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にげる
「あ。」
夏季ボーナスに向けた職場の目標シートを、書き損じていることに気づいた。途中から一行ずれている。
その瞬間、何もかもが嫌になった。
今日は休みだけど、期日が近いから急ごうよ。
今日は休みだから、見なかったことにして明日出せばいいじゃん。
分かっている。心の中ではとっくに、黒い悪魔の私が圧勝している。
汚い話だが、最近は職場のことを考えると、なんだか唾液が止まらない。
垂涎するほど職場が好きだからではない。これはたぶん、吐き気に似た何かだ。
体調はずっとなんとなく悪い。鏡に映る自分のことも好きになれない。
そういう時は…。
そういう時は、どうしてたんだっけ?
そうだ。
逃げるんだよォー!!!!!!!!!!!
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はい、という訳で。自宅の位置する大阪から5時間かけて、愛媛県・伊予大洲(いよおおず)にやってまいりました。
古い町並みと美しい風景から「伊予の小京都」とも呼ばれているそうです。シンプルな市章。めちゃくちゃかっこいい由来だなぁ。
この旅の目的である宿のチェックインは16:00。
ちょっと時間があるから、まずはカフェに行こうかね。
「お待たせしました。かわいくできましたよ!!」
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ちょっと、おねえさん、写真と違いますよ!!
かりんとうついてるし、ケーキハロウィン仕様なんですけど!!オバケ乗っちゃってるんですけど!!サービスしすぎではありませんか?大丈夫ですか?
戸惑いながらケーキを食べる。おいしい。地元の人たちの雑談が耳に心地いい。流れるBGMは…。「夜来香」だ。なんかレトロで、いい街だなあ。
私が伊予大洲を訪れて驚いたのは、出会う方々の気さくさだ。
「どこからいらっしゃったんですか?」に始まり、一気に雑談へと持っていく会話スキルがすごい。
あたしゃ、見習いたいよ…(涙)
朝、街を歩いていると、知らない人同士「おはようございます」と挨拶。柴犬と散歩するマダムも会釈。
大都市ではこうはいかないだろう。知らない人を見れば「いかのおすし」なのだ。
豊かな自然が大らかな気質を育むのでしょうか。
特に驚いたのは、ふらっと訪れた臥龍山荘。
![](https://assets.st-note.com/img/1728990378-ten8MWYB37KzcUyxTQPfpurk.jpg?width=1200)
でつけーーーーー山!!!!!
地元の子供たちが河原で追いかけっこをする姿が本当に美しかった。
何故か「こんなん勝てへんわ」という感想が心の底から湧いてきて、笑ってしまった。
せっかくだから中にも入ってみました。
建物の中を吹き抜ける風の涼しさ。ほんのり香る金木犀にびっくり。
いやはや、秋ですなぁ。
不老庵では、「もう一歩前に出て~!」と欄干で記念撮影する地元ファミリーが。
ここへ…乗るの?
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ここに…?
木の間から下が透けているんですけど。
更にその下は断崖絶壁なんですけど。
バキッと割れて落ちたりしないのかしら…。
そっと乗って、急いで退散。くわばらくわばら。
ふと見た天井は…全部竹だ。調べたところによると船底をイメージして、竹網代の一枚編みを貼ってあるとのこと!ヒィ~ッ、途中で編みに失敗したりしたらどうすんの?こんなにでっかく一面でさぁ。
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岸壁の建築作業は怖かっただろうな。そりゃあ構想10年に工期4年かかる訳だわ。
沢山の人が関わって、建てて、それを今も美しく保ち続けている。
そして、この建物は守られ続ける限り、100年も、1000年もここに存在し続けるのだ。
すごいなぁ。果てしない時の流れを思うと、ぼうっと気が遠くなる。遠くなる…。
…えっ、16:00。
いかん、いかん。果てしない時の流れに想いを馳せすぎて、宿のチェックイン時間を過ぎている。
急いで、臥龍山荘を後にした。
…あっ、ここにかわいい雑貨屋さんが♡
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「こんにちは~」
20分ほど遅刻したが、無事に宿へ到着。
宿のご主人がお優しい方でよかった。宿泊利用についての説明を簡単に受けて、鍵を受け取る。
私がこの宿に泊まる理由、それは…。
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「にゃ~ん」
あ~っ、お猫様!!
10匹の猫がいる宿。
最もフィジカルで最もプリミティブで最もフェティッシュな場だと思いませんか。地面師、まだ見たことないけど。
逃げることを決めた時、「なんとなくいつか行きたい場所ベスト5」にランクインしていたこの場が真っ先に思い浮かんだ。訪れるなら、一番疲れている今だ!と確信したのです。
チュールを持てば、わらわらとすり寄るサビ、白、黒、三毛たち。なんだ。天国か。
![](https://assets.st-note.com/img/1728990647-maS0TJ3DgMPY9W8KIkebyuQ1.jpg?width=1200)
あ~、やっぱ自分の直感って最高だわ。
その確信は、やがて狂気に代わるのであった…。
~次回予告~
「この子と一晩過ごしてみますか?」
「エッ??????」
「ヒョッヒョッヒョッヒョッwwwwww」
「…あったかい…」
(私の気が向けば) 後半に続く!
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