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私訳:D. G. ロセッティ『命の家』より「贖い」

『命の家』(The House of Life)
第一部「青春と変化」(Youth and Change)

第四歌「贖い」(Redemption)

ああ、愛し合うときの君は恍惚としながら
僕の唇へずっとあてがっている
「愛」の肉と血からなる聖餐を。
僕が君に身を寄せて感じ取った君の吐息は
彼の聖域の奥で焚かれている香煙だった。
君が言葉もなしに彼に応え、その身を
彼の意志に捧げると、君の命は僕の命と混ざり合い、
葡萄酒の上で囁くのだ、「思い出しなさい!」と*――
ああ、君のくれるものは恩寵、僕にとっての戦利品、
「愛」にとっての栄光だ――君は
長い階段を終わりまで下り、仄暗い浅瀬に
くたびれた水の淀む、ため息に満ちた場所へ至る*。
君はそこで解放の業をなすように、その眼差しで
僕の囚われた精神を君の魂へと引き上げていく。

*ここでは聖餐式のイメージが使われている。聖餐においてthe cupとは葡萄酒(の入った杯)を指す。Remember me!という台詞は、聖餐がイエスの晩餐を反復する儀式であることを踏まえているのだろう。
*ここはイエスの冥府降下のイメージが使われていると判断した。恋人のいない時間は冥府のように暗く鬱々としたplace of sighsであり、恋人の眼差しはそこに淀んでいる自らの魂を解放しにきてくれる、という解釈である。

O Thou who at Love's hour ecstatically
Unto my lips dost evermore present
The body and blood of Love in sacrament;
Whom I have neared and felt thy breath to be
The inmost incense of his sanctuary;
Who without speech hast owned him, and intent
Upon his will, thy life with mine hast blent,
And murmured o'er the cup, Remember me!—
O what from thee the grace, for me the prize,
And what to Love the glory,—when the whole
Of the deep stair thou tread'st to the dim shoal
And weary water of the place of sighs,
And there dost work deliverance, as thine eyes
Draw up my prisoned spirit to thy soul!

カバー画像
Andrea Mantegna (1431–1506),
"Christ's Descent into Limbo" (1470-75).

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