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#随想 #オリジナルとコピー #フルスクラッチと2次創作 #知的所有権
下記Histone さんの記事を拝見し、オリジナル(フルスクラッチ)創作に対する強い自負に対し素晴らしいと感じました。
何事でもそうですが、広く薄い情報を収集し一つの成果物としてまで作り上げて行くには、かなりの才能と経験を持った人(達)が、かなりの労力・工数を積み上げて初めて実現出来る事です。
現実としてそういった成果物をコピー・盗用して、僅かな労力で結果(利益)を得る事は割合簡単ですし、実際色々な場面で行われています。
半導体産業における「知的所有権」
私は最初に就職した会社が半導体製造関係でしたので、ふと当時の状況を思い起こしました。
時代的にはインテルの主力製品がi8080 という8bit CPU の頃です。
インテルは当時の会社規模としては相当の負担をかけてi8080 の開発を行い、どう使うかというサポート環境の構築へも積極的に投資を行って普及に努めました。
その結果として市場に受け入れられ、最初かなりの利益を上げる事が出来ました。
光学コピー
そうすると他社の競業会社はどうしたかというと、多くの会社がi8080 のコピー品を製造し巨額の利益を上げる様になりました。
当時のLSI のコピーは割と簡単で、販売されているインテル製のi8080チップを購入し、層毎に幾何学(レイアウト)情報を光学的に撮影して再現するだけでした。
コピーに必要な費用は開発する費用に比べたら遙かに低く、これをやられてしまってはインテルにとってたまったものじゃありません。
そこでインテルは「知的所有権」という概念を創作し、ライセンス契約無しにコピー品を作っている会社を片っ端から訴え勝利しました。
この場合双方で製造されたLSIを写真撮影して比べれば一致しますので、非常に簡単にコピーされた事を証明できます。
結果として光学的コピー(丸コピ)は法律的にアウトになりました。
論理回路コピー
会社によってはもう少し巧妙な方法で互換品を作る事がありました。
レイアウト情報からリバースエンジニアリングを行い、論理回路図を再現します。
そしてその論理回路から独自のレイアウト情報へ落としてLSIを製造します。
この場合単純な写真撮影比較を行っても、コピーされた物かどうかは一目瞭然ではありませんが、時間をかければ論理回路レベルで同じだという事を証明出来ました。
そして幾つかの重要な法廷闘争の結果、この方式(トレースに相当ですかね?)も違法となりました。
脱線:ある日本の半導体メーカーでは、この方法で論理回路図を起こして、この回路では仕様通りに動作しないと判断して少し修正を加えて製品化した所、ユーザーから元(オリジナル)製品と同じに動作しないとクレームが上がったそうで、修正を元に戻したそうです。
後日それはインテルのバグであったと判明したそうです。
それを聞いてバグ互換まで求められるなんて、互換(コピー)品ビジネスも難しいものだと感じました。😝
仕様書からの開発 - クリーンルーム設計
時代が16ビットのi8086 の頃までに大体のガイドラインが確立されていきました。
勿論インテルとしては最大限に自社の「知的所有権」の適用を目指しましたが、あまりに縛りを強くしすぎると逆に産業成長の足枷になり得るという判断で、色々な判例により、こういった手法なら良い(クリーンルーム設計と呼ばれる開発手法等)といったラインが確立されていきました。
当然このラインは製品や時代によって少しブレたりしますが、現在では業界内でかなり明確に共有されていると思います。
i8086 の時代、NEC はインテルに真っ向から勝負をかけV シリーズというCPU群の開発を行います。
V30 という製品はi8086 互換ですが、内部構造(バスの2重化等)の工夫により同一クロックでi8086 より20-30%程度性能が良いのが売りでした。
当然インテルはNECを訴えましたが、最終的にV30 をコピー品(違法)とする事は出来ませんでした。
(当時NECの法廷戦略も巧妙でした😝)
LSIの販売には、どのような使い方・動作を行うかの説明を行う「仕様書」という物が必須です。
ユーザーはこの仕様書を読んで、各自の製品に組み込む訳です。
この仕様書は当然一般的に公開され、誰でも参照する事が出来ます。
(でないとビジネスが成り立ちません...)
仕様書を作成した会社とは別のメーカーが、仕様書を元に元メーカーの製品の構造を参照(コピー)する事無く同じ動作をするLSIを開発・製造する事は認められる事となりました。
以上の経緯から、同じOSが動作するインテルのCore i シリーズやAMD のRyzen シリーズなどが(ピン互換ではありませんが)存在している訳です。
(クロスライセンスという物もあって、実際はもう少し複雑ですが...)
知的所有権で守る物
半導体の場合は巨額が動きますので、「知的所有権」は単純にお金だけの問題です。
非工業的創作物の場合は?
創作物によってはやはり大きなお金が関わってきますので、色々な権利で「投資」(労力)に対する「利益」(時には含名誉・名声)を保護する事になります。
著作権、商標権、肖像権、配布権... 等々ですね。
個人レベル創作物の保護は?
これが個人レベルになると一気に色々と難しくなるなあというのが、今回Histone の記事を読んで思った事です。
何を保護しますか?
創作物で金銭的利益を得ている場合は、当然保護する必要がありますよね。
また他人が自分の創作物を勝手に使用(コピー、トレース)して利益を上げる様な事は許されません。
金銭的な影響が無いとしても、ある創作物に大した工数をかけずに2次創作して私の制作ですと何の説明も無く発表するのもダメだろうと個人的に思います。
インスパイアーされた元創作へのクレジットや言及があって、必要な場合には比較できる環境(ルール)の確立ができるのが理想なんだろうなと考えています。
そうすれば、「単純に真似ただけじゃん!」とか「おお、新しい要素による飛躍がある」と鑑賞する側が判断できるからです。
こういった事は本当に大事な事で、コピー天国になってしまえば粗悪な”創造物”が蔓延してしまい、感動を感じる素晴らしい創作物の出現頻度が減ってしまいます。
そして、それは我々鑑賞側にとって大きな損失となるのです。
そういった観点から、Histone さんのフルスクラッチに関する記事で素晴らしいと感心するのは、自創作物作成に当たっての資料・参照元や方向性(思い)を明確に説明なされている事です。
下記「写真の著作権」に対して語られています。私も大体において同意見です。
#随想 #オリジナルとコピー #フルスクラッチと2次創作 #知的所有権