従業員の困りごと⑦
彼は就労移行支援事業所において、就労に向けた訓練や職場実習を通じて入社した発達障害のある社員です。
発達障害の方の多くは相手の視点に立って行動することができず、マイルールを優先してしまうことから、職場にふさわしいマナーや振る舞いができないという課題があります。
上司である私は、職場での行動規範や立ち振る舞いを身につけてもらうために定期的に研修を行っていましたが、彼はテスト形式の想定問題は正しく回答ができるものの、実際の職場の中では、研修と同じ事案が生じても全く対応ができず研修効果は得られませんでした。
そこで私は、身近に相談できる人がいたので、その人から障害特性、会社での支援や配慮の仕方についてアドバイスをもらい、一緒に支援してもらうことにしました。
まず、通常の研修に加えて、SST(ソーシャルスキルトレーニング)による訓練を試してみることにしました。
SSTとは、ロールプレイ、ディスカッション、ゲームなどを通じて、社会の中で人との関わりをもって生活していくことが困難と感じている人がどんな場面でどんな振る舞いをしたらいいのか、その場に適した社会性を身に付けようという社会生活技能訓練です。
彼が苦手とする「相手の話を聞く」「相手の頼みごとをする」という場面設定のロールプレイを繰り返し実施し、そこで出てきた課題について、一歩ずつ改善していきました。
トレーニングを開始して数ヶ月が過ぎて、彼の仕事への意識や周りの社員に対する接し方に変化が見られるようになってきました。
職場や相手の状況に合わせて、少しずつ対応できるようになり、私も安心して見守ることができそうです。
発達障害がある場合には、何回も繰り返し指導や訓練が必要で、時間も年単位で要することも考えられますが、本人の意思を尊重して一緒に長く働ける職場環境を整備していくことが大切です。
YORISOU社会保険労務士法人の大内です。わたしたちは、企業が抱える従業員のお困りごとに対して、積極的にサポートしていきます。また、育児・介護・病気と仕事の両立支援についても、企業を支えていけるよう職員全員でがんばっています!