ルネッサンス(古典復興)が好き~「聖母子像」の変化にみる時代の情熱~
「ルネッサンス」は、中世から近代への転換点である15世紀に、古典復興を標榜した一大ムーブメントです。その魅力は、今でも私たちを魅了してやまない、まさに「転換点」のエネルギー、ドラマ的にいいかえれば、「情熱」にあるんじゃないかと思います。
とにかく、ウザイくらいにアツい情熱がなければ、時代を転換させることなんかできないわけですが、逆に言えば、今まで当たり前のこととして受け入れてきたことを、ひっくり返すだけの情熱が、そんな時代では、誰にでも天から降ってくるんじゃないかなと思えるから、憧れてしまうのです。
そんな熱い情熱が創り出したルネッサンスの百花繚乱の傑作の数々とみていると、わたしのように日々の生活に疲れ果てていても、元気をもらえるような気がするのでした。
フィリッポ・リッピ作「聖母子と二天使」
作者のリッピは、修道士(画僧)でありながら、なんと、修道女と駆け落ちしてしまいます。
死罪に相当する大罪ではありましたが、彼の才能を評価していたコジモ・デ・メディチの計らいで、教皇から還俗と結婚を許されます。そうして、結ばれたルクレツィア(聖母)と息子(手前の天使)をモデルにしてこの絵を描きました。
リッピは、ボッティチェリの師として知られ、彼の息子フィリピーノは、ボッティチェリに学び画家になったとか。
画僧という立場がどういうものだったかは、よくわかりませんが、わたしの独断ですが、神にこの身を捧げるというよりは、絵を描くことが好きで、絵をかいて生活できるならと、修道士になったような人も多かったのではないかと思います。
そんななか、美しい修道女と出会って、大恋愛というのは、リッポに限らずあったような・・・まあ、普通ならスキャンダルでしょうけど、やっぱり時代の転換点では、恋愛に限らず情熱的な行為は、むしろ称賛されたのではないでしょうか。
洋の東西、時代を問わず、男女の醜聞と称賛は、紙一重なのでしょう。
それにしても、実際にウフィツィ美術館で見ると、この絵のマリア様は本当に美しい、そして、天使もかわいい。
それは、宗教絵画の形をとっているけれども、愛する妻と子どもを持った男の幸せというものが伝わってくる絵でもあります。
妻をそんなふうに描いた男がカッコよく思える今の時代は、まさに時代の転換点なのかもしれません。