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特撮ヴィラン語り ~その8 千翼/仮面ライダーアマゾンネオ~

平成に入ってからの仮面ライダーシリーズは、「何が正義なのか」っていうボーダーラインを敢えて曖昧にして、今までのシリーズで悪とされていた怪人側にも感情移入出来たり、逆に仮面ライダー自体が悪として登場するケースも意欲的に取り入れてるパターンが多い。
それを応用してかは分かりませんが、「もう全員おかしいんじゃねえか」っていう世界観で物語を作ったのが、Amazonプライム限定配信となった「仮面ライダーアマゾンズ」でした。

野座間製薬という会社により、人工的に作られた人喰い生物アマゾンが密かに人間社会に紛れ込む世界。
そのアマゾンを生み出した責任感からか、自分自身にアマゾンの遺伝子を投与して全てのアマゾンを根絶しようとする鷹山仁と、
アマゾンの細胞に人間の遺伝子を投与して作られ、自分の出自に悩みながら戦いに巻き込まれる水澤悠(はるか)という二人の主人公がいる物語ですが、これがねー……誰を正義として見たらいいかわからないんですよね。

だってアマゾンが人を食うのは本能なんですよ。
人間と共存したいと思っても食欲に負けたらアウトなわけで。

そこで明確に「アマゾンなら全部殺す」というのが仁で、そのためならどんな悪人でも助ける。
逆に悠はその線引きが許せなくて、結果として「アマゾンでも人間でも助ける」というどっちつかずになる。
もう善悪のラインを主人公たち自体がぐちゃぐちゃにしてるんですよね。

そして今回取り上げた千翼は、シーズン2の一応の主人公。
このシーズン2がさらに大変なんですよ。

なんと人間をアマゾンに変える細胞が飲み水に混入して、人間が新種のアマゾンになります。

千翼は不良少年グループの仲間になり、仮面ライダーアマゾンネオとして独自にそんなアマゾンと戦ってたわけですが、その戦いの中で、アマゾン駆除部隊によって死体をベースに作られたアマゾンの少女、イユと知り合って恋に落ちます。
なんかこう、最初は血みどろのダークな世界観で純愛ラブストーリーやるのかなあってすごくワクワクしたんです個人的には。そういうの大好きだし。
でもそんなに話は甘くなかった。

人間をアマゾンに変えるその新種細胞の持ち主、実はこの千翼でした。
しかも千翼は仁が交際していた女性との間に作った子供。人間とアマゾンのハーフでしたと。
地獄かこのバックボーン。

シーズン1の主人公の悠はそれを知って、「千翼を放置してたらどんどん人間がアマゾンになって大変なことになる」と千翼を追いかけ、
もう一人の主人公である仁も当然「アマゾンは殺す」の信念と責任感で千翼を襲い、
背景を知ったアマゾン駆除部隊からも追われ、イユにも命を狙われるという。

もはや救いがねえ。
でも確かに生かしてたら相当やべえ。

……有無を言わせないくらいこれでもかって宿命背負わされてるんですよこの主人公。
しかも後半で暴走して完全に理性を失ったアマゾン完全体の姿になると、

4本腕の巨大な怪物が無数の触手で人体切り刻むわ蜂の巣にするわ阿鼻叫喚の地獄絵図ですよ。
ちなみに言い忘れたけど過激表現アリの注意書きしてるんで普通に血とか人体破壊とかバリバリにノーモザイクです。

いや君主人公だよな!?

主人公でありながら、もはやいるだけで害悪という非常に哀れな千翼くん。
最後には第二の死が近づく中で自我を取り戻したイユと逃避行の果てに、悲劇的な結末を迎えるわけで……正直ヴィランに分類していいのかなってむちゃくちゃ悩んだんですが。
こんな話なので一応、敵役という意味でのヴィランとしてピックアップさせてもらいました。

さてこのアマゾンズですが、つい先日「仮面ライダーアマゾンズ外伝 蛍火」という連載漫画が完結しました。
シーズン1と2の間の話なんですが、これもねー……登場人物全員頭おかしいとしか言えない(笑)

なんてったって主人公の昇が、バグって人間じゃなくアマゾンを食うアマゾンになっちゃったんだから。
しかもヒロインの紬はそれを知って本人の意志に関係なく仲間を襲わせるヤンデレになるし。

ドラマとしてはめちゃくちゃ面白いし、こういうハードな展開も大好きなんですが。
ここまで普通の人がいない話ってアリなんだなー……と毎回ポカーンでしたよわたしゃ。

matthew

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