従業員のお困りごと㉕
毛利さん(仮名)が勤務する会社は、92か所の高齢者施設と10か所の保育園を運営しています。地域密着型で事業を行う同社は、地元の特別支援学校から職場実習生を受け入れ、地域貢献しながら職員の障がい理解を進めています。
ある年、保育園に知的障がいのある尼子さん(仮名)が入社しました。尼子さんは頑張り屋な半面、知らず知らずのうちに無理をし過ぎて自分の許容量以上の仕事を抱え込んでしまうという課題がありました。
毛利さんは、発達支援コーディネーター研修を受講していたこともあり、尼子さんの支援を担当することになりました。毛利さんがまず考えたことは、個人面談を通じて細やかなフォローをすることにより、尼子さんの内面を拾い上げて支援につなげていこうということでした。ところが、個人面談のような改まった方法では、かえって尼子さんが緊張してしまい、本音を聞き出すことが難しいことに気づきました。
そこで毛利さんは、日常のおしゃべり会のような雰囲気を作り、たわいない世間話しの延長線上から業務の話しにつなげていくことがいいとのではないかと考えました。「井戸端会」と名付けたこの面談を2週間ごとのペースで行い、尼子さんが頑張り過ぎていないか、仕事を抱え込み過ぎていないかをさりげなく確認するようにしました。
また、井戸端会の他に「日報」を用いて尼子さんの内面を確認していくようにしました。この日報には、睡眠状況や気分の波など体調を確認できる項目も設けました。尼子さんは、日常の様子など様々なことを記載してくれたため、労務管理のツールとしてのみではなく、些細な変化の気づきにもつながりました。
その後、会社の取り組みの一環として、毛利さんはサポーター登録をしました。元々就労意欲の高い尼子さんには、目標を持って行動することが成長につながるタイプだということを支援員から助言を受け、「目標確認シート」を活用することにしました。尼子さんと3つの目標を設定し、その目標に向けて努力していくことを話し合いました。また、このシートや日報を他の従業員とも共有し、尼子さんがどのような目標に向かって努力しているかを知ってもらうようにしました。尼子さんの目標を知った同僚は「もっと尼子さんが成長でいるように応援していきたい」という雰囲気が高まっていきました。
目標設定をしてから3か月が経過したころ、毛利さんは井戸端会のときに尼子さんに目標に対する自身の評価を確認しました。3つのうち「絵が上手に描けるようになりたい」という目標に対して自己評価が低いことをシートを通じて知ったので、「苦手分野に挑戦することだけではなく、今は得意なことや興味を持っていることを延ばしていくことが最も大切だよ」と伝え、自信を失わないように励ましました。
尼子さんは、見たまま真似をすれば上手に折り紙を折ることができる「折り紙冊子」を園児のためにたくさん作るようになりました。毛利さんは、保育士として園児を笑顔にしようと頑張る尼子さんを頼もしく感じ、また、これからどのように成長していくのかを楽しみにしながら見守っています。
YORISOU社会保険労務士法人の長谷川です。わたしたちは、企業が抱える従業員のお困りごとに対して、積極的にサポートしていきます。また、育児・介護・病気と仕事の両立支援についても、企業を支えていけるよう職員全員でがんばっています!
*本文の内容は、行政機関で紹介している障害者雇用の事例集などを参考に 作成しています。