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「東京観光日誌」#39|乃木坂、六本木|国立新美術館

8月14日(日)。今日の取材はダブルヘッダで行う。午前中は国立新美術館で「李禹煥(リ・ウファン)」展を鑑賞。その後、午後は21_21 DESIGN SIGHTへ行って「クリストとジャンヌ=クロード“包まれた凱旋門”」展を観る予定。どちらも好きな作家だ。どんな展示になっているか楽しみである。

・ 六本木から国立新美術館まで

東京メトロ日比谷線「六本木」駅に着いて案内図で行き先を確認する(写真下)。

周辺案内図

地下鉄通路でも出口F7まで行けそうだが少々面倒な感じ・・六本木の街並みも見たいので出口4aから地上に上がることにした(写真下)。

六本木駅地下通路4aの出口階段とエレベータ
出口4a

出口4aから上がって左へ行くと(写真上)、すぐに六本木交差点になる(写真下)。ここを左に折れて進んで行こう。

六本木交差点と道案内の標識
東京ミッドタウン

少し行くと右手に東京ミッドタウン六本木が見えてくる(写真上)。ここはさまざまなイベントが開催されている複合施設である。中にあるサントリー美術館もいつか取材しようと思っているので、その時にここを散策しよう。

「東京ミッドタウン西」の交差点

ここを左に折れると(写真上)あとは道なりに進むだけ(写真下)。

龍土町美術館通り
新国立美術館入口

国立新美術館に到着(写真上)。時計は9時40分。開館20分前である。
現在2つの企画展が開催されている(写真下)。

開催中の企画展「李禹煥」(写真左)と「ルートヴィヒ美術館展」(写真右)
国立新美術館

・ 国立新美術館の中へ

ガラスカーテンウォールと呼ばれる波のような形状のこの建物(写真上)、「森の中の美術館」をコンセプトに設計されているとのこと。設計者は黒川紀章。黒川の生前に完成した最後の美術館である。
ちなみに美術館のロゴは、クリエイティブディレクターの佐藤可士和が手掛けた。

今回、日比谷線の「六本木」駅からアクセスしたが、この美術館は東京メトロ千代田線「乃木坂」駅との直結通路がある。アクセスにはそこが一番早い。また、先ほど通った東京ミッドタウンの周辺には都営地下鉄大江戸線「六本木」駅もある(出口F7)。

本館正面入口前には傘立て専用ルームが設けられている。割と重要な位置にあるここは、VIP来館時などにエントランス前室として利用することも想定されているらしい(写真下)。

傘立てルーム(左)正面入り口付近(右)
李禹煥《関係項ーエスカルゴ》

さらにその横には企画展に合わせて李禹煥の作品が展示されていた(写真上)。「関係項」というタイトルは李の作品によく見られる。あるトークでこんなことを話していた。

「ぼくの場合は、表現とは、自分の思いを表現することではなくて、自分と対象物との相互関係で成り立つものだと思っています。空気や時間、さまざまな要素が関わって、表現が出来上がる。向こうから来るイメージとこちらがぶつかって、そこに何事かが起こり得るんだと思うんです」

李禹煥・アーティストトーク@直島より

この作品は2017年、フランスのル・コルビジェの建物で展示された作品ということだ。なるほどそれで“エスカルゴ”か・・では中に入ることにしよう。

正面入口
ロッカー位置の案内図
1階フロアの様子

チケット売り場はこの先のようだ(写真上)。まだ開館前だから人がまばらだ。当日チケットを買うので列に並ぶ(写真下)。

チケット売り場前

・ 李禹煥の作品を観て

数分後にチケット窓口が開き、購入してそれぞれ展示場へと向かう。
国立新美術館開館15周年記念「李禹煥」(2022年8月10日~11月7日)の観覧料は当日一般1,700円、大学生1,200円、高校生800円となっている(10月8日~10日は高校生無料観覧日 *学生証の提示が必要)。
もう一つの企画展「ルートヴィヒ美術館展」(当日一般2,000円、大学生1,200円、高校生800円)とのお得チケットはないようだ。

展示場入口

展示場前(写真上)で少し待ってから、最初の観覧客の塊がなだれ込む。

音声ガイドの案内窓口

入るとすぐに音声ガイドの案内があって勧められる(写真上)。しかし会場内は写真撮影不可とのこと。野外ではOKということ(結局1か所だけだった)。
ということで、今回もいただいたチラシなどで簡単にまとめてみよう。

チラシより

国立新美術館では開館15周年を記念して、国際的にも大きな注目を集めてきた「もの派」を代表する美術家、李禹煥(リ・ウファン、1936年生)の東京では初めてとなる大規模な回顧展を開催します。
東洋と西洋のさまざまな思想や文学を貪欲に吸収した李は、1960年代から現代美術に関心を深め、60年代後半に入って本格的に制作を開始しました。視覚の不確かさを乗り越えようとした李は、自然や人工の素材を節制の姿勢で組み合わせ提示する「もの派」と呼ばれる動向を牽引しました。また、すべては相互関係のもとにあるという世界観を、視覚芸術だけでなく、著述においても展開しました。
李の作品は、芸術をイメージや主題、意味の世界から解放し、ものともの、ものと人との関係を問いかけます。それは、世界のすべてが共時的に存在し、相互に関連しあっていることの証なのです。奇しくも私たちは、新型コロナウィルスの脅威に晒され、人間中心主義の世界観に変更を迫られています。李の思想と実践は、未曾有の危機を脱するための啓示に満ちた導きでもあります。
本展では、「もの派」にいたる前の視覚の問題を問う初期作品から、彫刻の概念を変えた<関係項>シリーズ、そして、静謐なリズムを奏でる精神性の高い絵画など、代表作が一堂に会します。また、李の創造の軌跡をたどる過去の作品とともに、新たな境地を示す新作も出品される予定です。

国立新美術館ホームページ 展覧会概要より
音声ガイドマップ

音声ガイドマップで案内しよう。
❶入ってすぐの部屋。初期の鮮やかな色の作品が展示されていた。
❷「もの派」の誕生と書かれてある。木材が不安定に立てかけられていたり、割れたガラス板の上や座布団の上に石が置かれていたりと、李の言う「身体の五感でみる無限感」を体験する。
❸メモを取ろうとしたら、やさしくダメ出しをいただく。代わりに使い捨てのクリップ鉛筆を渡された。返す必要はないとのことなので、記念にいただいていこう。しかしよく見ると監視員が通常より多くいるようだ。
❹の部屋は石板が敷き詰められていて、遠くからも石のこすれる音が響く。・・風流、と言えなくもないかな。
❻一段暗くなった部屋に水の入った大きな透明円柱形の作品《関係項ープラスチックボックス》がある。他に土や空気が入った作品も置かれていた。
❼《関係項ー鏡の道》。ここでは床に砂利が敷き詰められていて中央に大きな石が二つ並べられている。「通ってください」と言っているように見える。
❽野外の作品《関係項ーアーチ》(写真下)

《関係項ーアーチ》

ここも「通ってください」という無言の声に導かれて、観客は神妙な面持ちで中をくぐっていく様子が伺える(写真上)。こういう行為は何故かご利益を得る気分になってしまう・・合掌。

再び館内に戻ろう。中は涼しい・・

音声ガイドマップ

❾《点より》《線より》と李の代表的平面作品が並ぶ(写真下)。

《線より》*チラシより

後半は平面作品の展示が続く。
《点より》はどこかデジタルなイメージで「マトリックス」を彷彿させる。と、ここで再び監視員からダメ出し💥。見ると展示作品の前に引かれた線から私の足が半分出ているではないか・・思わず銃弾をよけるネオのようにのけぞってしまった。
❿の周辺は「風と共に」が展示。「空中に流れる気流の力は人間にも絵画にも広がる」とある。以前に観た篠田桃紅の作品に通じるものを感じた。
⓬⓭は《対話》《応答》という作品。この辺りは最近制作されている。作品もどこか明るく、部屋も明るい。直接壁面に描かれた作品もあった。閉会後はどうするんだろう・・気になる。
⓮《関係項ーサイレンス》にはペイントされていない白いままのキャンバスが展示。

李禹煥の作品をダイジェストで観ることができた。

「理路整然と整理ができて、ちゃんと先が分かっているようなものは、アートにはならない。無意識、狂気、混沌、矛盾ー。人間は面白いことに、そういったものが作用しながら出来上がっているものを面白がる」

「(作品は)完成したとか、終わったってことは恐らくないー。絶えず動いていて、判断がつかないもの」

李禹煥・アーティストトーク@直島より

と李は言っている。李自身も自分でもよくわからないものを作り出すことがあると言う。わかる必要などないのだ。アートは数学ではない。

・ 「日美展」の作品を巡って

「李禹煥」展の会場を後にして館内を少しぶらついてみた。B1、1F、2Fにはカフェがあり、3Fにはレストランがある。一緒に来ている人がいたら鑑賞後に利用してもいい憩いの場だ(写真下)。

1Fのカフェ「カフェ コキーユ」

1F企画展の隣の会場を覗くと「第5回 全国公募 日美展」という公募展が行われていた。どうやらこちらは無料で入場できるらしい(写真下)。入ってみよう。

1F中央の展示室(1C,1D)
「日美展」水墨画部門の展示場内

すごい数の作品が展示されている(写真上)。水墨画が集まっているんだな・・。こちらが内閣総理大臣賞と作家大賞を受賞した方の作品だ(写真下)。なるほど・・これは説得力がある。

中田佳子《慈愛》

水墨画と言っても、表現の幅が結構あるものだ。

過去に受賞された作家の作品展示

場内を巡っていると隣の会場にも入れるようだった。こちらも「日美展」で絵画部門となっている。水墨のモノトーンから一気に鮮やかな色彩の絵画が目に入って来た。

「日美展」絵画部門の展示場内
1F正面入口前の展示室(1A,1B)

絵画部門と水墨画部門では同じ「日美展」として中ではつながっていたが、入口が違うようだ(写真上)。絵画部門の入口近くに大賞作品が展示されていた(写真下)。

渋谷田鶴子作《ミッケ!私は大好き!Haruma》

そう言えば、私も先月公募展に出品して、見事に一次審査で落選してしまった。応募総数は1,128点あって68点しか次の審査に残らないということだ。またそこから絞り込まれる。
ここの会場を見渡しても、展示数がかなりありそうだ。この中で受賞できる作品はほんの数点のみ。その厳しさを視覚的に感じることができる。

もっとも・・先ほど観た李禹煥の《関係項ーサイレンス》のように、ペイントされていない白いままのキャンバスで応募したら・・まず落ちるな。
公募展というのはそういうものだ、と気を取り直してランチに行くことにした。

午後は、ここから歩いてすぐの21_21 DESIGN SIGHTで開催している「クリストとジャンヌ=クロード“包まれた凱旋門”」展を観に行きます。また来てください。

国立新美術館
住所:東京都港区六本木7-22-2
電話:050-5541-8600(ハローダイヤル)
[開館時間]10:00~18:00(入館は17:30まで)
[休館日]毎週火曜日(祝日又は振替休日に当たる場合は開館し、翌平日休館)、年末年始

公式ページ:https://www.nact.jp/




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