食卓
「起きてよ、まだ寝てるの」
風呂場の掃除の後、
寝起きが極端に悪かった妻をベッドから起こし、
半ば無理やりリビングの椅子に座らせる。
家庭菜園で育てた茄子がちょうど食べごろの大きさになっていたので
スープに一緒に入れた。
やはり何度も内見をして
日当たりのいい部屋を選んだのは正解だったようだ。
「もうずっと朝ごはん僕じゃん、たまには作ってよ」
スープを煮たてつつキッチンから少し離れたリビングへ声を掛ける。
やはりその声に返ってくるものは無く
いわゆる半分寝ている状態なのだろう。
朝が強い僕にはなぜ起きられないのか本当に解らない。
僕はすぐ起きれる体質で本当に良かった。
と、つくづく思う。
チン、とトースターの音が鳴ったと同時にコンロの火も消した。
キッチンとリビングの往復が面倒なので
両手いっぱいに皿を持つ。
椅子の背もたれにぐったりと全体重を預けている。
「出来たよ、さあ食べよう」
僕は今日も、“かつて妻だったもの”と食卓を囲む。
トーストが二枚とスープが二杯、
この部屋で動く心臓は一つ。