見出し画像

「サーベイ・フィードバック」に着手した話

今回は私が属するクリエイティブ組織においてサーベイ・フィードバックに着手した話です。

組織やチーム状態の可視化をやってみたいと考えていらっしゃる方へ、参考材料になると嬉しいです。


サーベイ・フィードバックとは?

はじめに「サーベイ・フィードバック」という言葉をご存知でしょうか。

サーベイフィードバックとは従業員の調査・アンケートの結果(報告書)を、本人もしくは該当部署に返却すること。また、結果に基づき、現状の確認・改善点についての議論を行うこと。

https://www.recruit-ms.co.jp/glossary/dtl/0000000070/

なぜサーベイ・フィードバックに着手しようと思ったのか?

私はクリエイティブ部のOPSチームに所属しています。チームの役割は「クリエイターの力を最大限に引き出し、事業成果に貢献すること」であり、私自身の役割は「組織内のパフォーマンスを測り、可視化することで課題提示と改善提案へ繋げること」と設定しています。

その一環として、部内におけるエンゲージメントサーベイツールの結果を月一で集計しています。しかし、チームごとに状況は大まかに把握できても「なぜこのような推移を描くのか?」が見えにくい側面がありました。

その状況を補完するために取り入れたのが部内アンケートです。エンゲージメントサーベイとは別に、部全体への月一回の定期アンケートを実施しています。主に以下の5項目についてヒアリングしています。

定期アンケートの項目と意図

  1. 上長との定期的面談実施率
    コミュニケーションの頻度を調べます。

  2. 業務に関する個人目標の設定率
    業務に対するモチベーションの高さを知る手がかりになります。

  3. エンゲージメントサーベイツールの活用状況(管理職のみ)
    定量化スコアを活用しているかを把握します。

  4. 業務における生成AIの活用状況
    どれくらいの頻度で、どのように使われているかを把握します。

  5. OPSチームの効果実感度
    効果をシンプルに確認します。

先ほども述べたように、当初はエンゲージメントサーベイツールでは見えにくい側面を補完するための部内アンケートでしたが、新たな課題もわかってきました。

それは「3.エンゲージメントサーベイツールの活用状況」を見ると、そもそも管理職が十分に活用できているとは言い難い状況だったことです。

当初は、OPSチームの成果指標設定や状況把握の目的でエンゲージメントサーベイツールの結果集計や部内アンケートを実施していました。しかし、この状況から各チームの管理職へ「サーベイ・フィードバック」を実施してみてはどうかと考えました。そうすることで、データから対話を生み出し、今後のアクションプランに役立てて欲しいと思ったためです。

まずはレポート形式で配布を決めた

管理職へのサーベイ・フィードバック着手にあたり、どのレベルまでやるかを整理しました。

なぜ:エンゲージメントサーベイツールが十分に活用されていないため
だれが
:私(筆者)が
いつ・どこで:約一ヶ月後の管理職勉強会で
なにを:直近半年のエンゲージメントサーベイと部内アンケート結果の可視化をおこない、自身視点の所感もあわせて
どのように:レポート形式で各チームの管理職(3名)へ提供する

補足すると「いつ・どこで」に関しては、ちょうど各チームの管理職メンバーの勉強会が約一ヶ月後に設定されていることを知り、このタイミングで何か提供できるものを完成させようと決めました。それにより、期間内でできることを逆算して考えました。

その結果「直近半年分のエンゲージメントサーベイと部内アンケート結果を可視化し、あわせて私の所感をレポート形式で提供」というレベルまでは実現可能と踏み、準備に取り掛かりました。

レポート提供までの道のりでやったこと

一ヶ月前

  • サーベイ・フィードバックにまつわる記事読解

  • レポートの方向性決め(おおまか)

  • レポートの要件定義

おおまかなレポートの方向性決めに関しては、まずはすでに世に出回っているいわゆる典型的なレポートをベンチマークし、どのようなテイストでいきたいのかを整理しました。

様々な可視化方法がありますね

また、同時に今回のレポートで果たすべき目的や方向性を見失わないよう要件定義も進めました。要件定義についてはデジタル庁提供の「ダッシュボードデザインの実践ガイドブック」内で取り上げられている「要件定義ワークシート」を利用しました。

なぜ「ダッシュボードデザインの実践ガイドブック」を参考にしたかというと、ガイドブック内で解説されている目的と今回レポートを提供する目的が近しいものであり、活かせるのではないかと考えたためです。

分野を問わず、多くの人々が、自身のサービスの推進や意思決定にデータを活用したいと考えている一方で、データを適切に利用する方法に迷っているのも事実です。ダッシュボードは、データ活用の全てではないものの、有効な手段の一つと言えます。本書は、データをわかりやすく可視化することで、数値に基づいて事実を理解し、多くの関係者の間で共通認識を広げ、意思決定の質を向上させ、より良い行動に繋げていくことを目的にしています。

ダッシュボードデザインの実践ガイドブック」より内容抜粋

私は今回のレポートを定点ダッシュボードと見立てて情報を集約させた、いわば「チームの健康診断結果」をテーマにしようと思い立ちました。なお、要件定義ワークシートに記載した内容は以下のとおりです。

レポートの基本情報(一部内容を伏せています)
レポートの目的(一部内容を伏せています)

3週間前

  • プロトタイプ作成

  • レポートの方向性決め(ほぼ固める)

次は、前週にやったことを元に手を動かし、プロトタイプを何点か設計していきました。

伝えたいことを整理した結果、レポート構成は「総合スコア」「平均値」「推移」「私のコメント」の4項目と決めました。また、情報の見せ方として縦か横かも検討しました。

それぞれにメリットデメリットを出しつつ、最終的には縦で見せることに決めました。

縦持ち

理由としては目線の流れとして、はじめに左端に位置している静的情報の総合スコアで全体像をつかみ、レーダーチャートで可視化した各項目の平均値をひと通り把握したあと、細かい動的情報(推移グラフ) の順で見てほしかったからです。

横持ち

横に見せる場合、目線の流れとしては左端に重要なものを置きたいところですが、プロトタイプ左端に来ているレーダーチャートと推移グラフが最も重要な情報というわけでもなかったため、目線や関連性を考慮した上でも縦が良いはずだと判断しました。

2週間前

  • ラフ完成

  • イラスト追加と色味を決定

  • 各種スコア算出(平均値など)

縦の見せ方で詳細を詰めた結果、ラフが出来上がりました。しかし、この段階でさらに情報の取捨選択の余地も出てきました。

それは、動的情報である推移グラフに関して項目数の多さや、グラフ値が拮抗している場合は視認性が確保できない恐れもあるということです。下図の自分用メモにもあるとおり、全ての項目の推移を描く必要はあるか?ということを一度考え直す必要がありました。

情報が過多すぎると結局何が言いたいのかわからなくなることも

ここでは、あくまで推移として見せる必要があるもの、つまり私のコメントで言及する項目だけを載せようという方向性にしました。

1週間前

  • 算出結果をグラフ反映、フィードバックコメント記載(3チーム分)

  • 見直し

ここまで来たらあとはラストスパートです。データを反映させ、コメントを記入していきます。こうして完成までこぎ着けることができました。

配布(成果物)

こうして約1ヶ月ほどで完成させたものがこちらです。

(実際に配布した内容と一部異なります)

同じOPSチームメンバーの力も借り、イラストの挿入や色味の調整なども経て、ブラッシュアップを遂げました。加えて、見方ポイントも添付し、配布まで実現できました。

今後の展望

まだ「サーベイ・フィードバック」のうち「サーベイ」ほどしか実施できておらず着手程度ですが、スタート地点には立てたと感じています。

ただ、ここでひとつ疑問が出てきました。それはこのレポートが示している状況が、実際にチームの管理職が感じている課題と近しいのか?ということ。

私が定量データを見るにあたり、いつも念頭に置いていることがあります。それは、事実ではあるが真実ではないかもしれないということ。

実際このレポートは、参考資料として見てねくらいの温度感で配布しましたが、今後はこのレポートに記載したようなデータから対話を生み出し、改善点についての議論やアクションプランにつながるような領域に踏み込んでいきたいと思っています。

そして初めて「サーベイ・フィードバック」を実践できたと言えるようになりたいです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?