「東京観光日誌」#21|東京|アーティゾン美術館
私の貯まったメルカリのポイント(メルペイ)は、意外と使えない。
・ 使えないメルペイ
使うためにはまず、スマホのメルペイアプリにある「使えるお店」の地図情報で確かめてみる。頻繁にアプリのアップデートを要求してくる割には情報が古いままになっていたりする。
時には念のため直接お店に確認する。例えば、近くのモスバーガーに電話を入れてみると・・
「うちのお店では使えません」という回答。・・こういうことだ。
もちろん確実に使えるところ(fast food)はわかっているが無理して使うつもりもない。
1か月に1回程度「夫婦で出かけよう」とリコと話して、前もって決めた日には他に予定を入れないようにする。小学生のノノがだいたい3時半頃には家に帰ってくるので、それまでには戻っているようにしたい。
そんな訳で時間に制約があるため、行く場所によってはある程度スケジュールを立てておいた方が無難と言える。今回行き先を「アーティゾン美術館」に決めてから、ランチは館内1階にある「ミュージアムカフェ」にしたいと思った。
何しろ近くていい。美術館を出る時間を考えるとちょうどお昼時間になっている。ランチ戦争は避けたいし。
そして何より一番の理由は、ここのランチメニューは芸術的な一皿になっているということだ。一人ではもったいないと思ってしまう。二人だからこそ行ける。作品鑑賞の余韻を持ちつつランチを堪能する。うん、悪くない企画だ。きっとリコも喜ぶだろう。
さらにもう一つ、そこはスマホのメルペイアプリで「使えるお店」になっていたのだ。
ミュージアムカフェではTableCheckというネットサービスを利用していた。当日12時に予約。フォームのメモ欄にメッセージを添えた。
「支払いはメルペイでお願いします」と。そしてすぐにメールの返信があった。
「予約メモにございましたお支払いの件ですが、当店はメルペイはご利用頂けません」・・ほら来た、こういうことだ。仕方ない・・
「メルペイで支払いは不可、ということで了解です。予め確認しておいて良かった。メルペイアプリでは「使えるお店」ということで、地図機能があり、当カフェも表示されています。これは誤った情報になるかと思いますので、修正されてはいかがでしょうか」と予約の変更はせずにそう付け加えて返信した。すると・・
「メルペイ使用可能カフェの表示ですが、16階の従業員カフェでの使用状況が表示されております。こちらは当店とは別のカフェでございまして、私ども店舗の情報とは異なるものになります。紛らわしい表示で申し訳ございませんが、ご了承くださいませ」と再び返信を受けた。
表示位置が同じということか・・しかし、一般の人が行かない場所の表示が被っているというのはどうだろう・・と思ったけど、まあこれはここまでにした。きっとメルペイを使う人はそれほど多くないだろうし。
そういうことでやはり“メルペイは使えない”・・ということだ。
・ アーティゾン美術館へ
2月16日(水)晴れ。
9時40分に東京駅に到着。このところ丸の内側へはよく行っていたが、今日は久し振りの八重洲口(写真下)。
歩いて3,4分のところにある「ミュージアムタワー京橋」(写真上)。ここに「アーティゾン美術館」が入っている。ビルを見上げると、下の部分がガラス張りになっていて、そこが美術館のフロアになっている。その上はオフィスだ。ここは昔ブリヂストン美術館(ブリヂストン本社)だったところだが、ビルの老朽化に伴い建て替えられ2019年7月に竣工となった。
建物の右下へ行きここがエントランス(写真下)。開館3分前、お客さんは他に見当たらないようだが一番乗りかな。
「アーティゾン」の意味は「ART(アート)」と「HORIZON(ホライゾン:地平)」を組み合わせた造語で、今後の国際的な美術館活動を意味に込めていると書かれてあった。
時間ぴったりに入館すると、どこからともなく人が入って来てあっという間に数人に追い抜かされた・・まあ競争ではないからゆっくり行こう。感染防止対策を行いエスカレータのある右側へ進む(写真下)。
2階へ上がり(写真上)右へ行くと、そこには「ミュージアムショップ」(写真上)があった。まだ開いていないようだ。
その左奥には「ロッカールーム」(写真下)がある。「ロッカールーム」は100円硬貨なしの無料ロッカーになっていた。便利でいい。
ロッカーの中に荷物を置き、鍵をかけてポケットに入れ、身軽になって再びエスカレータで3階へ。ここがメインロビーになっている(写真下)。
現在、アーティゾン美術館は日時指定予約制となっており、予め入場券を購入しておかなければならない。本来ここはチケット売場だと思うが、ここでウェッブチケット(QRコード)をチェックされエレベータでさらに6階へ上がる。
やっと着いた。「はじまりから、いま。1952-2022アーティゾン美術館の軌跡―古代美術、印象派、そして現代へ」の展覧会。ここが会場入口である。
「何しているの?」リコが椅子に座って何やらスマホをいじっている。先ほど手に取った「音声ガイドのご案内」を見て、早速アプリをインストールしているところだった。そうか・・私もやろう。
「ARTIZON MUSEUM公式アプリ」のインストール方法:Apple AppストアもしくはGoogle Playストア内で「アーティゾン美術館」で検索。
*「音声ガイドのご案内」の用紙にはQRコードもあり。
インストールして開けると写真下(左)のトップ画面が現れ、上のアイコンからそれぞれ作品の案内を聞くことができる。
音声ガイドは通常有料だと思う。今まで一度も利用したことがなかったが、こんなふうに無料で手軽に利用できるのは嬉しい。ロッカーといい、ここは少し先を行っている感じがする。
ちなみに本展のチケット料金は一般1,200円。学生や障がい者手帳を持った方は無料(学生証等要提示)。
それから、いくつか注意事項はあるが、ほぼどの作品も写真撮影は可。
これは展覧会の企画内容によるのかもしれないが、日本では珍しい寛大な美術館である。さすがホライゾン!
アプリの解説は作品の前だけではなく、どこでも聴けるようなのでここに取り上げられている29点の名作(写真下)の解説は音声ガイドでどうぞ。
・ 展示場を観ていこう
入るとすぐにブリヂストン美術館だった頃の広報用ポスター等が展示されていた(写真下)。このセクションは「アーティゾン美術館の誕生」をテーマにしている。
絵画はポスターの藤島武二の油絵「東洋振り」から始まり中村彝、松本俊介、荻須高徳、岡鹿之助とつづく。
そして、突然、鴻池朋子の襖絵(地球断面図、流れ、竜巻、石)(部分)が現れ圧倒する。
ここは「ジャム・セッション」と呼ばれる展示スペースとなっている。アーティストとキュレータが協同し、石橋財団コレクションとのセッションによって生み出していく企画なのだ。毎年異なるアーティストが企画側のキュレーターと展覧会を創造して開催する。第1回は鴻池朋子、第2回は森村泰晶、第3回は鈴木理策と柴田敏雄で今年4月に開催予定となっている。
こちらの作品は森村泰晶の「M式「海の幸」第1番:假象の創造」(写真下)。元となった青木繁の「海の幸」はここの所蔵作品だ。
振り返り、右側の方へ進んでいくと(写真上)、ウィレム・デ・クーニング、ジョアン・ミロ、ヘレン・フランケンサーラ―等とつづく。
その先、反対側の位置から見て、右奥には日本人アーティストの作品が展示。白髪一雄、田中敦子、元永定正と元気をいただける面々が揃う。(写真下)
この会場を出ると5階へ降りる順路になっている(写真下)。
5階に着いて左に折れると展示会場につながるが、右では外光を取り込んだ吹き抜け空間で休息を取ることができるようになっていた。
吹き抜けの最上階からの光景(写真上)。少々むずむずする・・と後ろから、「襲われている!」とリコの声。
「え!?」と振り向いて、彼女の目線の先を見ると。
「ああ・・レリーフか・・」と寄って作品タイトルを確認。「アリスティド・マイヨールの「欲望」(写真上)だって・・まさにそのものだ」リコはこういうのに敏感なのだ。
では、再び展示場内へ。セクション2「新地平への旅」では戦後フランスを中心とする抽象絵画の作品を展示。中でも中国出身の画家ザオ・ウーキーが充実している(写真下)。
少し先に行くと「VIEW DECK」という表示があり、中に入っていくと陽光が差し込む横に長いスペースと工事中の風景があった(写真下)。
近くに寄ると深い穴が見える。調べてみると、そこはここの関連施設である「新TODAビル」(仮称)と「アートスクエア」(仮称)の工事のようだった。2024年の竣工予定とあるが・・完成すると眺めは・・ビルの側面になるのかな?
展示場はしばらく抽象画が並ぶ。ジャン・デュビュッフェ、アンリ・ミショー、堂本尚郎の作品が展示。
芸術家の映像記録も丹念に行っていた(写真下)。美術映画として梅原龍三郎、川合玉堂、前田青邨といった大御所の作品が制作されてる。
次のスペースにはパブロ・ピカソの「腕を組んですわるサルタンバンク」(写真下)を発見。ブリヂストン美術館の時に観に来た作品だ。他にもいろいろ懐かしい作品があったが、こうやって再会できてハグしたい気持ちになった。
東洋古美術のコレクションも貴重な品々が展示されている。「平治物語絵巻 常磐巻」(写真上)は現在放送中の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」と重なってこの時代の物語を楽しむことができた。
さらに4階へ移動。このフロアが最後の展示場となる。
5階の時と同じ構造で、ここではクリスチャン・ダニエル・ラウホの「勝利の女神」(写真下)が設置されている。
4階の展示場では、セクション3「ブリヂストン美術館のあゆみ」となって有名な印象派の作品が展示。マネ、シスレー、セザンヌ、モネ等。
そのフロアの中央には、透けたカーテンで仕切られた円形状の空間があり、入るとギリシア彫刻が均等に設置されていた(写真下)。
満遍なくいろいろなコレクションを観ることができる。
石橋正二郎の欧米歴訪の記録があり、いよいよクライマックス。「石橋正二郎と洋画家たち」にある日本の代表的な画家の作品を鑑賞する。
再びポスターの藤島武二の油絵「黒扇」、中村彝、岸田劉生、安井曾太郎、佐伯祐三、青木繁等が並んでいる。
「これか・・」ラララさんが言っていた古賀春江の「素朴な月夜」(写真下)を見付けた。確かに蝶が舞っているが・・1頭は蛾のようにも見える。「春江」と言っても男性の画家なのだ。不思議な雰囲気を醸し出している。
4階から3階のメインロビーへ降りる手前にINFO ROOM(写真上)がある。天井が非常に高く落ち着いた部屋だが、何となく椅子取りゲームになりそうな気配。
・ ミュージアムカフェで鑑賞味
会場を出る頃には12時近くになっていた。荷物をピックアップして1階のミュージアムカフェ(写真下)へ移動。
コースはすでに決めていた。ランチB-Course(3,000円)の中から「アペタイザー(前菜)」「メイン」「デザート」「カフェ」を一品ずつ決めて注文。
「一人で入ってる女性客が多いわ・・」とリコ。
「そうだね。入りやすそうだもんね・・」と周りをチラッと伺ってみる。
すると、すぐに前菜が運ばれてきた。その場でお店の人が前菜の解説。本格的だな・・これもホライゾンの一環なのかもしれない。
リコのチョイスは「甘海老と烏賊のタルタル」(写真上)。私は「青森県産鴨胸肉と白レバー」(写真下)。ちょっと癖のあるねっとりとした舌ざわりと味。これにはワインが欲しい。
「展覧会はどうだった・・」と聞いてみた。
「そうね・・良かったわ」と少々歯切れが悪い。
何となくだがリコの気持ちはわからないでもない。展示作品はどれも上質で申し分ないが、見慣れている分刺激が乏しかったのかもしれない。
「日本の美術の教科書はもしかしたら、ここのコレクションでまとめられているのかもね。結構見たことある作品が多かったし」私はアメリカに行くまで美術の教科書と地図帳を大事にしていた。
パンはバターとオリーブオイルが添えられ、リコは「クルミパン」、私は硬いと言われたちょっと酸っぱい「サワードウ」を選ぶ。サワーブレッドはアメリカでは時々買う好きなパンだった。日本ではあまり見かけない。硬いけど美味しいので、おかわりを尋ねたら追加料金300円ということで今回は我慢した。ここもホライゾンにして欲しいね。
メイン料理が運ばれてきた。
リコのチョイスは「ホタテとムースのパイ包み焼き」(写真上)。パイ包み焼きの片側のソースはその場で注いでくれた。まるで池のようだ。私は「鹿肉のブランケット」(写真下)。これまた鹿肉の独特なテイスト。今回の展覧会のコラボメニューで「鳥獣戯画断簡」より着想を得て創作されたらしい。
最後はデザート。
リコの方は「苺とマスカルポーネ」(写真上)とコーヒー。私は文旦ゼリー」(写真下)とハーブティー。文旦とはグレープフルーツに似た柑橘類の一種で「ボンタン」とも呼ばれている。
少しゆっくりしていると、そろそろ帰る時間になった。
支払はデザートの+300円も含め二人分6,600円。普通のクレジットカード払い。メルペイが使えなかったことをリコに話しておいたので、
「半分払うよ」とリコ。メルペイだったら奢りになるはずだった。
「いいよ。このところ飲み会もないし・・」お小遣いの余裕もある。
「最近よく使っているじゃない」そう言えば、前回ノノと渋谷に行った時も何気にかかったな・・
「じゃあ、半分の半分で1,500円だけ」とぎりぎり面目を保って成立。うちでは家族会計と個人会計がある。これは個人会計なのだ。
駅に向かう途中。
「お腹いっぱいになった?」と聞いてみる。
「時間が経つとちょうどいい感じ。だけど・・食べた~という感じはしなかったな」・・・だよね~奥様。
アーティゾン美術館
住所:東京都中央区京橋1-7-2
電話(ハローダイヤル):050-5541-8600
(土・日・祝を除く10:00~17:00)
[開館時間]10:00~18:00(祝日を除く毎週金曜日は20:00まで)
[休館日]月曜日(祝日の場合は開館し翌平日は振替休日、展示替え期間、年末年始)
公式ページ:https://www.artizon.museum/
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