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特撮ヴィラン語り ~その231 グリズリーファンガイア/竹内伸二~

ヒーローモノの花形イベントといったら、やっぱりパワーアップ形態、新ヒーローのお披露目ですよね。
それまでの戦力では全く太刀打ちできない大ピンチの場面に颯爽と駆けつける新たな仲間。開発に難航していた新アイテムがようやく間に合って主人公の下に届く。瀕死の状態に陥ったその時眠れる力が覚醒して云々、まあ古今東西どれもこれも「燃える」シチュエーションだと思うんです。
でもね、個人的に唯一と言っていいくらい「お披露目がそれでええんか…?」ってちょっと頭抱えた作品があるんですよ。

2008年放送された「仮面ライダーキバ」。
その中で仮面ライダーキバのパワーアップ形態となったのが黄金に輝くエンペラーフォーム。エンペラーというだけあって、金色の鎧と赤いマントがトレードマークの何とも堂々とした佇まいです。
その初登場相手になったのがこのグリズリーファンガイア。熊をモチーフにした姿のパワーファイターで、見かけの通り強力なパワーと頑丈なボディで押しまくるタイプですが、

実はこの熊さんメチャクチャいい人なんです

彼は普段、竹内伸二という男性の姿に化けて人間社会で穏やかな生活を送っていました。ファンガイアは人間のライフエナジーを奪わなければ生き延びられない種族なのに、決して自ら人間を襲うことはせず静かに日々を送ることを望んでいたのです。その理由は、ファンガイアという一族にとって最大の禁忌。人間との恋愛です。
涼子という女性と恋に落ちた伸二は、掟を破ったことからファンガイアの女王:クイーンに追われながらも健気に2人の生活を守り抜こうとしてきました。ところが、その涼子がある日不治の病に侵されてしまいます。

熊さん…(涙/呼び方やめろ)

決して彼女が助からないことを悟ってしまった伸二は、せめて彼女が喜ぶものを見せてあげたいと考え、宝石強盗となって涼子にジュエリーをプレゼントしようと盗みを働くように。
ファンガイアであるが故にキバたち仮面ライダーと戦う場面もあったものの、彼らを倒すよりもとにかく涼子の下に戻ることを優先して逃げるほうを選ぶほどの穏健派でした(まあ犯罪はしてるけど)。
しかしそんな彼なりの献身が実ることはなく、涼子は「もう盗みなんてしなくていい」との言葉を残してとうとう亡くなってしまいます。

熊さん…!(号泣/だから呼び方)

愛する者を失った絶望から、伸二はグリズリーファンガイアとなって慟哭しながら暴走。事情を知って戦いを躊躇うキバにも容赦なくパワーファイトで攻めまくります。そう、ただの強敵じゃないんです。情状酌量の余地もあるから本気が出せないというシチュエーションなんです。
本気が出せないまま一方的に追いつめられるキバ。するとそこに、渡が想いを寄せ始めていた女性:鈴木深央がたまたま現れてしまい、暴走するグリズリーファンガイアの一撃を受けて昏倒してしまいます。
愛する人を傷つけられ渡が強い怒りを感じた時、その感情に共鳴するかのようにキバの秘めた力を制御する小さな魔物:タツロットが覚醒。追いつめられたキバに力を貸すことでエンペラーフォームに変身し、圧倒的な能力で逆にグリズリーファンガイアを一方的に叩きのめし、見事に初陣を飾ったのでした。

って全然見事じゃねえだろそれ

いや、割と話せばわかってくれるタイプの部類だったんじゃないの…?恋人を失った悲しみってもうだいぶかわいそうなんだけどさ、人間を進んで傷つける輩ではないんだしどうにか説得から和解って形にも持って行けたんじゃないの…?
いくら好きな人が傷つけられたとは言っても、そこでパワーアップ形態お披露目してフルボッコってそりゃあまりにも後味悪いよ…全然スカッとせんよ…

おかげで逆にすごく印象深いエピソードだったのは間違いありませんが、まあしんどかったですねこれはね…

matthew

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