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韓国ドラマ『怪物』感想~善と悪が絡まるトリックアートのようなサスペンス~

1 怪物はあいつか、俺自身か

2021年の第57回百想芸術大賞で7つのノミネートを受け、最優秀ドラマ、最優秀脚本、最優秀俳優を受賞した。まさに、2021年を代表するドラマとなった「怪物」。それも納得の面白さだった。

<ストーリー>エリート警察官のジュウォン(ヨ・ジング)は片田舎のマニャン派出所勤務を命じられる。パートナーを組むことになったのはドンシク(シン・ハギュン)。実はドンシクは20年前に妹を連続殺人事件で失い、その容疑者となった過去があった。そんな中マニャンで20年前と同じような猟奇殺人事件が発生。事件の捜査を始めるジュウォンだったが、かつての事件の資料が消えていたり、警察庁次長の父から捜査しないよう命じられる。町ぐるみで何かを隠しているのではと感じたジュウォン。実はジュウォンがマニャンにやってきたのはある理由があった。そして一方のドンシクも胸の内に秘密を抱えていた。ジュウォンとドンシクはお互いに疑いの目を向けながら共に事件を捜査することに。

登場人物全員が怪しすぎる、そして、全員が演技が上手すぎるものだから、見ている方は、底なし沼のようなこのドラマにどんどん引き込まれていくが、善悪の境目はどこにあるのか、精神の正常と異常の境目はどこにあるのか、何が何だかだんだん分からなくなっていく。
あらゆる犯罪は、そんな人間の心の弱さや不可解さを抜きには語れないという心理サスペンスになっている。

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2 演技の重厚さとは人間の内面を表現すること

視聴者をその心理劇に引き込んでいくのに、主演のシン・ハギュンの演技力の功績がひと際大きかったは、言うまでもない。
シン・ハギュンは、このドラマで百想芸術大賞でも最優秀演技賞を受賞した。このときは、「サイコだけど大丈夫」のキム・スヒョン、「ヴィンチェンツォ」のソン・ジュンギ、「悪の華」のイ・ジュンギがノミネートされていたが、演技力をみると彼らとはレベルが違った。この結果は、誰もが納得だと思う。

シン・ハギュンはいわゆる韓流スターではないが、あの、ぺ・ドゥナキム・ゴウンが元カノというだけあって意識高い系韓流女性ファン(自分ではただのミーハーではないと思っている)にとっては気になる存在だと思う。
やっぱり、中身のある男というのはモテるのではないだろうか。
そりゃ、女性ファンの数からいったら、キム・スヒョンやソン・ジュンギ、イ・ジュンギなんかの足元にも及ばないだろうが、ファンの質はどうだろうか?とつい、余計なことを考えてしまう。
シン・ハギュンは、絶対に、リアルモテ男だと思うのだ・・・。まあ、男性から見たら、どう見えるのかは気になるところだが。

そのシン・ハギュンの胸を借りて、思う存分やってくれたのがヨ・ジングだ。「天才子役」の「子役」が取れて、もうただの「天才」になっているような・・・?前述の30代の韓流スターのお三方はもとより、あのユ・アインの20代の頃より、ヨ・ジングは間違いなく演技が上手い。

思い返せば、「イルジメ」でイ・ジュンギの子ども時代を、「太陽を抱く月」でキム・スヒョンの少年時代をやっていたわけだからキャリアは長いがそれにしても、演技が上手すぎる。テレビでは看板ドラマで、映画では名優との共演とオファーが絶えない環境にも恵まれていて、韓国映画・ドラマ界の『世子』的扱いなのだ。そのせいか、わたしは、彼がセリフ無しで座っている佇まいにも品があると思ってしまう。

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このドラマでは、内面の心理を表現する重厚さまで出ていた。ヨ・ジングは、いずれそう遠くない将来に、各映画祭で最優秀演技賞を総ナメする日が来るだろうと思う。

3 心理サスペンスに存在感を示す女性監督

このドラマは、そのOSTもちょっとノスタルジックな感じで、舞台も片田舎で、猟奇的連続殺人事件を扱っていて、いかにも生粋の韓国映画を思わせる重厚な作りになっているが、意外にも、その演出をしたのは、若手の女性監督シム・ナヨンであった。

サスペンスやホラーでは、被害者が女性、加害者は男性というパターンが定型化されているけれども、韓国映画ではその描き方もエグい感じなのだが、創り出す側に、実力派女性が進出していることで、今後、どのようなサスペンス作品が生まれていくのかが楽しみになってきた。




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