませんでした。
シメオネとしては451のブロックを構えたことの狙いは、バルサの手前からのライン間へのタテパスを入れさせないことだと思います。したがってCBにプレッシャーがかからない状況があっても許容していたと思います。
実際2失点後の26分からは下図のようにスアレスがアラウホに出て、それに連動してプレスをかける守備をしていました。その後は2トップにして両CBにプレスをかけられるようにしました。
自分たちが勝っているもしくは同点の状態が続くのであれば、中盤や背後にスペースを作らないように451でブロックを作り、失点をしない戦い方を考えていたと思います。
思わぬ形で先制したアトレティコでしたが、前半の20分で2失点という展開になり、守備的なプランを継続することが困難になり、前線からプレスをかけるようにプランを変更することになりました。
シャビのバルサの試合を見ると、リトリートする敵に対しては5エリアに人を配置する優位性を活かすながら戦うことができます。しかしビジャレアル戦のようにビルドアップ時にハイプレスをかけられる試合はうまくいかないことがあります。アトレティコもアウェイではありますが、勇気を持って立ち上がりからハイプレスをかける戦い方を選択してもよかったと思います。
451のブロックによりCBから直にライン間へのパスはそれほどありませんでした。しかし、CBには余裕ができピケなどからサイドへパスが出され、パスを受けたトラオレが1対1を仕掛ける展開ができていました。トラオレとエルモソの攻防はトラオレが圧倒していました。4バックであるので、外に開くトラオレまでのスライドの距離が長く、トラオレは余裕を持ってエルモソと対峙することが多かったです。
バルセロナの同点弾はトラオレのドリブル突破があったことでボールを深い位置まで運べました。逆転弾もトラオレのドリブル突破からのクロスでのアシストでした。トラオレのマッチアップをエルモソにしてしまったこともこの試合の展開に大きな影響を与えました。
また右のハーフバイタルのペドリにはヒメネスやレマルがスライドして対応しようと頑張っていましたが、4バックのためどうしてもスライドが遅れてしまいライン間でボールを持たれる場面もありました。
フェランの顔出し
中盤を5枚にして、ライン間へのタテパスを入れさせないことを狙ったアトレティコでしたが、すべてのライン間へのボールを対処できていたわけではありません。
上図はバルセロナの逆転弾のクロスを上げる前段階である、ボールを前進させる過程です。アトレティコの中盤が左から右へのスライドの際にできた、デパウルとコケの間のブロック間にできたスペースができました。そこにフェランが顔を出しブスケツにレイオフしました。そして、ブスケツからライン間のペドリにパスが通りました。ペドリのトラップが乱れましたが、結果的にトラオレに渡ることになりそのままアシストをしました。
コケがスペースを開けてしまったのは、ボールホルダーであるピケが右に展開するようなキックフェイントをしたことが背景にあり、ピケの能力の高さを感じさせます。このフェイントでサヴィッチのフェランへのアプローチも遅れ、フェランは妨害されずに丁寧にブスケツにレイオフすることができました。
いくら5枚の中盤を並べても今回のバルセロナのように後方で回し、中盤にスペースを作り、そのスぺスースを利用することで中央から崩すことも不可能ではありません。したがって、今回のアトレティコの守備プランは効果的とは言い難いです。
以上のことを考慮するとCBにボールを持たせるならば、ゴール前に人数をそろえる守備(5バックでハーフスペースを埋めるなど)。もしくは、ボールの出所となるCBなどにプレスをかけそれに連動する守備。どちらか明確にすることがこの試合のアトレティコには必要だったと感じました。
選手の適材適所
下図はこの試合前半のアトレティコの攻撃時の配置です。
左サイドのエルモソ、フェリックス・右サイドのカラスコ、ブルサリコこの両サイドの選手起用は選手の特性からすると不思議です。
まずは左サイドについてです。
エルモソは本来CBの選手です。したがってサイドの高い位置をとることが得意ではありません。今までのエルモソが使われた試合でも左SBとして起用されても攻撃時には中にスライドして3バックの一角としてプレーしていました。
そしてフェリックスはサイドに張ってドリブルを仕掛けるというよりも、ハーフバイタルやストライカーの近くでプレーしてチャンスを演出する選手だと思います。もしくは、フェリックスが外でも内でもプレーしてもそれに合わせて立ち位置を変えられるSBが必要になります。
両者の特性を考えると、両選手とも内側でのプレーを得意としていて左サイドには外でプレーすることに特化した選手がいないことになります。これにより、ただでさえ少ない攻撃回数も左右バランスよく配置ができないため思うような攻撃はできませんでした。
右サイドのカラスコ、ブルサリコはブルサリコが上がる分カラスコが工夫して内側に移動して、ポジションを被らないようにしていました。しかし、カラスコも本来はサイドに張ってドリブルを仕掛けることが得意な選手です。
2失点後ようやく下図のようなカラスコが左WBの532となり守備や攻撃時の配置の問題を解消しようとしました。
しかし、守備時に敵SBへ誰がプレスに出るのかが不明確でプレスをかけるが誰かがフリーなっていたり、単純な巧さで簡単にボールが奪えませんでした。攻撃時にはバルセロナのように5エリアを使えず、ハイプレスに苦しんでいました。そして、3点目を喫してしまいました。
後半には、敵SBにはIH、IHが出れないときにはWBが対応という532のプレスのかけ方が伝えられ修正され、ビルドアップに制限がかけられていました。しかし後半の早い時間に4失点目をくらい厳しい状況になってしまいました。
まとめ
最初から532で後半開始からのような守備を行っていたらこの試合は全く違う結果になっていたかもしれません。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
スコア
バルセロナ (4ー2) アトレティコマドリ―