「埼玉観光日誌」#4|比企郡川島町(川越)|金笛しょうゆパーク
9月23日(金)秋分の日。三連休の初日なので、久々に娘のノノを誘ってお出かけ。行き先は埼玉県の川越駅からバスで20分ぐらいのところにある「金笛しょうゆパーク」である。
天気予報では、台風15号が発生し、今夜から明日24日にかけて西日本から東日本の太平洋側にかなり接近する見通し・・ということだった。
朝起きて外を眺めてみると・・
「行けなくはないか・・」という程度の雨だったので、一応ネットでキャンセルの仕方だけ確認し支度を始めた(特にキャンセルの方法は見当たらなかった)。
・ 車で金笛しょうゆパークへ行く
“金笛しょうゆ”というのは、埼玉県の醤油蔵元である笛木醤油が作る看板商品である。
電車で行く場合、バスにも乗り継がなくてはならないので少々面倒。私たちは車で行くことにした。
出発したら次第に雨が弱まっていき、着く頃には止んでいた。良かった。
目的地周辺では少々込み入ったところに入る。ホームページにある周辺地図であらかじめ確認しておいた方が良いだろう。私はそれを見ずに行ってしまったので、少々迷ってしまった。
10時10分に到着。すぐ横の第一駐車場に車をとめる。工場見学は10:30からなのでまだ時間に余裕がある。眠そうにしていたノノも興味が出てきたのか、口数がだんだん増えてきた。
「見学が終わったら少し早いけどここで食べようか」(写真上)
レストランはまだ営業開始となっていなかったが、表示を見ると予約はまだ入れられない。“工場見学を終えてからにしてください”と書いてあった。
営業開始は11:30からだ。
・ 金笛しょうゆ楽校でお勉強
「金笛しょうゆ楽校」(工場見学)は定員20名までとなっていて、事前に予約を入れることができる。また定員に達していなければ当日でも入れてもらえるようだ。休日は10:30から15:30までの毎時00分と30分の開催で全11回行われ、平日は3回だけ。参加費は無料。
今日は初回に予約を入れたのも、レストランで“うどん”をいただきたいためでもある。ホームページでうどんの写真を見る限りかなり映えていた。それはつまり・・休日でもある今日は確実に人が殺到する、と見込んでのこと。行列は避けたい。
工場見学の受付前には参加者が集まりだしていた(写真上)。
初回は満員となり、年配のガイドさんが参加者の点呼を始めた。二人に一つで、と言ってガイドブック(無料)が配布される(写真下)。
きっかり10:30。工場見学が開始となった(写真上)。金笛しょうゆパーク案内図(写真下)では「金笛しょうゆ楽校“正門”本社工場」のところになる。
まず前蔵という建物の前で蔵元の歴史等が解説され(写真上)、すぐに前蔵に入る(写真下)。
入ってすぐにガイドさんから参加者に問いかけられた。
「醤油は何でできているかご存知でしょうか・・3つあります」意外と答えられないものですとガイドさんは参加者を見回す。確かに大豆は知っていても、他がなかなか出てこないようだ。
「生まれた時から当り前のようにあって、特に気にしていない。はい、大豆はわかりましたね。他に塩、そして小麦粉なのです」
ここからガイドさんから面白い話が続く。
「実は以前、埼玉県は全国でも有数な麦の産地でした。収穫期(5月下旬~6月中旬)になると麦わらを焼く煙で辺りが真っ白になったりして、風物詩としてテレビなどで毎年取り上げられたりしていました」
そうなんだ・・後で調べてみたら確かに今でも麦の産地とある。昨年は生産量24,000トンと全国でも第9位となっていた。(それでも以前より順位も下がり生産量は落ちているとのことだ。)中でも小麦については、製粉業界等の実需者から安定した品質、産地と工場が近い地理的な条件などにより高い評価を受けている、とのことである。
そう言えば・・埼玉県は隠れたうどん県でもあったのだ。
見学開始前に配られたガイドブックを使って解説が続く。ここには醤油に関わることが分かりやすくまとめられていた。
笛木醤油は、埼玉県で生産された農産物を地域で消費する“地産地消”の考え方に沿って、埼玉県産の大豆・小麦を原料とし製造している。この前蔵には原料が保管されていた(写真下)。
地産地消・・消費の方では地元の学校給食にも供給しているとのことだ。
ガイドブックを見ながらガイドさんから再び質問。
「醤油は5つの種類に分けられます。わかる方いらっしゃいますか」
おっと・・これは考えたことがなかった。さて、なんだろう。
「濃口醤油、淡口醬油・・」とガイドさんから答え二つ。
「減塩醬油!」と誰かが言う。
「それは違います」とすかさずガイドさん。難しいとみたのか他もすぐに明かす。
「再仕込醤油」「白醤油」「それから最後にもう一つ・・」少し間をおいて「溜醤油です」。
それぞれ、熟成期間の違い、使用用途の違いがある。
熟成期間が短い(半年から1年)順から言うと、
「白醤油」・・素材を活かす
「淡口醤油」・・うすくち
「濃口醤油」・・万能タイプ
「再仕込醤油」・・バランスよく濃厚
「溜醤油」・・うま味たっぷり
長い方は2年から3年かかる。
ノノにはまだスマホを渡していないため、うちからタブレットを持ってきていて、それで一生懸命写真を撮っていた。
最近チャットに凝っているようだったが、友達に見せたいのかな・・思った以上にしっかりガイドさんの話を聞いていて良い勉強になっているように見える。身近なことを知ることは大切だ。ついでに私も勉強になっている。
・ 仕込蔵の諸味を眺める
前蔵を出て今度は仕込蔵へ移動する(写真下)。香ばしい匂いが漂ってきた。
ここが仕込蔵だ(写真下)。38本の木桶が並んでいる。
笛木醬油では230年にわたって、伝統的な木桶仕込みの醤油作りを守り続けている。
小麦を炒って砕き、蒸した大豆と合わせて麹菌を振りかけ麹となる。その後、麹菌を育てる「製麹」(1日目)。麹を細かく砕く「手入れ」(2日目)。麹が麹菌で緑色に染め上がったら出来上がり。塩水と混ぜながら木桶へ仕込む「仕込み」(3日目)。呼び名が麹から諸味となり、長い年月をかけて発酵熟成し、これを搾って醤油が出来上がる。
今見ているのは、発酵熟成中の諸味ということだ。諸味の中には酵母だったり微生物がいっぱいいて美味しい醤油になるよう働き続けている。それらが活発に活動できるよう定期的に職人さんが桶の中をかき回したりしている。空気を中に送るこの作業を「櫂突き」と言うのだそうだ。
ガイドさんは慣れているのだろう。30分もかからず無事終了となった。次の回の参加者がお待ちのようだ。お礼を言って見学会は終了となった。拍手。
・ うどんとお土産と他のスポット
さて次に目指すは「しょうゆ蔵のレストラン」。他の参加者も同じことを考えているのか進行方向が同じだった。私たちも遅れを取らずすぐに入店するがすでに1階は満席。2階に通された(写真下)。あれ?11時半開店じゃなかったっけ?
案内された席に座りすぐに注文。ここで製麺している自家製うどんを、ここで作っている醤油でいただく「蔵出し醤油の食べ比べうどん」(980円)。これに角煮を付けたセット(1380円)に決めていた。
ツルツルシコシコのうどんにレモンをふりかけ、うどんを箸でつまんでお皿に運び6種類ある醤油を順番に少しずつかけていただく。こういう食べ方は初めてだ。醤油の味がストレートに伝わってきて、ノノと感想を言いながら食べ比べる楽しいひと時となった。角煮も分けて食べた。美味しかった。
「もっと食べた~い」と不満げなノノに「金笛ソフトクリーム」(420円)のしょうゆ味を買ってあげ「これでお仕舞い」とくぎを刺し、「木桶バウムホール しょうゆ」(1450円)をお土産に買う(写真下)。
ソフトクリームやバウムクーヘンどちらも醤油味を選んだが、醤油感はわずかで微かに香ばしさを感じる程度。普通に美味しいスイーツとして新たな販路を広げている商品である。
「金笛しょうゆパーク」内には他にこれらのスポットもある。
バウムクーヘンを作る様子がガラス越しで見られる「木桶バウム工房」(写真下)
木桶フォトスポット「もぐもぐ広場」(写真上)。
ブランコもある「わんぱく広場」(写真下)。かつては笛木醬油社長宅の庭だったところだろう。ノノは子犬のように動き回っていた。
「今日はどうだった?」とノノに尋ねてみると。
「すご~く楽しかった。勉強にもなった」と喜んでくれた。また来たいと言う。それは良かった。
醤油と言えば・・うちでは、醤油は長崎県のチョーコー醤油「超特選むらさき」を愛用している(写真下)。調理用には「ヤマサ丸大豆醤油」にして使い分けている。
「超特選むらさき」も気に入った醤油なのだが、今度「金笛しょうゆ」も試したくなった。ガイドさんも言っていたように醤油は欠かせない身近な調味料である。良い醤油の基準は持っていたい、と我ながらこだわりを思っているのだ。