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キモオタ映画「アイ・ライク・ムービーズ-I Like Movies-」ネタバレ 考察 DVDの解説

「アニオタはアニメが好きなわけじゃない」

「逃げた先にアニメがあっただけ」
芸人の伊集院 光がそう言ったらしい。
押井 守も「日常に耐えれないから妄想に逃げてる」って言ってた。

真意は分からないけど、趣味って現実逃避の為にやってる気がする。
それがアニメでも映画でも。
仕事や学校が辛かったり、性格や障害で生きるのが辛かったりすると逃げ出したくなる。

クソみたいな日々に耐えれない。だから映画がやめられない。

ローレンスはちょっと足りない。

主人公ローレンスは店長のアラナにナルシシストと言われる。※1
証拠は以下の通り。
・友達や店長への無神経な発言。
・バイトで直ぐに9万ドル稼げると思ってる。
・スパルタカスオナニー。
画面を見るでもなく、何か想像するでもなくシコる。
つまり「スパルタカスを観てる自分」でシコってる。

こいつ、自己愛性パーソナリティ障害だ。
ついでに貧乏で童貞だ。だから学校じゃ浮きっぱなし。
さぞ生きづらいだろう。そんな現実から逃げ出す為に彼は映画を観続ける。
でも現実はいつまでも待ってはくれない。

「ソフィーの選択」は観ない。

冒頭でバッファロー66かソフィーの選択で迷った時、バッファロー66を選んだ。なんか臭う。

雑に言えば、
バッファロー66は誘拐した少女と愛し合う話。
ソフィーの選択は憧れたカップルが嘘まみれだった話。
憧れた存在の恐ろしい真実なんて見たくない。※2

世界や人生に救いを求め、現実と向き合う事を避けるローレンス。
そこに現れるのが映画業界の闇を知ってるアラナだ。
自分の逃避先すら清廉じゃない事を知り、さらには自分より優秀なローレンと言う女子に、友達も青春動画も奪われてしまう。
勿論、原因は自分にある。いわゆる「キモオタ」だからだ。

オタクは自分の話しかしない。

自分が愛おしくてたまらないから。
周りがウンザリしてても関係ない。だからキモがられる。

きっと僕もやってたし、何かに熱中するとワガママになる。
ローレンスがそうなのは辛いことがあったからだ。
父の自殺で生きるのがシンドイので映画に耽っていく。
で、ワガママになっていく。元々の性分でもあっただろうけど。
ただ誰だって辛い目に遭ってる事をアラナを通して知っていく。

俺の話を聞け。

いや、お前が聞け。お前だけがシンドイわけでない。
ローレンの家を覗くマットをローレンスはバカにする。
マットはそれだけ他人に興味があるって事だ。
なので彼らは動画を完成させる。独りよがりのローレンスを置き去りにして。

「世間はお前らの母親ではない」とは漫画「カイジ」のセリフだけど、高校を卒業するって事は大人になるって言える。いつまでもワガママではいられない。

それに彼は十分優しくされてきた。
一緒にいてくれるマット、趣旨の外れた動画を認めてくれるローレン。
店に泊めてクビになった同僚。母親、アラナ。
数えきれないほど愛されてきた。それを無下にし、罰を受けた。
ようやく彼は自分が愛され、自分も誰かを愛さないといけないと知った。
これからも父の自殺が彼を苦しめるのは間違いない。大学デビューもたどたどしい。きっとまた傷つく事になる。
耐えられない現実に耐え、誰かに優しくする為にまた映画を観ることになるる。だから人は映画をやめれないんだ。

備忘録

※1
自己愛性パーソナリティ障害は「NPD」と略され、NはナルシスシティックのN。
乱交描写があるワイルドシングスでシコるマットと自分でシコるローレンスは対比なのかもしれない。

※2
「バッファロー66」は、はみ出し者の主人公が少女との交流から人間関係を構築して行く話。この映画の内容に似てる。
「ソフィーの選択」は、ソフィーが過去に耐えがたい選択を迫られたトラウマに苦しみ続ける物語。ローレンスの心境に似てる。

ローレンスの行動。
監督の過去を振り返った自伝とは言うが、監督は女性。自分好きそうな感じはする。ローレンスがローレンを認めないのは自分も映画業界からハブられた経験からくる皮肉なのかもしれない。
松坂桃李がオタ活する映画を思い出した。

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