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特撮ヴィラン語り ~その4 グレムリン~

平成仮面ライダーシリーズで増えてきたのが、「感情移入できる悪役キャラ」です。
敵にもちゃんとした事情があるんだとその背景を描いて、果たして正義って何なんだろうとドラマに深みを与えるスパイスになるんですよねこれが。
そしてそれによって、本当にどうしようもない悪役のどす黒さがより際立つ。悪にも色々あるんだなあと。

2013年放映の「仮面ライダーウィザード」に登場するグレムリンは、まさに多彩な悪の中でも異色なヤツでした。

この物語では「ファントム」というのが敵。
こいつらはある特定の素質(ゲートと呼びます)を持つ人間が絶望に落ちることで誕生する怪物で、完全に誕生するとゲートになった元の人間の姿や記憶を全て引き継ぎ、なりかわります。
ただし人格は別なんで、完全に同一人物ってわけではないんですが。

なんとこのグレムリンは人格まで引き継いでしまった特殊なファントム。
なので自分はファントムの力を持っただけの人間だと信じてるわけです。

人間だった頃の名前は滝川空。
「ハロー」と陽気な性格で挨拶するクセは当時からのもので、生前は美容師として勤務していた青年でした。

この作品での仮面ライダーは、「ゲートの素質があるものの強い意志で絶望を乗り越え、ファントムの力を操れるようになった人間」のこと。
としたら、もしかしたら人間の意志が残ってるから味方になってくれるんじゃないかという期待もなくはない。
実際「ゲートになりそうな人間を絶望させてファントムを増やす」という目的にも素直に従ってはないわけです。
それならワンチャンあるんじゃね?となりますよね確かに。

しかし、まさかのどんでん返しですよここで。

滝川空のことを調べる中で警察にも協力を仰いだ結果、分かったのは

白い服、黒い髪の女性が狙われる連続殺人事件の存在。
40人以上の犠牲者を出しているその容疑者がまさに滝川空という。

つまり要約すると

ファントムかどうかじゃなくてもうこいつ人間として話そもそも通じねえ

というイカれたサイコキラーだったわけです。

……これ日曜朝のヒーロー番組で出したらあかんやろコンプライアンス的に。

中盤から登場したこいつがウィザードの物語をガンガンに引っかき回していくトリックスターになるんですが……いやー久しぶりですよこんなに感情移入できねえ悪役。
ホントよくこんなキャラ出したよ。そう考えたらあの陽気さってむしろ狂気やん。

しかしながらこのどんでん返しはすげえなと思いました。
「人間の心を持った怪物」と書けば悲劇的な運命と同情も出来たのに、「その人間の心が腐ってました」ってオチをつけるんだから。
特撮作品の悪役の中でも、なかなかにこういうサイコな悪役キャラはいないなという意味で面白い試みだと思いますね。

matthew

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