誰も教えてくれないミックスの基本② エフェクトプラグイン編
こんにちは。作曲家の松下です。
前回はミックスの一番大事な部分である音量調節について説明しました。
今回はみんな大好きエフェクトプラグインについて、抑えておきたいポイントや一般的に勘違いされている部分を書いていこうと思います。
エフェクトプラグインは目的を持って挿す
まずエフェクトプラグインの役割ですが、大前提として既存の音に何かしらの処理を加えるプラグインのことですね。
これはみなさんお分かりかと思います。
ただ重要なのは、エフェクトプラグインは基本的に既存の音に違和感や納得行かない部分がある時にだけ挿す方が上手くいきます。
やはり自分が見てきた中で、「エフェクトプラグインを何となく挿す」という方が非常に多いです。
楽曲の作り方なんて千差万別なのでもちろん正解はありませんが、自分はそれであまり上手くいっている人を見たことがありません。
「何となく挿す」が一般化してしまったのは、いわゆる「このコンプを挿して音が大迫力に!」とか、「このEQ設定で音をクリアに!」というようなYoutubeなどの再生数重視メディアの悪影響でもあると思います。
なぜ何となく挿すのがダメなのか?
これは最終的に何を作りたいかわからないのに、適当に調味料を入れまくっているのと同じだからです。
完成系に向けて音量調節した上で、
「この音は高音が邪魔だから、EQでカットしよう」
というように何か既存のミックスに不満があり、その不満を解決してくれるのがエフェクトプラグインなわけです。
エフェクトプラグインでの大きな勘違い
もう一つこちらも勘違いが多い点ですが、
勘違いしている方も多いのですが、エフェクトプラグインを挿しても音自体が良くなるわけではありません。
先ほども記載しましたがエフェクトプラグインは調味料のようなもので、安い肉に塩や胡椒やタレを大量にかけても高級肉になりませんよね。
音自体を良くしたいなら、音源プラグインから変えるべきです。
エフェクトプラグインは、「この音がもう少しこうだったら良いのに」というような"最後の微調整"に一役買ってくれるだけなのです。
エフェクトプラグインの重大な罠
次に、エフェクトプラグインの使い方の注意点についてです。
①エフェクトプラグインは設計上、その大半が「挿すと音量が上がる」ようにできています。ここに罠があって、人間は音が大きければ音が良くなった!と勘違いしてしまいます。
この事実を知らない人は、プラグインを挿す前と挿した後で聴き比べてみると挿した後の方がいい音になっている!(音量が大きくなっただけで実際はあまり変わってない)という現象が多発します。
現場で働いているプロのミックスエンジニアさんや作曲家さんたちであるほど、この点にはすごく気を付けています。
②前回の音量調節の記事でも話しましたが、結局は音と音は相対的なバランスであるという点があります。
たとえばEQでHighを上げたとしましょう。
ここでまず、いい音になった!と思ってしまいます。
EQは特定の帯域の音量を上げるためのもので、この時点で処理した分の音量が上がってしまっているからです。
では、LogicのEQには右側にGain(音量)があるので同じ音量になるまで戻してみましょう。
みていただければわかるように、Lowの方が下がっていますよね。
つまり、Highを上げたつもりがLowを下げることになっていた、ということです。たとえばBassに対してこの処理を知らず知らずのうちに行っていたと思うとゾッとしますよね。
この現象がコンプなどでも同じように起きるのです。コンプは音の大小をコントロールするためのプラグインですが、サスティンを伸ばして音に迫力を与えたつもりがアタック感がなくなり平坦な音になってしまった。などです。
音量変化に騙されず正しくエフェクトをかける方法
これを回避する方法として、エフェクトプラグインは挿す前と挿した後で同じ音量にすることで、音がどのように変わったのか?を正確に聞き分けることができます。音量変化に騙されないわけですね。
エフェクトプラグインを大量に挿してしまう方は、一度この方法を試してみてください。実際はかなりの微調整しかできていないし、挙げ句の果てに全く望んだ処理になっていなかったということまであり得ます。
結局は音に対して「こうしたい」という希望があって初めて、それを叶えてくれる魔法のツールになり得るということです。
まとめ
エフェクトプラグインの役割:既存の音に微調整を加えるツールであり、目的を持って使用することで効果を発揮する。
音量変化に注意する:プラグインを挿すと音量が上がることが多いため、挿す前後で音量を同じにして効果を正確に判断する。
プラグインで音自体は良くならない:元の音質を向上させるためには、音源や録音環境を見直すことが重要。
アクションプラン
1. エフェクトプラグインを挿す前に目的を明確にする:具体的に何を改善・変更したいのかを考える。
2. 挿す前後で音量を揃える:音量差による錯覚を防ぎ、実際の音質変化を正確に判断する。
3. プラグインのなんとなく使用を避ける:必要最小限のエフェクトで目的を達成し、音質の劣化を防ぐ。
今回の話はなかなかされるものではないですが、とても重要ですし
知る前と知った後では成長スピードが格段に変わるはずです。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。