ここは理想郷?田舎の中学生生活を描いた青春ドラマ「ラケット少年団」~次世代はこうやって育成していくものなのだ~
なんのことはない、中学生の青春ドラマなのに、ついつい見始めたとと思ったら、あっという間に最終回まで進んでしまった。
なぜなら、まるで桃源郷のような田舎で、繰り広げられるヒューマンドラマに、癒されたからだった。
「イカゲーム」とは、全く逆のドラマだった。
このドラマのなかで、こんなセリフがある。
人生の勝利者はと考えると、年代によってその答えは違う、
高校3年生なら、どこの大学に入れたのか。
大学生なら、どこの一流企業に就職できたのか。
そして、40歳になったら、年収と不動産はどのくらいあるのか。
だけど、それが中学生なら、どうだろう。
まだ、何ものであるかがわからない中学生なら、何を持っているのが勝利者なのだろうか。
答えは、「友情」。それがこのドラマの出した答えだった。
主人公のユン・へガン(タン・ジュンサン)はプロを目指す野球少年。だが、へガンは、父も母もバトミントンの元国家代表選手という一家に生まれて、幼いころはバトミントン界では神童と呼ばれていた過去があった。
しかし、父親が友人の借金の保証人になったことから、へガンの野球クラブの費用も出せない経済状況になってしまった。へガンの妹に喘息があることから、父親は、ソウルから田舎の中学校のバトミントンコーチの職に就く。田舎に転校してきたへガンは、寄せ集めのバドミントン部を廃部の危機から救うため、コーチである父親とともに、再びバトミントンをはじめて、大奮闘するのだが・・・。
中学生の友情を描いているから、出てくる子役はみな演技上手だが、彼らを取り巻く大人は、みな韓国ドラマの名脇役ばかりである。
その豪華なキャスティングをみれば、このドラマは、ティーン向けのドラマではなく、大人に対してメッセージ性を強く打ち出しているのがわかる。
主人公ユン・へガンを演じるタン・ジュンサン。彼の演技が上手いのは知っていたけど、バトミントンがこんなに上手いとは‼ 経験者なの?
「椿の花が咲く頃」で、トンべクの息子役だったキム・ガンフンも出ていて、こちらもまた、しっかり泣きの演技で見せ場を作っていた。
そして、脇を固めるのは、韓国ドラマ通なら誰もが知っている名優ばかり。あ、あの人も、この人も、とお馴染みの面々が次々と出てくるのだ。
なかでも、お馴染みの名優アン・ネサン、国家代表監督の役なのだが、日韓戦の時に、「日本には絶対に勝たなきゃ。日本は嫌いだろ」と言って、子どもたちから「別に日本は嫌いじゃありません。むしろ、日本人選手とはお互いに仲がいいです。もちろん、試合には勝ちたい、一生懸命やるけど、バトミントンはバトミントンですから」と反論されてしまう。彼の「君たちの方が大人だな」と言うシーンは、このドラマの見せ場のひとつとなっている。
ちょっと韓流通なら、アン・ネサンが、かつては、学生闘争のバリバリの活動家だったという経歴も知っているわけで、あらためて、このシーンのヒューマンな意味を感じ取ってしまうのだった。
そして、ユン・へガンの父親役は、キム・サンギュン。
こちらも、韓流ファン歴がちょっと長ければ、誰でも知っている演技派俳優。ポン・ジュノ監督の韓国映画史に残る名作「殺人の追憶」を見た方も多いだろう。このドラマでは、ちょっと頼りないようにみえて、実はとてもいい父親であり、コーチである人物像をしっかり演じている。
思春期の子どもとどう向き合うか、父権を振りかざすことなく、その成長を支えるひとつのロールモデルになっているのではないだろうか。
個性的だが、主人公の母も、バトミントン部の監督も、田舎の村民もみないい人ばかりで、中学生からみたら、現実もこんな大人たちばかりなら、どんなにいいだろうかと思うようなドラマだ。こんな大人がいてくれたら、安心して、友情をはぐくんでいけると思うのだ。
中学生にとって、友達を作り、友情とは何かを知ることの大切さ。
そして、そのためには、中学生の精神生活をはぐくむ土壌である環境が大切なのだということ。
次世代を育成するためには、その土壌を耕す大人の役割の大切さを、訴えているドラマだと感じた。
最期まで読んでくださってありがとうございます。誰かに読んでもらえるなんて、それだけで嬉しいです。もし、気に入っていただけたら、スキしていただければもちろんもっと嬉しいです。よろしくお願いします。