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心理学映画「ドリームシナリオ」 ネタバレ 考察

監督はエルム街の悪夢がお好き。

旬の過ぎたポールはフレディのカッコをさせられる。
夢で人を襲うから。
「エルム街の悪夢」のフレディは人の罪の象徴として登場する。
詳しくは別記事で書いた。
https://note.com/mattoz/n/n52318d75bb87?sub_rt=share_pw
で、その映画はユング心理学の集団無意識をネタにしてる。
ユング心理学って言葉はこの映画にも出てくる。
つまりドリームシナリオはエルム街の悪夢が元ネタ。

ポールはシマウマかフレディか?

ポールは進化生物学の講師で、講義でシマウマの模様について話す。
「縞模様は群れの中に紛れる効果がある」
「ライオンは群れを襲わない」
実際は襲われてる。目立つ一匹が。
出る杭は打たれる。目立つ奴は食われる。
そのおかげで他のシマウマは助かる。要は生贄。

フレディは生前、子供を殺した罪を裁判ではなく私刑で償わされる。
はみ出し者は見せしめにされる。
ポールは孤立したシマウマで、焼かれたフレディで、生贄だ。※1

自分だけお利口なつもりか?

映画「ダークナイト」で強盗仲間を皆殺しにしたジョーカーにショットガンおじさんが言った言葉。
ドリームシナリオのレビューにSNSで群衆心理にハマる人々の愚かさを揶揄するものが多かった。
確かにこの映画はその話をしてる。※2
でも群衆心理に陥ってる人をバカにしたところで僕達が生贄を作るシステムを無意識に共有してる事に変わりはない。

集団無意識は心の遺伝子と言われたりする。
かつては人間も襲われる側だった。
人類の歴史で何度となく襲われた記憶が心に刻まれて生贄システムを作った。
人が道具を使うようになったのは、食い残された死骸の骨を割って骨髄を吸う為だって説がある。
食う為に道具使えるように進化した。
生き残る為に生贄を作るように進化した。
それが人間の進化。

僕の記事が、君のレビューが絶対にバズったり炎上しないとでも?
明日僕らがバズって、来週には炎上してる可能性はゼロじゃない。
生贄は誰だっていい。適当な理由で祭り上げればいい。

生贄は名誉。

アニメや漫画で、生贄になる事を喜んでる奴がいる。
他には生贄に決まるといい思いしたりする、映画ならミッドサマー。

ひどい目に合うのは分かってるのに生贄になりたがる。
これってバズりたがる僕達にも通じる事だ。
映画だと元カノとか元同僚がそう。※3
この奇妙な現象は複雑だ。
心の遺伝子が生贄システムを作った。
それは現代では襲われないのに存続してて、生贄になりたがる人もいて、それに嫉妬する人までいる。
映画で言えば、校長の「調子に乗ってる」とか
食事会オジサンの「あんなつまんない奴がなんで」ってセリフが嫉妬を感じさせる。

この生贄システム、メリットがないんだけど現存してる。
それだけ僕らは無意識に支配されてる。
そんな無意識をコントロール出来たら何でもできそうだ。

夢で逢えたら。

「夢に同じ男が出てくる」の元ネタは[this man]って海外のミームだ。
でもこれはマーケティング研究してるオッサンのいたずらだった。
何をマーケティングしてたのか本人は明らかにしてない。

妄想を膨らませて、このオッサンは社会学者でもあるらしいから、
「集団的無意識を人為的に作れるかの実験」をしてたって考えてみる。
結果としては出来た。
現実では「This man」はミーム化したし、
映画では夢って無意識に侵入する機械も作れた。

人の承認欲求や集団的無意識の生贄になったポールが、
自分を糧にして作られた機械で妻に夢で逢うって恐ろしい循環が生まれてる。
「現実だったらよかったのに」とポールは言う。
逆にエルム街の悪夢は「夢でよかった」と終わる。
人の罪を夢に押し込めた結果、フレディは現実に蘇る。
映画ではノリオが誕生する。フレディ=ノリオって言える。
世界は現実も夢も地獄になったしまったのか?

コンクリートの下で今も夢は息づいてる。

エンディングに流れるトーキングヘッズの「 city of dreams」の歌詞。
冒頭の娘の夢でも、ポールの最後の夢でも最後は空に浮かび上がっていく。
無意識下から現実に戻る。目覚めるって事だ。
この曲は戦争や侵略って人間の破壊と欲望の歴史を歌ってて、それでも人が生き続けてて来た世界を愛してるって言う。

映画では人が自分の罪を認めず、承認欲求を大きくし続けた結果、化物が生まれてしまった。
もしこの二つを解決出来たら本当の夢の国が浮かび上がるのかもしれない。

備忘録

※1炎上し始めてからおシマウマ一人だけの絵が出てくる。

※2ギュスターヴ・ル・ボンって心理学者が「群衆心理」って本を出す。
人が集まると心理的群衆になり、それが集団的無意識を生み出してそれに操られ、理性を失い感情的になると言ってる。この映画の話。

※3元同僚が研究テーマをパクったのは本人に自覚がない。
これはクリプトムネシア(Cryptomnesia)っていう過去のアイデアをそれが他人のモノであっても、今、自分で閃いたと錯覚する現象。
ユングが無意識がそうさせるって考えてた。
アントリジェンスも元同僚を自分でひらめいたって言いそう。
そう言う意味でもポールは生贄。



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孤独のシネマ
読んでくれてありがと、ジュースがコーラが好きです。