読切マンガ制作中(閑話・休題)
拙著『松宅AFTER』や『松宅劇場』は、納得いくまで何度でも描き直すというようなことはしておらず、日記マンガのような感覚で描いていました。
『松宅AFTER』に関して言えば、精神疾患との闘病中に描いていたものなので、まともに線を引くのも難儀しましたし、もう情念に突き動かされて筆を握っていたと思います。
という訳で、本気で描く読切制作は約2年ぶり。
画力もさぞ落ちているんだろうなと覚悟して描き始めました。
しかし、最初こそ戸惑ったものの、思った以上に描けている。
なんなら上達しているポイントもありました。
それは、アタリの取り方が上手くなっていたことです。
たとえば、フカンの構図で腕を組んでいる女の子を描こうとして、いざ描こうという時「どう描いていいのか分からない」というのは、よくあることです。
スマホで自撮りしたり、ネットで検索したりして、なんとか描けるよう資料を集めます。
上手い人だと、アタリならササッと描けると思います(下描きやペン入れの時は資料を参考にすることは多いと思いますが)。
しかし、今回はササッとまではいきませんが、なんとなくアタリが取れるようになっている!?
あるいは、クリスタなら3Dデッサン人形を使って、アタリを取る方も多いですが、3Dデッサン人形をなぞるだけだと、どうしてもカクカクしたぎこちないポーズになってしまうことが多いです。
私も以前はそれが悩みでした。
今回はポーズがぎこちなくなく、自然な感じで描けている!?
これは本気で描いていない日記マンガとはいえ、さまざまなポーズを自撮りしたり、検索したりして描き続けていたから上達したのだと思います。
そしてようやく、基礎練習が大事だというその意味を悟りました。
クロッキー、ドローイング、模写などは自分の引き出しを増やす為にとても重要だったのです。
「ボクサーがゴリラに右アッパーを打っている」という絵を描く必要がある状況になった場合、ゴリラを描いたことがあるのか、右アッパーを打っている絵を描いたことがあるのかで、その1コマの完成までに要する時間は倍以上変わってくるでしょう。
絵は暗記がめちゃくちゃ重要なのです。
1度でもその対象物やポーズを描いたことがあるのかどうか、たくさん描いて引き出しが多ければ多い程、時間をかけずに描くことができます。
よく誤解されがちなのですが、マンガやイラストを描いているから何でも描けるなんてことはなく、資料がなければ、ほとんど描けないって人は多いです。
「〇〇描いて」とリクエストされて描ける人は、過去に〇〇を描いたことがあるからです。そして絵の暗記をしてきて、その引き出しが多い人程、様々な状況に対応できます。
週刊連載の作家が、この引き出しが少ない場合、時間がいくらあっても足りないと感じるでしょうし、何日も徹夜なんてことにもなりかねないでしょう。
地道な基礎練習と日々の積み重ね。
「マンガ家やイラストレーターは、好きなことを仕事にしてて羨ましい」
しかしそれは、そんなに甘くはないということですね。
むしろ激辛だと思います。
サポートして頂けるのは大変ありがたいです。頂いたサポートは、少しでも長くマンガを描き、記事を書き続ける為の活動費として使わせて頂きます。