論文紹介「東南アジア主要国におけるコーポレート・ガバナンスの現状と日本への示唆」
これから、このNoteで、「東南アジア・南アジアでの経験を日本に還元する」をテーマに、私が発表する論文や本、セミナーの概要を紹介したり、見聞きし考えたことを発信していきます!
まず、第1弾です。先月、同僚の花村弁護士との共著で、東京株式懇話会会報に、
「東南アジア主要国におけるコーポレート・ガバナンスの現状と日本への示唆
~特に独立取締役を巡る規律に関するシンガポールと日本の比較を題材に~」
という論文を掲載いただきました。そのポイントを紹介します。
Asian Corporate Governance Associationという組織が発行しているアジア・パシフィック地域のコーポレート・ガバナンスの状況に関する報告書「CG Watch」2018年度版での日本のコーポレート・ガバナンスが何位かご存じですか?
実は、日本は、マレーシア・タイより下で、インドと同順位の7位です。なお、このランキングは日経新聞でも取り上げられており、2019年3月11日日本経済新聞5面『企業統治「アジア7位」に転落―内向き日本への警鐘(経営の視点)』と題した記事で、私のコメントも紹介されています。
順位 市場 スコア※
1 オーストラリア 71
2 香港 60
3 シンガポール 59
4 マレーシア 58
5 台湾 56
6 タイ 55
7 日本 54
7 インド 54
9 韓国 46
10 中国 41
11 フィリピン 37
12 インドネシア 34
他方で、シンガポールは3位。どこからこの差が生まれてくるのか?を特に考察したのがこの論文になります。
一言で言えば、この差は、戦略の存在と見せ方に対する意識の有無から生じています。
この論文の中では、過去約20年にわたってシンガポールがコーポレート・ガバナンスの強化を痛みのないところから徐々に行って、常にバージョンアップを重ねて、世界に発信し続けるということを戦略を持ってやってきているかを克明に日本と対比しながら分析しています。
最後に、この論文の末尾にも掲げている、我々がお伝えしたい点のまとめを、そのまま転記しておきます。
「1.東南アジア主要国の約半数のコーポレート・ガバナンスは日本より高く評価されているという調査結果が存在する。
2.東南アジア主要国のコーポレート・ガバナンス制度は外形的には十分なものを備えている。
3.その中でコーポレート・ガバナンス制度が最も高く評価されるシンガポールも、実は、最初から強固な規制を敷いてきたわけではなく、企業の実情も見ながら、徐々に、かつ、慎重に規制を強化してきたという経緯がある。
4.もっとも、シンガポールは、その過程で、常にコーポレート・ガバナンス制度を自ら率先して改善しているという発信を対外的にも行い、高い評価を得てきた。
5.欧米の制度のみならず、このような東南アジア主要国のコーポレート・ガバナンス制度に関する整備の状況と特にシンガポールの対外的な情報発信に関する戦略は、日本にとって参考になる部分がある。」
ご興味があれば是非論文をご覧いただければと思いますので、個別小松のFacebook(https://www.facebook.com/takeshi.komatsu.77)経由でお知らせ下さい!