百田尚樹著「影法師」
年初に引越した場所から勤務先までの通勤電車はたっぷりと45分ほどの乗車になるので、引越し当初から毎日行き帰りに大好きなクラシック音楽を聴きながら電車に揺られていた。
ところが、少し前、仲のいい友人に「そのヘッドフォン(実際にはEar Budsで耳の中に入るタイプのものなのだが)、頭の中で電子レンジの電波が暴れまくってるのと一緒やで、聴力なくなるで!」と警告され、「ええ〜、そんなアホなことあるんかいな?」と思ったものの、たしかに携帯からそのデバイスにBluetooth電波が飛んでいるのは事実だし、「じゃ、音楽はうちのスピーカーで聴くことにして通勤中は読書時間にしよ」ということにした。
私は子供の頃から読書の虫なので、それはそれで結構なこと。以来、有意義に片道45分の道のりを行き帰りKindleとともに過ごしている。
幸いなことに私は早朝出勤で、帰りもラッシュ前の時間帯の帰路なので、通勤は往路復路ともにずっと座って行ける。ラッキー!
そして、いまさら、というほど随分以前に出版された本ではあるが、ずっと気になっていた百田尚樹著の「影法師」、これをついに読むことにした。そして、これにやられてしまった。
彼の書く本ではよくあることだが、この作品、もう冒頭から最後まで、何度も私の心を揺さぶられる場面があり、その度に目頭が熱くなった、というか、実際、読みながらボロボロと涙してしまう場面もあった。ええ年した人が電車内で涙を流して泣いてるシーンを他の乗客に見られなくてよかった。
しかし、これ、歳のせいで涙もろくなったのか、または、百田氏の文筆能力にノックアウトされたのか。両方かな。
最近はYouTubeライブでも好きなことを喋りまくっている百田氏だが、あのYouTubeでの彼の言いたい放題と、彼の感動的な作品と、まったく結びつかないのが興味深い。
今や百田氏は自分のことを「職業はYouTuberに転向してん」などと言っているが、いやいや、まだまだ彼の作品を世に出し続けてもらいたい。
私にとっては実に貴重な物書きさんなのだ。