特撮ヴィラン語り ~その277 十六夜九衛門~
忍者がモチーフになっているスーパー戦隊の中で恐らく1番カオスを極めている、2016年放映の「手裏剣戦隊ニンニンジャー」。
魔法使いの忍者、リケジョの忍者、資格マスターの忍者などといったあくの強すぎるメンバーが一つ屋根の下で暮らしながら修行するという、もうコンセプト大渋滞な一作でした。
まあ決め台詞が「忍びなれども忍ばない!忍ぶどころか暴れるぜ!」ですからね。
いや忍べお前らは
さて、そんなカオスな作品の中で1番シリアス路線を頑張っていたと思われるのが、1年間通して敵のメインキャラとして登場し続けた十六夜九衛門。妖怪となったかつての戦国武将:牙鬼幻月の側近として序盤から暗躍し、現代に主を復活させるべく様々な策略を巡らせるキャラですが、まあ人気も高い悪役でした。
見た目としては狐がモチーフではあるんだけど、一方で衣装は虎の要素が入っているという豪華な感じがまずカッコいい。しかし決していかついキャラというわけではなく、声を演じる潘めぐみさんの魅力もあって可愛げのある少年キャラになっていて。その辺がまたミステリアスでいいんです。
さて彼の何がストーリーのシリアスさに繋がっていたかというと、その複雑なバックボーン。
まず九衛門はかつて一時的にではありますが、ニンニンジャーに変身する伊賀崎家に弟子入りし、一家と共に忍者の修業を積んだという過去があったのです。その因縁故か彼らの祖父:伊賀崎好天には特に恨みが深く、自らが編み出した忍法を使ってあの手この手でニンニンジャーを追いつめていきます。
敵でありながら忍術が使えるというのがますます彼のミステリアスさに拍車をかけるし、その異質さゆえに味方の他幹部たちからもちょっと疑いを向けられているという辺りがまたたまらんのですよね…まさしく悪役側のストーリーの主軸に相応しい。
そして終盤にて明かされたその正体。何と九衛門は生前に幻月が妻とは別の側室に密かに産ませた隠し子であり、幻月の妖術で現代へと送り込まれ復活の布石としての使命を負っていたということだったのです。
これを知った時の奥方:有明の方の愕然っぷりがまあね
そしてその家族関係のドロドロドラマを急に見せられることになったニンニンジャーの置いてけぼりっぷりね
最終決戦でもその忍術をいかんなく発揮しニンニンジャーを苦しめる九衛門。
しかしそんな複雑な出自故に家族の愛に恵まれなかった孤独感、そして破門されてしまったものの伊賀崎好天の下で忍者として修業して来た日々の楽しかった記憶を見抜かれ、ニンニンジャーの諦めない闘志と家族の絆の前に敗れ去ってしまう結末は、敵役ながらもちょっとほろりとしてしまう名シーンだったのではないでしょうか。
しかし問題はその後日談となったVシネマですよ
戦いが終わって数年後、これまで姿を現さなかった伊賀崎一家の母が日本に帰国し、娘たち2人を忍者アイドルとしてデビューさせようと言い出します。
そしてそんな彼女たちとユニットを組む3人目として突然現れたのが九重ルナ。演じるは九衛門の声を担当していた潘さんご本人。
うんどう見ても九衛門の生まれ変わりっぽいし、生まれ変わった結果アイドルってシリアスから解放された結果はっちゃけすぎやでお前
突然現れた新戦士:ミドニンジャーに変身し、ニンニンジャーと共に立ち向かうのは密かに生きていた有明の方。
自分も知らないうちに出し抜かれた隠し子に、生まれ変わった後までボッコボコにやられるってもう一周回ってかわいそう過ぎましたわ…(苦笑)
matthew
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