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ミックスの語られない本当に重要なポイント

DTMにおけるミックスとは何か?

こんにちは!作曲家の松下真也です。
今回は、私が10年間DTMをやってきた経験をもとに、楽曲のミックスについてお話ししていきたいと思います。
細かいテクニックなどについて記載していきたい気持ちを抑えて、その前にぜひ知っておかなければならないことがあります。
この記事では、そんなプロのエンジニアが当たり前に意識されているミックスの語られない本当に重要なポイントをしっかりとお伝えできればと思います。

YouTube時代のDTM情報の現状

現在、YouTubeなどのプラットフォームが普及し、多くのミックスに関する動画が投稿されています。しかし、そのプラットフォームの性質上、再生数稼ぎが最重要されており、実際のミックスで本当に重要な部分とは異なる内容が拡散されていることが多いです。

  • 例:「このプラグインを刺せば迫力アップ!」

  • 例:「このEQ・コンプ設定で音がクリアに!」

これらの動画を投稿されている方々を批判するつもりは全くありません。ただ、大事な大前提の部分が抜け落ちてしまっているままでは、なかなか成長に繋がらないのではないかと感じています。この現象はミックスだけでなく、DTM界隈全体で起きている非常に重要な問題だと思っています。
まずは正しい知識を身につけた上で、それを踏まえていろんな動画を見ていただきたいと思っています。
今回紹介するのは、細かいテクニックではなくそんな大前提や心持ちのお話しです。

私が考えるミックスの二大役割

ミックスの定義は人それぞれかもしれませんが、私の考えるミックスの役割は大きく二つあります。

  1. 曲の魅力を最大限引き出すこと

  2. 臨場感を得られるように場を再現すること

この二つをそれぞれ詳しくお話ししていきます。

1. 曲の魅力を最大限引き出すこと

まず、良いミックスとは何か?という話をする前に、ミックスは曲に対して行うものですよね。
つまりその曲の作曲家が「良くなった!」と感じるようになれば良いわけです。それ以上でも以下でもありません。
作曲家が何を思ってその曲を作ったのか、その意図をしっかりと把握すること。またその楽曲を聴いたときにより感動できるような仕上がりにすることが、良いミックスの条件になってきます。
考えてみると当たり前のことですが、意外と忘れがちなポイントだと思います。

2. 臨場感を得られるように場を再現すること

次に、まるでその場で聴いているかのような臨場感を再現することです。これはROCKやPOPSの生音が多い楽曲だけでなく、HIPHOPやEDMのようなエレクトリックサウンドも同様です。
人がサウンドで一番迫力や臨場感を感じる瞬間は、実際に目の前で演奏を聴いているときです。右からギターが聞こえ、真ん中からキックが響き、奥からストリングスが広がる——そんな音の定位がはっきりし、それぞれがどのように演奏しているのかが明確に捉えられる「場」を再現することが、ミックスのもう一つの役割です。
この二つを満たすミックスが、最高のミックスと言えるのではないでしょうか。

最高のミックスをするために大切なこと

最高のミックスを目指す上で、もう一つ大事なことがあります。それは、ミックス後にどのようなサウンドであるべきかというイメージを完璧に頭の中で作ること、または参考になる曲を用意することです。
ミックスに正解はありませんし、良いと思うミックスも人それぞれ異なりますが、楽曲を聴いて最終的な仕上がりがどのようなものなのかをはっきりとイメージできていないと、不要な処理をしてしまったり、いつまでも理想のミックスにたどり着けない羽目になってしまいます。これは、作りたい料理を決めずに材料を調理していくようなものです。

ミックスに対するよくある勘違い

最後に、ミックスについて勘違いしている人が多く見受けられます。それは、「ミックスで曲の音が良くなる」ということです。
「え?曲の音を良くするのがミックスなんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、実はそれがYouTubeなどでよく見受けられる言葉足らずの罠です。
正しく言うと、ミックスは「楽曲の音と音を整理する」ことです。楽曲に入っている「音」自体が良くなるわけではありません。
実は、ミックスを本格的に勉強したいと思われている方々の大半は、音源プラグインを購入したり、打ち込み方を勉強する方がよほど良いサウンドへの近道になります。ここだけは絶対に勘違いしないようにしましょう。

まとめ

MIXの本質は「曲の魅力を最大限引き出し、臨場感あるサウンドを再現すること」である。
YouTubeなどで情報が溢れる時代だからこそ、本質を見失わずに正しい知識を身につけることが重要である。
最終的なサウンドのイメージを明確に持つことで、最高のMIXを実現できる。
MIXは音と音を整理する作業であり、音質そのものを向上させるためには音源や打ち込みの質を高めることが必要である。

今日から実践できるアクションプラン

最後に、こんな真面目な記事を最後まで読んでくださった皆さんの楽曲が確実に良くなるよう、今日から実践できるアクションプランをいくつかご紹介します。ぜひ試してみてください。

  1. 作曲者の意図を再確認する

    • 自分が作った曲であっても、何を伝えたいのか、どんな感情を込めたのかをもう一度考えてみましょう。「好きなアーティストと似た曲を作りたかったから」「久々にエモい曲を作りたくなったから」など、特別深い理由がなくとも大丈夫です。ただこの曲を聞いて、リスナーにどんな気持ちになって欲しいか?を考えてみましょう。

  2. リファレンストラックを用意する

    • 自分が目指すサウンドや雰囲気に近い曲3つ選んで、それら参考にすることでイメージが固まりやすくなります。それぞれの曲の参考にするポイントを踏まえるとより明確になります。「参考曲1のドラムが前に出ている感じがかっこいい」「参考曲2の奥行き感を目指したい」などです。

  3. この曲の良さが最大限引き出されるMIXを考える

    • 理想とする各パートの位置関係をもう一度頭の中で考えましょう。1,2を踏まえ、この楽曲全体がどのようなミックスになれば正解なのかを決めます。そこをゴールとする事で、その過程で悩む事が減るはずです。


これらのポイントを押さえて、ぜひ最高のミックスを目指してみてください。皆さんの音楽制作がさらに楽しく、充実したものになることを願っています。

次回は実際にどのような手順でミックスしていけば良いのか?という少し具体的な順序についてお話しさせて頂きます。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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