
特撮ヴィラン語り ~その122 宇宙忍者バルタン星人(ウルトラマンコスモス版)~
ウルトラシリーズの人気怪獣代表といえば、やっぱりバルタン星人ですよね。
大きな両腕のハサミ、虫のような顔、分身の術、フォフォフォという独特な笑い方。ウルトラマンをあまり知らない人でもだいたいバルタン星人くらいは誰でも知ってそうなイメージがあります。
少なくともフォフォフォという笑い方くらいは大体の人が真似したんじゃないでしょうか。
だって顔文字あるんだよ?
(V)o¥o(V)
でもこのバルタン星人、実は結構悲しい背景の持ち主なんですよ。今回は「ウルトラマンコスモス」の劇場版に登場したバージョンを元に語ってみたいと思います。
元々バルタン星は、地球よりも遥かに科学技術が発展した文明でした。しかしその発展した技術故か、ある時実験が失敗してバルタン星自体が爆発して、彼らは母星を失ってしまいました。
星ごと滅亡て何の実験したんだよ逆に
生き残りたちは自らをミクロサイズに縮小し、巨大な宇宙船に乗り込んで新しい移住先を求めて宇宙をさまよいます。映画「ウルトラマンコスモス THE FIRST CONTACT」では宇宙船は「廃月」と名付けられました。
そしてその放浪の旅の果てに彼らが見つけたのが地球。しかし移住計画のやり方で仲間内での小さな対立が起こります。
過激派の勢力は地球人が自分たちと共存できるわけがないとして武力での侵略を主張し、一方では穏健派がそれを止めようとして衝突。
やがて先走った過激派の1体が地球侵略のために行動を開始し、地球に眠っていた伝説の怪獣:呑龍(ドンロン)を目覚めさせて操り破壊の限りを尽くします。
一方で穏健派の1体にあたるチャイルドバルタンも地球に降下。少年:春野ムサシとその友人たちに出会い、人類との共存に希望を見出だしました。
そうして主張を違えてしまった2人のバルタン星人の板挟みの中で、ムサシの優しさに応えるかのように宇宙からウルトラマンコスモスが飛来。あくまで力ずくの侵略を諦めないバルタン星人の前に立ちはだかるのでしたーー
というのが、大まかな「コスモス」版のバルタン星人のストーリーですが、基本的に科学技術が発展し過ぎて故郷の星を自滅させてしまったので移住しに地球に来たっていう背景はアメリカで制作された「ウルトラマンパワード」以外どの作品でも同じです。あっちはただの悪い奴なんでね。
ただこの「コスモス」版は特に人間くささが目立ち、人気の高い個体でした。
独自の個性としては、セミがモチーフの従来のデザインにクワガタムシの要素が加わったところ。頭の形がちょっと角っぽいですね。
そしてピンチになるとネオバルタンという強化形態に変身するのもポイント。こうなると腕のハサミはありません。剣やカギ爪といった多彩な形になり、とにかく刺々しい姿をしてます。
ただ意外と面白かったのが、そんなシリアスな背景を持ってるのに、
クラシック音楽を聴いてガッツリ寝ちゃうというところ
本当に映画の中で一度ガッツリ眠りますからね。ちょっとかわいかったなそこは(笑)
ただ、そんな愛嬌故になおさらちょっと可哀想なんですよ。
最終的にはコスモスにどうしても勝てず、チャイルドバルタンの説得を受けて自分が間違っていたことを知ると、涙を浮かべながらケジメとして自爆するんですコイツ。
そこもめちゃくちゃ人間くさくて切ないんですよね……戦いは避けられなかったとしても、ちゃんと分かり合えたんだから死ぬ必要はなかったはずなのに。そういう意味でも印象的な敵でした。
この映画は「ウルトラマンコスモス」TV本編のプロローグにあたる話で、ムサシが怪獣との共存を目指すきっかけになっています。本編を楽しむ上でも絶対外せませんよー。
ちなみにバルタン星人の深イイ話は後年の「ウルトラマンマックス」にもあるんですが、そちらはまたの機会にということで。
今回は「コスモス」にスポットを当てて語らせていただきました。
matthew